#7 表参道の26時が過ぎてく

俺はエージェントの部屋に呼び出されていた。

白い、味気ない部屋だ。


「わかってますよね」

「……ああ」


オレは機嫌が悪い

「殺しあってるやつらの生き残りを選別するんなら、だれも救わないほうがいいと思うんだわ」


エージェントの眼鏡が光る

「一考の価値はあります」


「たしかに転生元として不安のある世界ではありました」

「オマエいちいち言い方にトゲがないか?」


いや、ピリピリしているのはオレか?

オレを無視してエージェントはつづける

「科学者ではなく、サバイバルの達人を選ぶのはどうでしょうか」


「ホンモノの『生き残り』か…… でも、それこそあの世界で一番必要とされてるんじゃねえのか?」


「まだ文明のない世界などに」

「転生者の『良心』が必要だな。あの荒んだ世界にありうるか? それこそ探してる間に人類絶滅だぞ」


しばらく沈黙が続き、エージェントがつぶやいた。

「私の判断が間違っているのでしょうか」


「少なくとも、ふつうは『全員転生させろ』なんて言わねえよな」


ビルの外は雨。存在しない26時。正しくそこに存在するかのように刻々と過ぎ去っていった。

エージェントの心の矛盾を表すかのように。

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