第103話 レンドラ村
3人はリコの気配探知を基に街道から東側の森林に入っていった。
「道がない。これは結構キツイぞ」
先頭をいくカツヨリは木の間を抜けながらつぶやいた。街道は整備されていたが、一歩外れるとこんな酷いのか。まあ誰も通らないから仕方ないけど。突然ラージモンキーが襲いかかってきたが一閃する。その後もテールモンキーとラージモンキーが現れるがさっさと片付ける。一応魔石だけは回収した。リコの地図だとこの先に集落があるはずなので信じて進むと急に平地が現れた。村だ。何軒かの家と煙突から出る煙、この匂いはおそらく鍛治だ。
「ドワーフの集落についたようだ。リコ、情報を集めに行ってくれる?ムサシだと警戒されそうだし、ここは美少女の出番かな」
「了解です。美少女、行ってまいります」
リコは美少女と言われてご機嫌だ。しかし逞しくなったものだ。結構森の移動はしんどかったろうに疲れを感じさせない。初めて魔物を倒した時はビビちゃってナイフすら刺せなかったのに。
「お兄ちゃん、話してくれるって。来て!」
リコに呼ばれて一軒の家の玄関をくぐると中にドワーフの老夫婦がいた。奥で音がするので誰か別の人が働いているようだ。
「こんにちは。俺はカツヨリといいます。旅をしています。実は……」
「カツヨリじゃと。勇者と同じ名前とはのう。そういえば誰じゃったか?カツヨリって」
ドワーフは話の途中で割り込んできた。
「じいさんや。客人が話をしている途中じゃとて。すまんのうカツヨリとやら。じいさんは短気でいかん」
「ばあさんや。わしは短気ではない。頭の回転が速いんじゃ」
........................
しばらく夫婦漫才を聞いていたが飽きてきたので割り込んだ。
「お話中のところすいません。実はエンドラの町で知り合ったドワーフのカインという人からレンドラ村のレビンさんを訪ねるように言われたのですがご存知ないですか?」
「カインか。偏屈なじいさんじゃ」
「じいさんが言うのはどうかと思うぞ。いい勝負じゃ」
「ばあさんや。あんな変わり者と一緒にするでないぞ。わしの方が100万倍物分かりがいいわい」
また話がながくなりそうだ。どこで割り込もうかとタイミングを見計らっていたら、奥から若いドワーフが出てきた。
「客人。何もカインさんのところへ行かなくても武器なら俺が作ってやるよ。これでもこの集落、ヨンドラで一番の腕前だ。どんなのが欲しいんだい?」
カツヨリは情報入手を兼ねて話だけはしてみることにした。まずシュラウスの剣を見せてどんな反応をするか、だ。
「これより倍くらい上の剣を作って欲しい。どうかな?」
「ミスリルがベースだな。なかなかの剣だ。これより上となると素材が無い。同じくらいの物なら作れるがどうだ?」
「どんな素材が必要なんだ?」
「アダンマンティウムだ。オリハルコンてのもあるが俺には扱えない。アダンマンティウムは市場では滅多に見ることができない。ナッツピー共和国に鉱山があるらしいが定かではない」
なあるほど。いい武器にはいい素材か。そりゃそうだな。ついでに聞いてみるか?
「プラチナミスリルって知ってますか?」
「聞いたことがないが、ミスリル合金の一種か?」
知らないらしい。ドワーフでも知らないとは、ムサシの持っている剣はマジでレアなんだな。さて、素材集めから入らないとか。
「わかりました。素材を集めるところからですね。ところでカインという人にはどこで会えますか?」
「この集落を抜けてしばらく進むと次の集落がある。そこにいるよ。腕はいいが偏屈だぞ。気分で仕事するじいさんだ」
カツヨリ達は礼を言って次の集落へ向かった。なんか剣の注文が欲しそうだったけど話を聞いたお礼に魔石だけ置いていった。ここで頼むのはもっと調べてからでないとちょっとね。
また森林に入ると魔物が出始めた。今度はグレートモンキーも出てきた。猿が多いのはやっぱりあれだよね。あれの影響だよね。カツヨリは猿が苦手だ。なんでって、そりゃ前世で色々あったからだ。神獣の名前がヒデヨシだったらどうしようだよ全く。いや、フラグじゃねえぞ、そんな訳ないし。
「なんかお猿さんの数が増えたね。これって神獣さんが近いのかな?」
「姫。またさっきのやつをやってみたらどうですか?」
「いや。やめた方がいい。あれは食らった方も気付くから喧嘩売られてると思われるぞ。神獣とは仲良くしたい。戦っても勝てない」
「カツヨリ。やけに弱気だな。怖気付いたか」
「ムサシは神獣と戦った事がないからそんな事が言える。勇者パーティーですら倒せなかった強者だぞ。ただの魔物ではないし、倒すべき敵というより讃えるべき存在なんだよ。下手に出た方がいい。リコ、探知はやめとけ。どっちみち近くへ行けばわかる」
カツヨリ達はそのまま森林を進んだ。そしてまた集落を見つけた。
「ここだ、お目当は。レンドラ村だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます