第105話 勇者の小手

 勇者の小手?前もらった勇者の兜だけど鑑定しても勇者の兜ってだけで何がいいのかわからなかったんだよな。試しにかぶって見たけど???って感じで特に何もなかったし。


「レビンさん。勇者の小手というのはどんな効果があるのですか?」


「わかりませぬ。鑑定しても勇者の小手としか読み取れません。ただカツヨリという人が来たら渡すようにと先祖代々言われてきたのです。こちらです。お受け取り下さい」


 勇者の小手。銀色だけど何の材質だろう?


「レビンさん。これって材質わかります?」


「それがドワーフのわしにもわからないのです。壊すこともできないと言い伝えられています」


「この世界の物でないとか?」


 どういう意味かとレビンに聞かれた。そりゃそうだな。異世界からの転生者なんて概念ないだろうし。ムサシに向かって、


「なあ、ムサシ。お前の剣見せてあげてくれない?同じ物が作れるのかを聞きたいんだ」


「同じ物など不可能。これは我が友ゆえ。だがカツヨリのいう意味はわかるからな、よかろう。レビンとやら。わしの剣、どうであろう?」


 ムサシは利光、政宗をレビンに預けた。レビンの目が輝く。まず目で見て、触って、ううむと唸ってから鑑定をかけていたようだ。


「これはおそらく魔法剣。剣と魔道具が一体化した物のようです。剣や杖に魔石を埋め込んで付帯効果を出す技術がありますが、それとは威力が桁違いです。持っている人の魔力や魔法を合わせることで攻撃力が増す剣です。その昔、勇者パーティーにいた鬼族ゼックンと勇者カツヨリが魔法剣を使ったと言われていますがどのような剣だったかは記録に残っておりません。それに匹敵するかはわかりませぬがかなりの業物です。それにこの材質、プラチナミスリルというのは聞いた事がありません。名前からするとミスリルの上位素材なのでしょうが、ムサシとやらに質問ですが剣のメンテナンスはどうしておりますか?」


「たまに拭く程度だ。自動修復がついておるからな」


「やはり。仮にですが壊れても素材がありませんので修理は不可能です。良いものを見せていただきました。で、これ相当を勇者殿はご所望で?」


「そうです。あるところに俺専用の剣があるのですがそこに到達するのにはまだまだ時間がかかります。今持っているシュラウスの剣とヨバンソード、これより魔力付与が出来る剣を求めています」


 カツヨリは自分の剣を見せた。


「いやあ、このシュラウスの剣はわしが若い頃作ったものです。まさか巡り巡って勇者殿が使っているとは嬉しい限りです。こっちのヨバンソードは魔物の剣ですな。ダンジョンの中で生成されたものですがかなりの高性能です。ダンジョンの中では冒険者が落とした剣と魔源が上手く融合して強い剣が生まれる事があるのですよ」


 そんな事が。シュラウスの剣の作成者だったとは。


「これ以上の剣は作れますか?お金なら多少はありますので」


「素材があれば可能なのですが、オリハルコンかアダマンティウム。もしくはムサシ殿の剣と同じ材質。今ここにはアダマンティウムが少ししかなく剣は一本しか作れません」


「1本でいいのでお願いします。その素材はどこで手に入りますか?」


「市場にはほとんど出回りません。出ても加工できるのはこの付近のドワーフだけですし、大体がこの土地に集まってきます。ナッツピー共和国の魔王城の近くに鉱山がありましたがもう掘り尽くされ今は立ち入り禁止になっていると聞きます。実際、世界は平和ボケしてしまっていてそこまで強い武器を求める人も使いこなせる人もいなくなりました」


「そうですか。あと、このリコは類い稀な魔導師なのですが彼女向けに適した装備を作っていただけませんか?」


 ほう、と言ってリコの装備を見始めた。何やらあちこち凝視しながらメモを取ったりしている。なんか剣の話をしている時と目の色が違う気がするのだが、もしかしてロリコン?


「勇者殿。今何か失礼な事をお考えでは?まあそれはさておき、魔道士セットですか。このような効果があるとは知りませんでした。攻撃力は十分だと思います。リコさんの今の装備の邪魔にならない防具を考えておきます。剣を打つのに1ヶ月かかりますので、またその頃お寄りください。それと、おい、ゴーリー」


 レビンは若いドワーフを呼んだ。


「それまでの間、このゴーリーをお連れください。道案内も荷物運びもできますし、腕っ節だけはありますのでお邪魔にならなければですが」


 ゴーリーが一時的にパーティーに加わった。どうやらムサシが感じた強い気配というのはゴーリーだったようだ。さて、1ヶ月後に来るとしてどこへ行くかだが。あ、忘れてた。


「レビンさん。神獣というのを知りませんか?猿だと思うのですが?」


 するとゴーリーが、


「土地神様の事ですね。ご案内します」


 えっ、そうなの?


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