第92話 ムサシの剣

 カツヨリ達はギルドに戻った。なぜかレイラとムサシが一緒にお茶をしている。仲良かったっけか?2人がカツヨリ達を見つけた。


「姫、お待ちしておりました」


「カツヨリ。さっきゲーマルクさんが来て、お迎えの馬車が直ぐに来るって言ってたわ。なんか、今度は逃がさないって空気が漂ってた」


 ムサシは片膝をつき、臣下のポーズを、レイラはなんか楽しそうだ。アタフタしてるゲーマルクが面白いらしい。なんだかなあ、と思ったけどレイラにもムサシにも聞きたいことがあった。


「レイラさん。ちょっと裏まで来てくれない?」






 ギルドの訓練場。そこにカツヨリ、リコ、レイラ、そして当然のようにくっついてくるムサシがいた。


「レイラさん。俺がムサシを痛めつけるから回復魔法を使っていただけませんか?ちょっとリコに見本を見せてあげてほしいのです。ムサシ、リコのためだ。あ、ちょっと待てよ(ムサシのヤンギュー国に伝わっている柳生新陰流がどの程度か見極めるいいチャンスじゃん。俺は昔、柳生宗矩には勝ったし)。せっかくだからそこの木刀で全力でやるか。リコ、回復魔法を普通に使うのではなく聖魔法で回復する事をイメージしろ。レイラさんの魔力の流れを感じろよ」


 まずは回復魔法からだ。聖魔法ってどうなの?

 リコは今まで装備していた魔道士セット4つに加え、王都でしか手に入らない魔道士の杖も手に入れた。これにより魔法の威力が4倍になるわけだが、聖魔法もそうなのか?完璧チート魔法少女って感じ?


 ムサシはカツヨリに一度負けているが、なぜカツヨリが陽炎や忍びの技が使えるのか疑問に思っている。ヤンギュー国にいたからといってリコ姫が預けられたのは田舎だ。なぜ、秘伝であるはずの陽炎を田舎にいて習得できるのか?ムサシが転移してから一体ヤンギュー国になにがあったのか?ムサシはカツヨリが転生者だとは知らない。さっきは不意を突かれてやられたがわしの強さはこんなものではない。木刀ならば当たれば痛い、なーにがわしを痛めつけるだ。逆に痛い目に合わせてやる!


 ムサシはニヤリとしながら木刀を正眼に構える。しかも木刀に魔力を纏わせているのが見える。あ、こいつ本気じゃん。カツヨリは楽しくなって同じように正眼に構えて魔力を纏わせた。ムサシよりも多くだ。


「なに!わしより多くだと」


「ふーん、やっぱり見えるのか?これは面白い。魔法剣士同士の戦いってとこか。どうだ、1本目は飛び道具なしで」


「よかろう、いざ」


 カツヨリはスキル身体強化と加速を使いムサシの胴を打ち払った、はずが木刀で受けられる。ただムサシは受けはしたものの威力を逃がすことが出来ず3mほど吹っ飛ぶ。


「あれを受けるか」


「なんて威力だ」


 ムサシは蓮撃を繰り出すがカツヨリに全て受けられてしまう。それもそのはず、ムサシの型は紛れもなく柳生新陰流、カツヨリにとっては周知の型だ。

 ここまで似てるとは、まさか同じ時代なのか?でも宗矩が初代って言ってたから微妙に違うんだろうな。宗矩は俺が現代に転生する前に死んでたし。もしかして俺が世界を変える前の日本?


 カツヨリはムサシの剣を受け流し、面、胴、小手に3連撃をぶち当てた。ムサシは強いが相手が悪い。ムサシは痛くて転がりながらもがいている。


「レイラさん。回復魔法をお願いします」


 レイラはムサシに近づいて回復魔法を使った。レイラの手から青い光が出てムサシの身体を包んで行く。リコはそれを見て聖魔法のイメージを作り出している。


「ムサシ、次行くぞ」


「お前は一体なんなんだ。わが剣を受けた上に攻撃ができるとは。ヤンギュー国にわし以上の遣い手はおらんはず」


「なら稽古をつけてやるよ」


「舐めるでない。わしにはまだ次の型がある」


 ムサシは木刀を2本持った。そうか、ムサシはあのムサシ、いや時代が違うでしょ。たまたま二刀流ってことだよね。ムサシはカツヨリが知らない構えをとった。


「二刀流、烈火の型。参る!」


 両方の剣から炎の龍が現れると龍の口から火を吹き出す。飛び道具なしって言わなかったっけ?慌てて水の魔力を木刀に這わせ相殺する。そんでもってムサシを見るとムサシの木刀が燃えている。


「アチ、アチ、しまった。木刀だった」


 龍は木刀を燃やした。さらに炎はムサシの服に燃え移る。火まみれになるムサシ。リコが風魔法で炎を吹き飛ばすが結構焦げちゃってる。


「リコ、ちょうどいい。聖魔法使ってみろ」


「うん。聖魔法、セイントリカバー!」


 リコの指先から白い光が現れそれは天使の輪のような形になりムサシの全身を包んで行く。輪は広がりカイコの繭のようになったあと、弾けた。そこにはピンピンしているムサシが立っている。


「ふーん。こうなるのか。すごい回復効果だな、火傷が無くなった。リコ、それってどのくらいの魔力使うの?」


「初級魔法くらい。イメージ的にHP100くらい回復させたかな」


 普通の回復魔法の10倍かあ。これは助かる。


「姫。素晴らしい魔法ですぞ。これが聖魔法ですな。次はこのカツヨリ殿にその魔法を使っていただきますのでそれまで休んでいてくださいませ」


「ムサシ。今、燃えてたろ。そんなんで俺に勝てるのか?」


「木刀という事を忘れていただけだ。普段は愛剣を使っているのでうっかりだ。では、参る」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る