第106話 土地神様

 土地神様。その土地を守る昔からいる神様の事だよね。日本でいうと家の近くの神社とかを言うけどこのガッキー山の神様なのかな?ゴーリーは先導をきって山道を進んでいく。リコがみんなに聞こえるように


「多分こっちだと思う、さっき聖魔法の気配探知使った時に東の奥の方に大きな気配があったから」


 気配探知マジ便利。でもさっきは気配消してる大きな反応って言ってなかったっけ?まあ似たようなものだけど。出るのは猿ってわかってるが猿、猿かあ。異世界転生してまで猿に縁があるとは何かのイタズラなのかね、ホント。カツヨリは前前世?で武田勝頼に転生して日ノ本を統一した。その時邪魔した?のが、逆だな。邪魔したのは勝頼の方なんだろうけど立ち塞がったのが本来天下を取る筈だった猿こと豊臣秀吉だった。


 秀吉も転生者で、現代のマインドコントロールを戦国に取り入れ人を上手く利用していいところを勝頼に邪魔されて死んでいった。あ、あれ?カツヨリはふと気づいた。


「ゴーリーだったよな。生まれはこの村かい?」


「さっき出てきたマーリー村の出身です。マーリー村は他のドワーフとは一線を引いていて決して交流をしようとしません。ただ、レビン親方だけは村長のマーリーさんと交流があったのです。俺が腕を磨いたいと話をしていたら弟子入りする事になって。ただ先程の話は驚きました。マーリーさんが頑なに疎開を決めていたのにそんな理由があったなんて」


「強力すぎる武器はそれ一つで世界を変えてしまうんだ。悪用される事もあるしな」


「お兄ちゃんなんでそんなこと知ってるの?お兄ちゃんならまあなんでもありなんだろうけど」


 リコが不思議そうにつぶやくと、その通りですと相槌を打つムサシ。なんだこいつら、まあいいけど。


「俺は転生前にその世界にはまだ無い、本当なら300年以上後にこの世に現れる科学技術を使って世界を手に入れた事があるんだ」


「科学技術って何?」


「そうだなこの世界だと魔道具とかかな。例えば誰でも上級魔法を無詠唱で発動できたら脅威だろう。そのくらい驚く物を作ったんだ。俺は世界を手に入れた後それらを封印した。そのままにしておくと世界が大きく変わってしまうからだ」


 ゴーリーは、少し考えた後、


「マーリーさんはその封印のお役目を務めていたと言う事なんですね。多分村の者は誰もその事を知りません」


「秘密ってのは知っている人の数だけ漏れやすくなるのさ。おそらく村長さんだけに伝えられたんじゃないかな。ところで、その、なんだ。ゴーリーって言う名前はどう言う意味なんだい?」


 カツヨリは本当に聞きたい事を聞いた。


「変わった名前ですよね。親によると妊娠中に土地神様にお参りした時に閃いたのだそうです。俺は気に入ってますよ。なんか強そうじゃないですか。ゴリ押しとかいいません?自分力には自信あるんで」


 そのゴーリーじゃないと思うんだけどな。偶然なのだろうか?





 しばらく歩いていくと山の斜面に猿の顔が見えた。ハリウッドのやつみたいだ、あれなのかな?近づいていくと、




「う、うっそだろ。これって」


 猿の顔の下の地面にそこには石像が立っていた。見た目は大魔神で顔は龍。カツヨリがなぜ驚いたか!その姿はその昔、大阪城攻略に使用したロボット、伝説龍王伍号機ゴーリーファイブにそっくりなのだ。


「いやいやそれはない。だってこいつは4人乗りで蒸気タービンないと動かないし、あれ、石像だからどの道動かないか。そうじゃない、なんでこいつがここにあるんだ。ああ、ちょっとちょとちょおおおっとどうすりゃいいのさこのおいら」


 大混乱しているカツヨリを見て回りが困惑している。比較的いつも冷静なカツヨリがこんなに混乱するなんて、この石像を知っているのだろうか?


「お兄ちゃん。落ち着いて、ちょっと水でも飲んで」


「おう、すまない」


 カツヨリは水を飲んだが興奮は治らない。石像を見つめブツブツ言っている。ちゃんとゴーガンあるしとかわけがわからない事を呟いている。


「ぼちぼち説明してくれるかな、お兄ちゃん」


 リコが我慢の限界がきたみたいでカツヨリに絡む。カツヨリが説明しようとしたその時、山の斜面の猿の方から声が聞こえた。


「そこの4人、こっちへ来なさい」


 急に4人に緊張が走る。山の猿は岩でできたオブジェに見えるが、明らかにあそこから声がした。ゴーリーは驚きながらも


「土地神様の声だ。初めて聞いた。皆さん、行きましょう」




 ゴーリーに連れられて猿の顔の下にたどり着いた。4人は顔を上に向けて猿の顔を見つめる。猿に変化が現れ岩に見えた顔がだんだんと歪んでいき生気がみなぎっていく。そして猿の口が動いて出てきた言葉が、


「カツヨリ。よく来たな。待っていたよ」


 どうやら歓迎されているようだ。

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