第107話 猿の神獣

 カツヨリは猿の顔から感じるオーラのデカさに自分との力の差を感じた。タラさんに感じたのと同じくらいだろうか。女神エリアルが最初に作った子供達の1人、猿のオリジン。


「人類の祖先だもんな。そりゃつええだろ。さて、ビビっていても仕方ない。こんにちは。カツヨリです」


 開き直って話しかけた。


「やっときたなカツヨリ。我の封印が解けたと言うことはお前が現れたという事。なのになかなか現れないからやきもきしておったわ。蜘蛛には会ったのだろう?」


「はい。タラさんには色々と教えていただきました。あの、なんとお呼びしたら宜しいでしょうか?」


「ほう。お前は前のカツヨリと違って礼儀ただしいな。そういえばそうか、お前は善の部分だったな」


「はい?」


「えっ?」


「なんと?」


 3人同時に声がひっくり返って驚いている。猿は、そうか。こっちのカツヨリは何も知らないのだったなと思い出した。


「すまん。500年ぶりだからな、すっかり忘れておったわ。とはいえ、素直に教えてやる程我は優しくはないのでな」


「俺を待っていたのではないのですか?」


「そうだな。だが我が味方とは限らないであろう。我を封印したのはカツヨリ、今度は我がお前を倒すと言ったらどうする?」


「どうするも何も今の俺たちじゃあ一瞬でやられてしまいますよ。少しは強くなったと思っていたのですがね」


「そうか。やっぱり前とは違って素直だな。いいだろう、ちょっとお前達4人でこいつと戦ってみろ。倒しても構わんぞ。そうだな、勝ったら聞きたい事を教えてやる。負けたらまた強くなって出直してこい」


 カツヨリ達が何が出るかと構える。猿の目が光った。すると森から木をわけながら身長3m程の大猿が現れた。猿は頭、身体に防具をつけている。なんかカッコいい。


「こいつはジェネラルコング、お前達でいうSランクの魔物だ。こいつに勝てないようじゃこの先に進んでも死ぬだけだ。まあ精々頑張れよ」


 猿が話し終わるとジェネラルコングは猿に向かっておじぎしてからこっちに向かってきた。いきなり身体能力強化を使っているし、すでに戦闘モードに入っている。カツヨリ達はお互いに顔を見渡して、なんか戦うしかなさそうだねとアイコンタクトして、


「行くぞ!」


 カツヨリの掛け声とともに戦闘に入った。





「ゼエ、ゼエ」


「こやつの再生が厄介だ」


 戦闘に入り20分が経過した。カツヨリとムサシはすでに疲れている。ジェネラルコングは身体能力強化を使い攻撃・防御力を上げ、10分間の効果時間が切れてクールタイムに入ると防御重視で回復を上手く使いカツヨリ達を翻弄していた。そしてジェネラルコングはクールタイムが終わると再び身体能力強化を使ってきた。


「来るぞ、またあの速いやつだ。リコ、聖魔法だ」


「はい、お兄ちゃん。セイントステータスアップ。ついでにウィンドウォール」


 リコがパーティー全体のステータスを強化する聖魔法を使った。同時に風の壁を出してジェネラルコングの攻撃速度を鈍らせる。ジェネラルコングは風の壁を突き抜けてムサシに大振りスマッシュをぶちかます。ムサシは両剣に魔力を纏わせて十字ブロックしたが、山肌まで吹き飛ばされる。リコは攻撃魔法を使うつもりだったがムサシの回復に時間が取られて攻撃仕掛けようとするタイミングを逃してしまう。


 ジェネラルコングは続けてカツヨリに向かって左右のフックを連発して猛スピード猛パワーで当てようとするが、その隙にドワーフのゴーリーが回り込んで膝の裏側にウォーハンマーをぶち当てる。動きが止まった瞬間にカツヨリのスキル加速による高速連撃がジェネラルコングを襲う。ジェネラルコングは両腕を旋回させて連撃を必死に防いでいる。その後ろから再びウォーハンマーがジェネラルコングの後頭部に入った。


「ゴキッ」


 いい音がしたが、身体強化されているので致命傷にはなっていない。ジェネラルコングはドワーフがうざいと思ったのか横っ飛びをして向きを変え、今度はゴーリーに向かって攻撃を仕掛けようとする。そこに、


「ホーリービーム」


 リコの遠距離ビームが襲った。ジェネラルコングはそれを腕で払ってしまった。えっ、と驚くリコだがその隙にゴーリーは逃げ出す事ができた。


 ゴーリーはそこそこ強いが戦闘開始時はこのメンツでは足手まといだった。速度に対応できなかったのだ。ところが、生まれ持った戦闘センスなのか2回目の攻撃にはいいタイミングで敵の気を引いている。


 ムサシが仕返しとばかり飛ぶ斬撃を連発すると、ジェネラルコングはまた腕を旋回して弾いてしまう。その隙をカツヨリがついた。


「魔炎陽炎」


 身体強化に加速、剣に魔力を纏わせた勝頼の最大攻撃力の技だ。ジェネラルコングの背中を切り裂いた。


「チッ、こんだけでかいと致命傷までいかない」


「お兄ちゃん。時間おくとまた回復しちゃうよ」


 そう、ジェネラルコングは、HP回復があるようで軽い切り傷だと直ぐに回復してしまうのだ。カツヨリは連続攻撃を仕掛ける。二刀流でひたすら連撃だ。ジェネラルコングは立ち位置がまずい事に気付き、場所を移動する。そう、ここだとカツヨリとムサシの間にいるため、前後からの同時攻撃を受けきれないのだ。


「ファイヤートルネード!」


 移動したジェネラルコングに向かってリコが間をおかず魔法攻撃を仕掛ける。ジェネラルコングは両腕を高速回転させて風を起こし、トルネードの進行方向を変えリコの魔法をかわした。


「ウソ!」


 唖然とするリコだが、空中に舞っているゴーリーが見えてさらに驚いた。ゴーリーはこの隙にと木の上からジャンプしてウォーハンマーをジェネラルコングの脳天に落とした。

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