#6 幸福なのは義務なんです

「市民、幸福は義務です」


ダメだ、コイツは。


どの世界に転生しても、その頭脳をもってして世界をディストピア化させてしまうだろう。

オレは唸るように言った。

「悪りぃ、やっぱ転生なしだわ」


サラこと老婆は戸惑う。

「では何しに現れたんです!?」


オレはオレなりに考えを述べる。

「オレは『この世界を救え』とここに転生させられた死神だ。しかし、この世界はもう終わってるらしい。」

「だから『この世界から別の世界に誰かを転生させろ』とも言われている。けど、けっきょく終わる世界なんだ。」


「生きてる人間はみんな終わってんだよ」


老婆はうなだれる。

「……そう。そうね」


「それに、あんたはもう一度現実をやり直すより、死後の世界のほうが幸せだろう」

俺は続けた。


老婆の目に涙がこぼれる。

「もう、あんな人生はごめんだわ」


「じゃあ、死神の正式な仕事をするぜ。ここは死後の世界と現実の狭間。オレのイメージだから日本式のヤツだけどな。」

「そこの船にこのカネで乗りな。これであの世に行ける」


「ありがとう。死神さん」

サラが少し若返ったように見えた。ここは魂の世界だから。


一方、エージェントはため息をついていた。

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