第115話 ボス部屋
カツヨリ達は洞穴に入っていった。洞穴じゃないね、完全にダンジョンだよ、進んでいくと階段あるし。1階層はリコのホーリーアローでクリアされていた。ドワーフのマーリーはどこへ行ったやら。
2階層に降りるとグールがポツリポツリと現れる。リコがファイヤーボールを使おうとするがカツヨリが止める。
「火の魔法は酸素を消費するからここでは使わないほうがいい。こういう洞窟系だと酸欠になるかもしれない」
「酸素って何?」
リコもムサシもキョトンとしている。そうか、この世界ではこういう教育はされてないよな。てことはもしかしてこの世界の炎は酸素関係ないとか?やってみるか。
「試しにファイヤーボールを連発してみてくれるか?どうなる事か」
「ファイヤーボール!」
リコがグールに向かってファイヤーボールを放つ。直撃したグールは燃え出す。何回か連発していくと火が燃えなくなっていく。部屋の酸素が無くなっている。
「やっぱ酸素使うじゃん。おい、一旦1階層へ避難だ」
避難した後、リコはどういう事なの?と説明してほしい顔をしている。仕方がないので元化学部の知識を使ってスイヘーリーべ 僕の船 じゃなかった、火には酸素が必要で人間の呼吸にも必要、ああいった洞窟で火を燃やすと酸素が消費されて人間が吸う分の酸素がなくなって死ぬ事もあるって教えたらムサシが、
「そういう事だったのか。確かに火魔法を使い過ぎて人が倒れる事があったな」
「でもお兄ちゃん。前のダンジョンではそんな事言わなかったじゃない?なんで?」
「前のダンジョンは生き物が多数生息していて草や木もあった。草や木は酸素を作るんだ。だから多少火魔法を使ってもなんともないんだ。ただ、このダンジョンはアンデッドしかいない。あいつらは呼吸していないだろう、肺がないし。つまり弱点の火魔法をこの領域が使えなくしてるんだ。使うなら火魔法以外だな」
「では、カツヨリの魔炎陽炎も使えないのか?」
どうだろう、火の魔力を纏わせるくらいなら平気じゃね?
一行は酸素を気にしながらダンジョンを進むことになった。リコの聖魔法、風魔法とカツヨリ、ムサシの剣で出てくるアンデッドを倒していく。たまに倒しても復活するアンデッドもいるので要注意だ。スケルトンの骨を砕いても倒れたスケルトン同士がパーツを分け合って復活したりする。燃やしちゃえば楽なんだけどそうもいかない。そして10階層についた。あるのかボス部屋!と気合が入る。今まで出てきたのはCランクくらいのアンデッドまでで今のこの3人には脅威ではなかった。さてさて、
「あれ?お兄ちゃん、この階はなんか違うね。あ、そうか、ボス部屋だね」
「そうだよリコ。今までの敵が弱かったからって油断しないように。流石にボスは強いだろう」
期待して進むといかにもボス部屋のような扉があった。ムサシがためらいもなく蹴破る。ほんとにこいつは、と思いながらもカツヨリは戦闘態勢を維持しつつボス部屋に入った。正面に巨大なスケルトン。それの手前に剣、槍、杖を持ったちょっと大きめな今までのよりも強そうなスケルトン。そしてドワーフのマーリーがいる。
「もうここまで来たのか?何者なのだ、あの魔族を倒すとは」
「俺はカツヨリと言う。勇者と偶然同じ名前の剣士だよ」
「そうか、王はお前を待っていたのか。だが、勇者パーティーの素材は貴様らには渡さん。魔族に世を変えてもらわねば、そう魔族が世界を救うのだ。それには貴様らは邪魔だ」
「ふーん、面白い考えだな。魔族が世界を救うのか。マーリーさんにとって今の世界は平和ではないと言いたいのか?」
「平和ボケをしている民は堕落するだけだ。聞けば人間の国も私利私欲に走る者が多いそうだ。わしの村は長年勇者パーティーの素材を護ってきた。何のために?誰のためにだ?誰が得をしているのか?少なくとも先代までのマーリー村は貧しく村の者は誰1人として得はしていない。今の世界は堕落していてこのままでは自然と滅びるだろう。ならば魔族による政治にかけてみる価値はある。少なくともこのまま進むよりはマシだ」
「さっきの魔族に唆されたのか?」
「キッカケを待っていた。決めたのは自分だ」
こりゃダメだ。確かにマーリーの言う事にも一理ある。だがカツヨリは気に入らない。マーリーは他人に頼って生きている。こっちがダメなら魔族だ、って自分で何かしたのかこいつは?魔族に肩入れしただけだろ。
「そうですか。なら、倒しますね、遠慮なく」
リコのホーリーアロー乱れ撃ちが炸裂し、気がつくと中央のでかいスケルトン以外は倒されていた。でかいスケルトンは大きな盾でリコの攻撃を防いだようだ。鎧、兜、剣に盾。フル装備なキングスケルトンは立ち上がりムサシに斬りかかる。
「速い、でかいのに!」
ムサシはなんとか避けてキングスケルトンの左足を斬るが弾かれる。カツヨリが試しに火の魔力を纏わせてキングスケルトンの右足を斬ると足が燃え出すと同時に黒い何かが現れて回復してしまう。
「あれ?これってさっきのやつ?黒の領域ってやつかな?」
それを見たリコはもう一度ホーリーアローを5本だけあちこちに散らして発射した。キングスケルトンは盾で3本は防いだが残りの2本は足と肩に突き刺さる。が、少しすると同じように回復した。どうやらグドラと同じ結界のようだ。この結界の中では不死なのかもしれない。
「なんか便利だよな、あれ。でもさっきと同じなら、って、おい」
キングスケルトンの剣がカツヨリを襲いなんとか両剣で受け止める。キングスケルトンは見かけによらず剣を素早く引き、連撃を繰り出してきた。カツヨリはスキル加速を使って背後に回り込み部屋の壁を三角飛びの要領で蹴り、上空へと舞い上がった。そのまま横に回転しその勢いを利用して、
「行くぞ、新技 きりもみベリーロール斬り!」
走り高跳びのベリーロールのようにくるくる回りながら両剣でキングスケルトンの首を刎ねた。
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