第110話 サンドラ国王
カツヨリ達は宿に入りムサシの部屋に集まった。
「王様には明日会おうと思う。早く片付けてしまいたい、ラモスの時は盗賊に邪魔されたしな」
ムサシは悪びれる事もなく、
「それが良かろう。姫はわしが警護してるゆえ行ってくると良い」
「えっ、私は行かなくていいの?城って興味深々なんだけど」
「気持ちはわかるが俺1人で行くよ。何があったかは後で話すから。ムサシ、リコを頼む」
「承知!」
前回は誘拐する側だったろお前。
ゴーリーはレビンからの手紙を渡すために城へ行くというので途中まで一緒に行くことにした。リコとムサシは買い物と情報集めだ。武器はガッキー山のドワーフの方が良いものを作れそうなので主にアイテム、ポーションと素材を買いに行くそうだ。王都には本屋があって魔術書というのが売っているらしい。なんでドワーフと魔術?と思ったらゴーリー曰く、獣人は体術に長けていてエルフは魔術と言われているが、ドワーフの鍛治も魔術の応用なんだそうだ。なのでドワーフ独自の魔術学というのがあるのだそうだ。ただゴーリーは腕力しか脳がないので俺には関係ないといっていたが。それを聞いたリコは興味をもったみたいで本屋に行きたいと言っていた。考えたらリコの魔法は独学どころか野生の勘だけで覚えてたからなあ。魔法学校行くなんて話もあったけど基本は知っていた方がいいに決まってるし。というわけで本を買うお金をと思ったら相場がわからないので財布ごとリコのアイテムボックスに移した。何だかんだいってお金は結構持ってるから足りるでしょう。ムサシには道中で倒した魔物素材の売却を頼んだ。ムサシは自分の武器には自信を持っているので新しい物は欲しくないといっている。ただ攻撃の威力を上げるための魔道具を探したいといっていた。メインはリコの護衛なので一緒にあちこちまわるそうだ。
リコとムサシはなんだかんだ言っていい関係を築いている。主従兼仲間として。
宿の前でムサシ、リコと別れた。昨日宿屋の主人に王様へは明日会いに行くと告げていたので、ゴーリーと一緒に城へ向かって歩いていくと城の手前からなんか交通整理が始まっている。ギルドのメンバーがそれとなく護衛してくれているようだ。城の門番にゴーリーが持ってきた手紙を渡すと、門番から王様に直接渡すように言われてゴーリーが青ざめている。カツヨリはそれを見ていて可笑しくて、
「どうした、ゴーリー?」
「俺なんかが王様に会うなんて。あり得ない、どうしよう」
「今までも手紙持ってきてたんだろう。堂々としてろよ」
「今までは手紙をここまで運んで手渡して、次の日にレビンさんへの手紙を貰って帰るだけだったんです。なんでこんな事に」
「お前はこの間俺達と一緒にSランクの魔物と戦った立派な戦士だろう。シャッキとしろよ」
結構自信があるタイプに見えてたんだけど、気弱の裏返しだったのかな。カツヨリはビビってるゴーリーを引摺る様に城へ入っていった。城に入ると直ぐに案内されて謁見の間に通された。流れるように進んでいくのが気持ち良い。普段からよく訓練されている証拠だと感心した。正面に王と王妃かな?2人座っていて通路両側には強そうなのが何人か立っている。歩くと何かピリっとした、結界かな?カツヨリは王の3m手前で膝まづいた。
「カツヨリです。お呼びにより参上致しました。横にいるのはガッキー山のドワーフでゴーリーです」
「よく来てくれた。余がこのサンドラ帝国の王、ドズルである。勇者カツヨリとパーティーを組んでいたカイマンの子孫だ。ギルドからの手紙によると世界が再び危機に向かっていてそれのカギになるのがそなただという。我が国は種族の隔たりがない平和な国作りをしてきた。これからも民が平和な生活ができるようにしていかねばならん。カツヨリ殿への協力は惜しまんし、国としても魔族に屈しない為の準備を始めたいと考えている」
「町を見ましたが王様のいう通りいい国という印象を持ちました。ただ、魔族と戦うという意味ではどうかと。町の武器屋に行きましたがあまり戦闘に優れた物が置いてなく店の人に聞くと需要がないので、ドワーフの腕も鈍っているとか」
「今まで平和だった反面、武器については退化しているのが実情だ。500年前の技術もそこにいるゴーリーがいたマーリー村とレンドラ村にしか残っていない。ゴーリーよ、レビンの手紙をここに」
ゴーリーは突然名前を呼ばれて固まっている。カツヨリは笑いながら脇を小突くと、ハッと気づいたようにキョロキョロしている。ダメだこりゃ、とカツヨリは小声で
「ゴーリー、手紙を王様へは渡せ、いいから立ってそこの騎士にでも渡せばいいから」
周りの護衛陣も笑いをこらえている。やっぱいい国だなここは、と感心しているとゴーリーが騎士に手紙を渡した。王様は手紙を受け取り読み始めた。
「素材か。ゴーリーよ。お前の出身村、マーリー村には昔勇者パーティーが使っていた武器や防具の素材を預けてあるのだ。というより、あまりにも強力なので封印しているのだ。マーリー村には王の勅命でその秘密を守ってもらってきた。だが、今こそその封印を解き、武器を強化せねばならない。レビンは時がきたと言っている。ゴーリーよ、今からマーリー宛に手紙を書くゆえ、それをマーリーへ持っていってもらいたい。出来ればマーリーに城へ来るように伝えてもらいたい。さて、カツヨリ殿。手紙を書く間城で待っていてもらえないか。その後で詳しい話を聞かせてくれ。余もこの国に伝わる事を話したいと思う」
謁見は一度解散した。ゴーリーはマーリーへの手紙を持って一足先にガッキー山へ戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます