第96話 武器

 カツヨリは町の武器屋を探した。町の名前はエンドラというそうだ。遠くの方に煙が上がっているエリアがある。あそこら辺が鍛冶場かな?と向かっていくと途中にいかにも高級な店並みが現れた。5番街とか銀座みたいな雰囲気だ。服屋、道具屋、武器屋と並んでいる。高そうだけどこういう所は物はしっかりしてるんじゃないかな。とりあえず賑わっている武器屋に入ってみた。


「いらっしゃいませ!」


 いきなり人間の20代前半の女性に声をかけられる。メガネっ娘でスリムでDカップくらい。なんか想像していたのと違う、ここじゃない感でいっぱいだ。


「本日は何をお探しですか?当店は初めてでいらっしゃいますか?当店はこのエンドラの町で最も人気の高いブランド ラッション製の武器を取り扱っております。是非お手にとってご覧下さいませ」


 この店員責めるな。気の弱い奴だと何でも買わされそうだ。武器にブランドってあるんだ。


「ブランドでございますか?武器を製造しているメーカーは多数あります。その中でデザイン性、運用性、使用感、重さを考慮して最もバランスが良く優れていると評判なブランドが当店取り扱いのラッションでございます。失礼ですがお客様は剣士でいらっしゃいますか?それでしたら、あちらのコーナーに取り揃えてございます。どうぞこちらへ」


 有無も言わさずこの連続攻撃。デザイン性って見た目関係あるのかよ。攻撃力とか付帯効果じゃないのかね、と思いながらお姉さんに乗せられたままついていくと、


「おおっと!」


 豪華きらびやかな剣が並んでいる。鞘がカッコいい、いかにも貴族が持つ剣のようだ。柄は持ちやすいようにグリップに工夫がされているようだ。なんか宝石見たいのが埋め込まれている。見たい、じっくり見たい。


「すいません。手に取ってみてもよろしいですか?」


「はい。どうぞ。ただここでは試し切りはできません。同じ剣に相当するものが試技場にありましてそこで切れ味を試す事ができます」


 カツヨリは店員にここでしばらくみてますと言って引き下がってもらった。


「何かございましたらお声をかけていただければすぐに参りますので」


 うむ。至れり尽くせりである。店の教育が行き届いているのである。お姉さんがいなくなったのでルーペを出すのである。ここで使わずにいつ使うって感じだよね。そう、女神からもらった鑑定ルーペだ。とりあえず端から見ていくか。


 ・ラッションの剣

  鉄製。攻撃力+40、付帯効果なし。魔力付与5%。豪華だが普通の剣


 ・ラッションの豪剣

  鋼製。攻撃力+60、付帯効果小 炎:魔石による付与。魔力付与10%。柄に魔石を嵌めると剣に付帯効果を付けられる。重量重くレベル30以上推奨


 ・ラッションの細剣

  ジュラルミン製。攻撃力+30。付帯効果小 雷:魔石による付与。魔力付与15%。柄に魔石を嵌めると剣に付帯効果を付けられる。軽量、女性向き


 ・ラッションの鞘

  剣のダメージ修復効果小。メンテは必


 なーるほど。柄の宝石見たいのは魔石かあ。でもただの宝石の剣もある。でもこれだと今持っている剣の方が強いな。カツヨリはアイテムボックスからシュラウスの剣とヨバンバッターからとった剣を出して鑑定してみた


 ・シュラウスの剣

  ミスリル合金製。攻撃力+60。付帯効果なし。魔力付与50%。魔力伝導率が高く魔力をを攻撃力に変換できる


 ・ヨバンソード

  ミスリル合金製。攻撃力+80。雷属性。魔力付与40%。ヨバンバッターが持つ剣。素早さ+5


 やっぱし。今持ってる剣の方がいい。でもこれじゃ足りないんだ、勘でわかる。ムサシの剣みたいに魔法剣としては不十分だ。勇者カツヨリは魔法剣士だったという。ムサシも魔法剣を持ち魔法剣士としての技も使える。今の俺では使いこなせないかもしれないがいずれ必ず必要になるんだ、魔法剣が。店員を呼んできいてみた。


「すいません。魔力付与ってどういう意味ですか?」


「はい。魔力付与というのはまれに上級の剣士の剣士の方が、剣に魔力を流し込んで戦われる事があります。普通の剣は魔力を流しても反応しません。当店の剣は魔力の一部を攻撃力として使える事ができます」


「魔力付与10%というと、流した魔力の10%が攻撃力になるって事ですか?」


「はい。その通りです。その他に剣には属性を持たせる事ができます。当店の剣で柄に魔石が埋め込まれているものがありますが、炎や雷といった属性を付与できます。簡単に魔石が交換できますので、魔物の弱点に応じた属性を持たせる事で戦いを優位に進める事ができます」


「すごいですね。ところでおいくらくらいするのですか?」


「当店の剣は一流の物ですので、最低でも金貨50枚ですね」


「……………、ありがとうございました。失礼します」


 カツヨリはヒキツリながら店をでた。たっけーな!でもなんとなく相場はわかった。じゃあムサシの持つ利光とやらはどんな剣なんだろう?後で鑑定させてもらうか。


 いくつか同じような武器屋があり冷やかしながら、煙の方へ歩いていくと急に道一本挟んで雰囲気が変わった。銀座から駅前商店街に変わったようだ。そこを抜けるとまた道一本挟んで民家エリアになった。たまに駄菓子屋のような雰囲気の店があったりする。こういうところの方が性に合ってるよな、なんて考えながら進むと煙が上がってたところに着いた。大きな工場ではないな、鍛冶場なのかな?があって店先には産地直送じゃあない、工場でできたと思われる剣を売っている。チラチラ見ていると店主に掴まった。


「おい、兄ちゃん。そんなところから見てねーで近くで見な。ここで売ってるのは名剣ではないが駆け出しの冒険者には十分な代物だぜ」


「すいません、それでは遠慮なく」


 カツヨリは剣を持って軽く魔力を流してみたが全く反応しない。念のため店主に聞いてみた。


「魔力伝導率が高い剣ってありますか?」

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