第102話 ドワーフの古里

 カツヨリ達は少し休憩した後にガッキー山に向かった。


「ここが山の入り口ね。山道とはいえ街道になってるのね」


「王都につながる道だからな。国が整備しているのだろう。こういうところまで行き届いているのは、いい国の証拠だよ。税金が上手く使われているのだろう」


 リコのつぶやきにカツヨリが答えた。するとムサシが、


「それもあるが、ドワーフの古里という事もあるのではないか?道路を作るのにも長けているだろうし。先程の町もそうだったが造り一つ一つが繊細だ。街道にも所々ではあるが魔物避けがあったしな」


「魔物避け?」


「カツヨリは気づかなかったか?魔導具というやつだ。まあ弱い魔物にしか効果はないがドワーフは戦闘も強いから必要ない気もするが」


 魔物避けは商人とか人族用なのだろう。気配り目配り思いやり、やっぱりいい国だ。ここの王様には会ってみたいと思うカツヨリであった。


 一行は山道に入って進んでいくが周りには森林しか無い。ドワーフの集落を探すか猿の神獣探すかダンジョン探すか行き当たりバッタリで考えてたけどどれともバッタリしない。これぞ無計画のなす技!いやあ困ったよ。


「リコ、ムサシ。お前達いつも来る!とか、来たぞ!とかかっこいい事言うじゃん。今こそその力を発揮してくれ、どっち行ったらいい?」


 リコとムサシはお互いの顔を見て、ダメだこりゃって顔で語ってる。おい、本当に顔に出てるぞ。


「お兄ちゃん。気配ってね、敵の意思見たいのを感じるんだよ。ただ探せって言われてもねえ」


「姫?気配探知はそこに誰かいるだけでわかりますぞ。魔力はかなり消費しますが」


「え、そうなの?私自己流だから。教えてくれない?」


「かしこまりました。いいですか、姫は魔力が相当おありなようなのでかなり広範囲の探索ができると思いますぞ。まずは」


 ムサシとリコの気配探知教室が始まった。これはチャンスですよね。おいらも覚えたいっス。仲間に入れてくれっス。


「姫は火と風属性が使えるのでしたね。であれば、炎のサークルを風に乗せて飛ばすイメージで。実際に炎を飛ばさないように、気配だけ飛ばすのです。そしてその見えない炎に触れた物を感じるのです」


 リコは何度も繰り返す。カツヨリも負けじと繰り返す。


「これはかなりの高等技術です。魔力制御と魔力感知、両方のスキルがないと使えません。わしは自分を中心に100mまでなら探索可能です。ただし強い波動を持つものだけですが。弱い波動まで捕まえようとすると30mまでです。以前カツヨリを探知しそこなったのはおそらく気配を消すスキルを持っているのではないかと。だよな、カツヨリ」


 人が集中している時に声かけんじゃねえーよ。それは気配遮断、忍者スキルだ。こうやるんだよ!カツヨリは気配遮断を使った。だんだんと影が薄くなっていく。


「あれ?お兄ちゃんどこ行った?」


「姫、何を。カツヨリならここに、あれ?」


 カツヨリはすぐ横の木の後ろに隠れている。カツヨリめ、隠れたのかあの野郎。気配探知対気配遮断、つまらない勝負が始まった。ムサシが


「気配探知!うーん、見つからん。さらに小さく、いや制御ができん」


「私がやるね。フレームサークル、そして旋風!」


「アチ、アチ」


「あ、いた」


 こら、本当に火を飛ばすこたあねえだろ。気配探知じゃねえじゃんか。


「姫。勝負としてはまあなんですが、実に実践的。このムサシ、感服致しました」


「おい、何言ってんだよ。違うだろう。何の訓練だよ!」


 結局、カツヨリの気配遮断は気配探知より上と判明した。また気配探知に対する弱点も判明した。こうなると透明化スキルはやっぱり最強だ。女風呂も覗き放題だしね。それはともかくその後もリコの気配探知の訓練が続けられた。その間ヒマな男2人はスパーリングと言う名の半分喧嘩だ。カツヨリからすると魔法剣をいつか覚えた時に役に立つと考えての訓練であり、ムサシからするとカツヨリの体術、剣術を学ぶ目的がある。


「真魔陰流 旋風剣」


「ゲッ、見たことない技」


 カツヨリはスキル加速で浮身を使い勢いを逃す。その隙に小刀を投げる。ムサシはそれを祓って逃げるカツヨリを追う。カツヨリは剣をしまって居合に構えだ。それを見たムサシは急ブレーキをかけ飛び逃げる。


「カツヨリ。なんだそれは?」


「よく逃げたな。大したもんだ」


「まだ隠してる技があるのか」


「お互い様だろ」


「ちょと休むか」


「おう」


 仲良くお茶タイムだ。なんだかんだいってお互いを認めている2人だった。その間もリコはうーんと唸りながら訓練をしている。



「そうよ、これだわ」


 リコの身体が白く光る。聖魔法?目を瞑っていたリコの目が大きく開く。


「セイントキャッチサークル!」


 ムサシとカツヨリの身体をなにかが通り抜ける。あ、これよくあるやつだ。探知された方もわかっちゃうやつ。リコは地面に地図を書き始めた。


「西側に集落が3つ。東側に2つ。地面の中は無理みたい、ダンジョンはわからなかった。魔物が多いのは東側。それと神獣さんなのかな?東の奥の方で気配消してる大きいのがいる」


 そんな事までわかるのか?とりあえず東側の集落を目指すことにした。

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