第112話 再びガッキー山

 翌朝、ガッキー山へ向かって出発した。ギルドでの買い取り金額は金貨100枚。使っても使っても増えてくね、お金。まあこれだけあれば素材さえ手に入ればドワーフへの報酬には困らないだろう。途中出る魔物に対しては、


「お兄ちゃん、ムサシ。私が魔法の練習するから黙って見ててね」


 と、リコが倒していく。今までみたいにいきなりファイヤーボールではなく、一呼吸置いて魔力を練り上げてから放っているようだ。確かに威力が上がっている。途中で上級魔法にチャレンジしたときには参った。前に見た魔族ギドラよりも馬鹿でかい炎の竜巻が森に炸裂し火消しが大変だった。リコは、


「まだまだね。でも訓練を続けていればあのお猿さんにも勝てるかも。でも1人じゃあ無理だからお兄ちゃんもムサシも鍛えてね」


 と、呑気に言われたがそう、鍛えなきゃなのだ。リコだけが訓練すればいいってわけじゃあない。という事で、野宿で寝る前にはムサシとの模擬戦が日課になっている。ムサシは王都で手に入れた魔道具と魔法剣の組み合わせの工夫に取り組んでいる。カツヨリはカイマンの腕輪の意味がわからず色々と試している。


「勇者パーティーにいたカイマンの腕輪なんだから何か秘密がありそうなんだけどな。魔力を流すとなんか引っかかるんだけど何も起きない」


「まあそのうちわかるだろう。わざわざ王様がくれたのなら意味はあるはずだ。それよちほれ、新技の実験台になってもらう」


「グワッ!」


 カツヨリは吹っ飛ばされて森の太い木に激突したがすかさずリコの回復魔法で復活する。うーむ、なかなかの威力だ。ムサシはいくつか新技を生み出した。リコやカツヨリの戦い方を見て自分なりに工夫している。さすが柳生の末裔というところだがまだこの間のお猿さんには勝てそうもない。カツヨリは腕輪を使うのを諦め、体術と剣技を合わせられないか考えている。前にダンジョンで魔物のヨバンバッターが大回転魔球みたいな剣技を使ったらしいし、ウサギ獣人の七色のスクリュークラッシャーキックも凄まじかった。俺にできる事はなんだ?前世では科学を駆使して電気や火薬による武器を作った。だがこの世界には魔法がある。なのにカツヨリは魔法が使えないのでイマイチ思いつかない。


「考えろ。考えて作り出すのは得意なはずだろ」


 だが、結局思いつかずムサシの訓練に付き合うだけになっていた。お陰で防御は無茶苦茶上達したが不本意だ。ムサシの必殺剣もポイントをずらして威力を半減させる事が出来るようになった。






 一行はレンドラ村に着いた。カツヨリはレビンさんに王様に会った話をしてゴーリーが来なかったかを聞くと、


「ゴーリーは帰ってきていない。そういう事なら直接マーリー村へいったのだろう。あいつはマーリー村の出身だしな」


「マーリー村にはどうやって行ったらいけますか?」


「ちょうどここから街道を挟んで反対側だ。これを持っていくと良い。わしの知り合いと言えば話が通じるだろう」


 カツヨリは変わったデザインの指輪を貰った。どうやらこれを持っているとドワーフから敵対されないらしい。一行は街道まで戻って反対側の森に入っていった。しばらくすると村がある。


「お兄ちゃん、あの村かな?」


「レビンさんは反対側って言ってたろ、もっと奥にある村だろ」


 ムサシは何か違和感を感じたようで独り言を言う。


「何かおかしい。だがなにかがわからん」


 それを聞いてカツヨリは警戒した。カツヨリには気配探知系の能力がない、だがムサシは強い。そのムサシが言うのだから何かあるのだろう。


「リコ、例のやつやってみて」


「わかった。セイントキャッチサークル」


 聖魔法を使った探知魔法、リコのオリジナルだ。カツヨリとムサシの身体を探知魔法が突き抜け、村、森に広がっていく。リコは青い顔をしている。


「どうした、リコ」


「多分ゴーリーだけど、弱ってる。あっちにもう一つ村があって、その奥にダンジョンがあるの。そのダンジョンの前でゴーリーの気配がだんだんと弱まっていく」


「ムサシ、リコを連れて後から来てくれ」


 カツヨリは叫びながら走り出した。猛ダッシュだ。リコの言った方向に走っていくと山に洞穴があってその前に魔物と倒れているドワーフが見えた。ゴーリーのようだ。カツヨリは魔物を一閃しゴーリーに駆け寄った。


「おい、ゴーリー、しっかりしろ!俺だ。わかるか、カツヨリだ」

 

「す、すま  な  い。マー  リー    さん  が   魔族 う  らぎ  た」


 ゴーリーは死んでしまった。死んだゴーリーから黄色い丸い光が浮き出て宙を舞っている。なんだ、あれは?カツヨリがゴーリーの亡骸を抱えて草むらに寝かせると黄色い光がついてきてカツヨリの腕輪に溶け込んだ。


「!!!」


 カイマンの腕輪が金色に光る。その時、洞穴から魔族が現れた。


「えっ、アンテッド?まさかリッチか。昔漫画で見たやつだ。でもなんで太陽の下に出れるんだ?」


 そう、今は昼間だ。この世界でもアンテッドは日の光に弱い、なのにこのリッチは何ともないようだ。


「人間よ、我の名はグドラ。魔族四天王グーリー様にお仕えするものだ」

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