第93話 ラモス国王  

ムサシはまた見たことない構えをとった。二刀流だ。そのまま魔法を使った。


「真魔陰流奥義 風雅斬」


 木刀に風魔法のトルネードが渦巻いている。魔力ではなく魔法を纏わせているようだ。カツヨリは魔法が使えないのでこれは真似できない。ムサシが飛び込んできた。カツヨリは身体強化を使い木刀で受けるが弾き飛ばされる。


「なに!風の渦の力がそのまま剣に乗っかっているのか?」


 カツヨリはそのまま浮身で後ろに飛ぶがムサシのもう一つの木刀の追撃に合う。慌てて左腕で受けるが、ゴキっという嫌な音がした。それに構わず頭に防御シールドを張った状態でヘッドパッドを食らわせる。勢いよく突っ込んできたムサシはカウンターでヘッドパッドをくらいその場に倒れた。カツヨリも左腕を抑えてうずくまる。腕の痛みでヘッドパッドの威力は減らされたが、カツヨリの防御シールドは魔力を集中させたピンポイントバリアーだ。硬さはオリハルコン並みだろう。ムサシはピクリとも動かない。


 それを見たリコは、


「エリアセイントライト」


 怪我した2人を優しい光が包み、傷が治っていく。中級の範囲聖魔法だ。リコは聖魔法のコツを掴んだようだった。腕が治ったカツヨリはリコの頭をいい子いい子して褒めた。リコは嬉しそうだ。


 ムサシは頭を振りながら立ち上がり、疑問に思った事を聞いた。


「カツヨリは魔法が使えないのか?」


「よく気づいたな。大したものだ。それになかなか強い。ムサシ、俺はヤンギュー国に行きたい。付き合わないか?」


「わしはリコ様にお仕えする身。リコ様に従うのみ」


「だってさ、リコ」


「うーん。おっさんが加わるのはイマイチだけど仕方ないっか。お兄ちゃんとの仲を邪魔しないならいいよ」


 ムサシがパーティーに加わった。ギルド内に戻ってティータイムになった。レイラとリコが隣のテーブルで魔法について話を始めている。そちらは女性2人の穏やかな雰囲気なのだが…………。こっちは男2人だ。剣士2人だ、お互いに聞きたい事だらけの2人だ。話というよりお互いに顔を真っ赤にして頭から湯気が出てるような言い合いになっている。


「ヤンギュー国の剣士で魔法が使えんとは情けないと思わないのか?魔法剣こそヤンギュー国の真髄ではないか」


「そんな事言ったって使えないものは使えないの。しょうがねえだろ。そんな事よりムサシの持っている剣について聞きたい。あれはどういう剣だ?」


「わしの方が聞きたい。師は誰だ。その若さで剣に優れ忍びの術に体術とは」


「先に聞いたのは俺だ!」


「そもそもお前のような者が姫と一緒にいる事が気に入らん。だから素性を確認しておるのだ」


「勝ったのは俺だぞ!先に聞く権利はこっちにある」


「お前は歳上の者を敬うという事を知らんのか」


「うるさい。歳だったら俺の方が上だ」


「ふざけるな若造が」


「なんだと!」


「なんだ」


 そこにゲーマルクが入ってきたのだが、湯気が上がっている2人を見て固まっている。ゲーマルクの部下が空気を読まないで、


「カツヨリ殿。お迎えに『うるさい!』」


 真っ赤な顔をした2人に怒鳴られ、なんで怒鳴られたのかわからずアタフタしている部下に、怒るな、落ち着けとアイコンタクトしてから、


「カツヨリ殿。だいぶ盛り上がっているところを申し訳ありませんが、お迎えに参りました。カツヨリ殿とリコ殿のお二人でお願いします」


 ゲーマルクは王の客人として敬語を使い、カツヨリに失礼が無いように振舞っている。アキールに来た時とは別人のようだ。カツヨリは、話かけてきたのがゲーマルク達だと気付いてああ、そうか。王に会うんだったと思い出した。レイラはおかしいみたいで笑いながら、冷たい水を持ってきた。


「カツヨリ。まあこれでも飲んで落ち着いて。ゲーマルクさんがあんなにちゃんとしてるの初めてよ。国としては一大イベントね」


「ああ、うまい。そうですね、どうもこのおっさんといると熱くなってしまう。おい、ムサシ。このパーティーのリーダーは俺だ。そこのところを肝に命じておけ」


「なにをいう。リーダーはお前かも知れんが我が主人はリコ姫だ」


「ムサシ」


 リコがムサシに声をかけた。


「お兄ちゃんは私の大切な人よ。お兄ちゃんに従って、それが無理なら協力して。出来ないなら置いていく」


「………、わかり申した。姫にお仕えするのがわしの役目。カツヨリ殿に協力しよう。ただ誤解しないでいただきたいのだがカツヨリ殿が強いのが気に入らない訳ではない。理由が知りたいだけだ」


「わかった。旅をする間に話してやるよ。とりあえずここで待機な。城へは連れて行けなさそうだ」






 カツヨリとリコはゲーマルクとともに用意された豪華な馬車に乗り込み城へ入った。そのまま応接室のようなところへ連れていかれ、豪華なソファーに座っていると部屋に着飾ったおっさんが入ってきた。ゲーマルクが慌てて立ち上がる。


「カツヨリ殿。こちらがラモス国王です」


「やっと会えたな。カツヨリ殿」


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