#4 核と飢饉と世紀末 その2

羅生門かと思ったら、凱旋門だった。


そもそも、そもそもだ。


核戦争後の荒廃した世界を「羅生門」と表現するのはいかがなものか。

オレならマッドマックスとか北斗の拳とかそういう風に説明するぞ。


ああ、アレか。まだ著作権が切れてない作品だからエージェントはその辺に気を使ったのか。

羅生門なら青空文庫にもあるし。


まあいい。

それよりも気になったのは、オレはまだここで生きている人間をただのひとりも見かけていないということだ。

この蒸し暑さはオレが死んだときのことを思い出す。なんでこんな目に……


「ん?」

雨が降ってきた。チャンスだ。

こういう時は『門』の下に行くべきなのだ。羅生門だったらそうする。


急いで凱旋門の下に駆け込む。門の大きさ違いすぎねえか?


ああ、やはり、というか。

何人か人間がいる。オレは安心と同時に不安を覚えた。

こいつらを転生させなきゃならんのか。


「オイ!ババア!」

喧嘩、いやそれよりもっと一方的な状態の集団があった。

「おめえカネ持ってんだろ!? 知ってるぞ!?」


殴る蹴るをする集団は口汚く罵るが、被害を受けている老婆は押し黙っている。


決めた。


最初のターゲットはこの老婆だ。

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