#2 しんでしまうとはなさけない

「いやぁ、死んだのは生まれて初めてっすわ」

「そりゃそうでしょうよ」


エージェントの目は冷ややかだ。何せ俺は仕事に失敗したばかりか、死んでしまっている。


「で、どうなるんすか、オレ」

「今回の件は、あなたの失敗とは言い切れないかもしれませんね」

「……というと?」


エージェントは少し悩み、メガネを拭いた。


「……いえ、こちらで調査を進めますので。」

「はあ」

「で。あなたは、あの少年に代わって例の異世界に転生してください」


「……は?」


オレは目を丸くして口を大きく開けた。顎が外れる音がした。

「いやいやいや、転生するのは普通の人間って相場が決まってるでしょ!? オレ死神っすよ!?」

動揺を隠しきれない。

「そもそもオッサンじゃないすかオレ!年齢はどうするんですか!!」

エージェントは落ち着いていた。

「肉体年齢は転生時に設定されます。ご存じでしょう?」

「あ、ああそうか」

オレも落ち着かなくてはならない。

「そいや転生先について聴いてなかったな。どこに行くんだ?」


エージェントはカレンダーを見ながら答えた。

「芥川龍之介の羅生門の世界。あなたには主人公をやってもらいます。」


「……えぇ」

おうち帰りたい。

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