第114話 四天王グーリー

 リコはカツヨリの指示通りに仕掛ける準備に入る。ムサシは魔道具を使った新技の溜めに入った。カツヨリは指示だけ出してグドラに突っかかる。小刀の投擲3連発のあと、


「ヒャッハー!二刀流、連打連撃。とにかく斬る、ひたすら斬る、キルキルミキル、あれ?なんか違うけどとにかく斬る」


 目的はただの時間稼ぎだ。グドラには攻撃は全く効いていないが手数を出して相手が何もできないようにする作戦だ。が、グドラから黒い魔力が噴き出てくる。カツヨリはそれに触れてしまった。身体が拘束されようとしている。


「フォ、フォ、フォ。触れたな、人間よ。これは心を操る上級闇魔法 アヤツール。これに触れた者は我の操り人形よ。フォ、フォ、フォ、これでお前は我のしもべだ。まずはそこにいる2人を殺せ」


 カツヨリは頷くと顔をゆっくりと2人に向けそのままリコの方へ歩き出す。そして剣を構えた。


 グドラは展開を楽しそうな顔をして見ている。この人間は強い。以前戦った人間と比べると段違いだ。太陽を克服し強者を従える。なんて気持ちのいい日だ。これで四天王グーリーを倒せば我が四天王だ。いや、不死だぞ我は。我こそが真の魔王ではないか。フォ、フォ、フォ、自然と笑顔になる、アンテッドが笑うとこの上なく不気味なのだが。


 グドラは完全に油断している。そこをリコの魔法が襲う。


「聖魔法。ホーリースポットライト」


 グドラの真上に突然照明器具が現れた。そして聖なる光がグドラを覆う。


「なんだこの光は。くだらない、我の領域展開には効かぬわ」


 グドラの周囲にあるドーム状の結界にような物が聖なる光によって視認されるようになった。これこそがマーリーが作った防具の効果でこの領域の中にいる限りグドラは不死なのだ。攻撃を受けたとしても瞬時に回復してしまう。リコの放った聖魔法は、グドラの周囲の領域に沿って皮膜のように貼り付いている。黒い領域ドームに白い皮膜が覆った。


「ムサシ!」


 リコの叫び声にムサシが反応する。風の魔道具を使い自らの風魔法を強化し、それを剣に纏わせる必殺剣、その名も


「竜巻斬り!」


 剣が領域ドームに炸裂すると、そこからヒビ割れが始まる。グドラが焦る。


「な、なんだと。あり得ん、この世界で最強の素材を使った防具のはずだ」


 グドラの叫びも虚しく、領域ドームは粉々に砕けてしまった。グドラの闇領域に聖なる光が貼りついて表面の魔力が中和していたのだ。ただの皮膜となった領域の境目はムサシの強攻撃によって破壊されたのだ。これこそがカツヨリが考えた作戦だった。カツヨリは領域の存在、特性を見極め弱点と思われるリコの聖魔法にかけたのだった。グドラは太陽の光を浴びよろける。グドラの防具が再び領域展開を始めドームを形成しようとしている。その時、


「魔炎陽炎十文字斬り!」


 カツヨリの新技がグドラを切り刻んだ。この技は炎の魔力を纏った陽炎を4連続で四方から十文字型にぶちかます技だ。スキル加速をフルに使いまずは横、胴を払い、返しで縦に真っ二つ。真横から再び胴を払い、反対側の横から縦に一閃。グドラは切り口から燃え始める。魔道具が領域展開をしようとするがリコの聖魔法がそれを阻む。


「ホーリーアロー、乱れ打ち!」


 ドームを形成しようとする黒い膜に光の矢が連続で飛来し突き刺さり、領域を完成させない。グドラはついに全身が燃え始める。


「バカな。なぜお前は動ける。我のしもべになったはずだ、ウォー、熱い、熱いぞ。まさか我がこんなところで。グワァー」


 グドラは燃え尽き防具が地面に残った。そう、カツヨリはタラさんにもらった指輪に加え女神の加護がある。状態異常や精神攻撃は一切通じないのだ。


「よくやったリコ、ムサシ。上手いこといったな」


「そうねお兄ちゃん。操られていたらどうしようかと思ったけど顔を上げた時笑ってたから」


「カツヨリにはあの手の攻撃は効かぬと聞かされていたからわかったが、大したものだな、その女神の加護とやらは。ところで、そこにいたドワーフが洞穴に逃げていったぞ。どうする?」


「ゴーリーを葬ってやりたいが、目的は素材の確保だ。まずグドラの遺物を回収してそれから洞穴を探索だな」


 カツヨリはゴーリーの亡骸を横の草むらに移動した。その時、


「お、お兄ちゃん。あれ!」


 グドラの燃えカスから黒い火の玉、そう黒い人魂が防具と一緒に中に浮かび上がった。そして猛スピードで洞穴の中に飛んでいってしまった。


「あれ?なんで?」


「カツヨリ。中からなんとも言えん気持ち悪さを感じる。何かいるぞ」


 ムサシの感覚はいつも当たる。まあ俺には何にも感じないんだけどね。まあちょっと威嚇してみるか。


「リコ。さっきのやって!」


「ホーリーアロー乱れ打ち!」


 リコから聖なる矢が連発で洞穴の中に放たれた。入り口近くにいたアンデッドは消えたようだがムサシの気持ち悪さは消えない。カツヨリ達は覚悟を決めて洞穴の中に入っていった。




 そして洞穴ことダンジョンの奥深く、グドラの魂が台座に座るアンデッドに吸い込まれた。グドラの防具もそのアンデッドに装着された。


「ふむ、グドラはいい仕事をしたようだ。凄まじい力を感じる」


 四天王グーリーはグドラに好きに行動させ最後は吸収してその力を得るつもりだったのだが、想像以上の力が手に入り喜んだ。これならあの生意気な勇者崩れにも勝てよう、と。


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