第109話 ドワーフの国

 アイテムボックスは2つ持つことはできないので、伝説龍王伍号機ゴーリーファイブと思われる石像が入っているアイテムボックス大にカツヨリの荷物を移した。その中には例のダンジョンコアもあった。今まで持っていたアイテムボックス中はいらなくなったのでゴーリーに渡した。お互いにアイテムボックスとの契約を済まし(アイテムボックスは所有者にしか出し入れができないので契約が必要なのです)、モンさんに挨拶してからその場を離れた。


「お兄ちゃん。勝てなかったね、私達もまだまだなんだね」


「なんていうか、ああいう回復持ちの強い魔物相手だと回復を上回る攻撃力が必要なんだけど、俺たちは一撃の威力が足りないんだ。モンさんも言ってたけど、あれで仲間とか眷属でもいた日にゃ、もうダメぽだよ」


 ムサシは悔しそうだ。初めて見た神獣、だが戦ったのは神獣ではなく配下の魔物に過ぎないのに4人がかりで勝てなかったのだ。修業だ、修業が足りんのだ、とブツブツ言っている。それに対してゴーリーは嬉しそうだ。ゴーリーは神獣に毎月お参りしていたそうだ、この山のドワーフにとっては土地神様だ。土地神様と話ができた事が嬉しいらしい。






 カツヨリ達はドワーフの王都に向かうことにした。剣ができるのに1ヶ月かかるし丁度いいと考えた。その道中にカツヨリはガッキー山で得られた事を整理する。


 ・勇者カツヨリはモンさんも封印していた

 ・封印は魔族によるものではなく俺が現れたから解けた?どういうことだ?

 ・勇者カツヨリを中途半端と言った。俺のことは善の方だと?

 ・ゴーリーという名前は偶然なのか?

 ・だとすると、この伝説龍王伍号機ゴーリーファイブはなんだ?

 ・神獣は俺を殺さない。強くなるのを待っているようだがなぜだ?


 神獣はエリアルが作った生物の祖先だ。簡単に倒せるものではないし封印というのもどうやったのかわからない。それになんで勇者カツヨリは神獣を封印しなければならなかったのかもわからん。一緒に魔王と戦うとかの方が面白そうなのに。


 この世界に来てだいぶ色々わかってきたと思ったが謎も増えていく。段々と確信に近づいてはいるんだろうけどね。






 ご一行はゴーリーの案内で王都に着いた。ゴーリーも王都には滅多に来ないそうだ。ガッキー山のドワーフは都会とは一線を引いていてるためだ。ただ、ゴーリーはレビンのお使いで王城と手紙の運搬係をしていたため来ることがあったそうだ。

 ゴーリーは門番に身分証明書を見せていた。カツヨリ達はギルドカードを見せると門番が固まった。なんで?


「おい、上官を呼んでこい。例のが現れたとな!」


「なんだって。この人がって子供じゃないか。いや、おっさんもいるか。わかった、すぐ呼んでくる」


 ドタバタドタバタ。なんなのでしょうね。ゴーリーに聞いてみた。


「何、これ?」


「わかりません。カツヨリ様達が来ることは知らないはずですが。ギルドからの根回しではないですか?ギルドカード見て反応してましたから」


 上官が現れ大層な部屋に通された。どうやらゴーリーの言った事が正しいようだ。前に寄ったギルドで渡した紹介状がこの王都に回ってきて大騒ぎになったらしい。まあ、魔族に神獣、強い魔物がうじゃうじゃとくれば騒ぎにもなるね。それでギルドから手厚く出迎えるよう連絡があったのだそうだ。20分程待っているといかついドワーフが現れた。


「マルス国のギルドから連絡があってな。わしはこの王都のギルドマスターでSランク冒険者でもあるグライトという。皆さんを歓迎する。それと、王が会いたいそうだ。時間はそちらに合わせるとおっしゃっていた」


 また王様謁見ですか。今度はこっちの都合に合わせるって、ラモスから情報入ってるな、こりゃ。


「ラモス国王とサンドラ国王は交流があるのですか?」


「王族同士の事はわからんよ。ただ、貿易は盛んだし、ほら、ラモスは鉄が取れないだろう。この国からも供給しているのさ。確かマルス国からも供給されていたな。それに今回は手紙にな、カツヨリを手厚くとしつこく書いてあったからこっちも多少構えているところはある。なんせあのレイラからの手紙だしな」


「レイラさんを知っているのですか?」


「あれだけの回復魔法の使い手はこの国にもいない。エルフで美人でさらにAランク冒険者だ。そういえばカツヨリもAランクだそうじゃないか。やはり勇者ってのは強いのか?」


「俺は勇者ではありませんよ、多分。これからなるかもしれませんが?」


「スキル勇者の影 、か。ただの影なのかどうかだな。とりあえずギルドで宿を用意した。そこで旅の疲れを癒してくれ。王は今日から3日、カツヨリのために時間を開けたそうだ。行きたい時間を教えてくれれば助かる。それにわしもカツヨリの話を聞きたい。流石に王の謁見についていくわけにはいかないのでな」


 そう言ってグライトはギルドへ戻っていった。カツヨリ達は宿で休みつつミーティングだ。


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