第91話 話は続き

 セーラの話は続く。


「勇者カツヨリがどうなったかはエルフにも伝わっていない。魔王を倒した後、凱旋した勇者パーティーの中に勇者カツヨリの姿はどこにもなかった」


 そういえば勇者カツヨリが魔王を倒した後の話って聞いた事ないような?


「魔王を倒して死んだという説が有力と言われているが。神殿には行ってみたかい?」


 ギクッ!ちょっとアタフタしてしまう。でもさすがにそういう質問ではないよね!


「はい。ただ、神殿にあるという勇者カツヨリの像がなくなっていました。アキールでは盗まれたと言われて、ジャミラでは無くなったと言われました。なのでまだ像というのを見ていません」


「それなんだよ。どうやら世界中にあった神殿の勇者像が一斉に無くなったようなんだ。これはエルフの伝承にもない。ただ何かが起きている。勇者像が無くなったのとカツヨリが現れたのが同時期なのだが、どう思う?」


 えっ、どう思うって言われてもなあ。考えられるのは、


 ・俺に勇者像を見せたくない奴が隠した。でも、世界でに一気にってのはおかしいか。

 ・俺がこの世界にきたので消えた?勇者像が合体して俺になったとか?

  合体ロボだったんだ俺。戦国であんなに作りたくてできなかった夢がここで、って違うだろ!


「合体ロボとは何だ?」


 リコが笑いながら、


「セーラさん。気にしないで下さい。お兄ちゃんはたまに変な事を言うんです。そういえば蜘蛛さんとなんか言ってたね、何だっけ?転生者!」


「転生者というのは何だ?400年も生きていて知らない言葉がどんどん出てくるのは面白い。転生者とは勇者の生まれ変わりという意味の言葉か?」


 カツヨリはセーラは信用できると思った。エルフには助けられっぱなしだ。これも縁なのだろう。戦国でもいろんな縁があって助けられた。そう、縁は大事にしないといけないんだ。どうもこっちの世界に来てから大事なことが抜ける。聞いているのはリコとサンディか、まあいいか。


「セーラさん。俺はニホンという国から来た転生者です。別の世界で死んだ者が違う世界で生き返ることを転生といいます。前世では、いや、前前世では乱世の世を統一した事があります。天下人と呼ばれて、死後は神として祀られるまでになりました。そのせいなのか、この世界を救う為に転生したのだと思います。そして500年前に現れた勇者カツヨリ、その人もニホンから来た転生者だったそうです。神話級の蜘蛛の魔物から教えてもらいました」


「それはまた新しい話だね。2人のカツヨリは他所の世界からやってきた救世主だったってことかい」


 リコが叫ぶ。


「そ、それです。救世主!」


 リコはムサシから聞いた話をセーラに説明しだした。ヤンギュー国の事、そしてリコが一番知りたい事をセーラに聞いた。


「セーラさん。聖魔法って知ってますか?」


「魔法の属性は火、水、雷、木、土、風、光、闇の8種類。固有スキルで特殊な魔法を使う者もいる。あと回復魔法は光と風の派生なんだよ。遣い手は少ないね。さて、聖魔法かい。どんな事が出来るんだい?」


「まだ使った事がないんです」


「そうかい。魔力を集中してごらん、誰も知らないって事は誰も教えてくれない。自分でイメージを作るんだよ」


 リコは精神を集中して黙り込んだ。リコの身体の周りに七色のレインボーオーラが見えた後、白いオーラが現れた。それを見たセーラは、


「すごいね。聖魔法ってのは全ての属性の上にあるようだよ。攻撃にも回復にも使えるようだ。リコ、あんたは世界最高の魔法使いになるよ。さっきの話だと勇者、ではないな、救世主パーティーのメンバーにふさわしい存在になるんじゃないかい?」


 リコは集中を解いた。それを見たカツヨリは、


「修行だな。訓練無くして実戦はない。攻撃にも回復にも使えるなんて聖魔法ってすごいな。ここを出たら森へ、いやその前に王様に会うんだったか。またギルドの訓練場かな」


 セーラは、


「私が知っている事は話した。この国ではもう新しい情報は入らないだろう。王がどこまで知っているかだが。次に向かう国だけどドワーフの国に行くといい。北の国、サンドラ帝国だよ」


 この国、ラモス国は西の国だ。南に獣人の国、ドロス公国があるが、国境に山脈があり直接向かう事は出来ない。ドロス公国へ行くには東の国、マルス国を抜けてから南に向かうことになる。マルス国にはリリィがいる。そっちへ向かいたい気もするがあんな別れ方をして直ぐに行くのも違う気がする。なら、反対側のサンドラ帝国に行くのもいいかもしれない。


「セーラさん。サンドラ帝国に行こうと思います。でもなんでサンドラ帝国なんですか?」


「サンドラ帝国からはナッツピーに行けるんだよ。サンディもレイラもナッツピーには入れないんだ。魔族が出てきていて魔王が復活していないのだとしたら、チャンスなんじゃないのかい?」


「木聖の場所ってわかりますか?」


 セーラは地図を用意してくれた。セーラでさえ実際には行ったことはない元エルフの里。セーラの親が書いた物を写したらしい。サンドラ帝国、ドワーフの国か。でもその前に王様だな。  

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