第85話 待っていたのは
カツヨリ達を待ち伏せしていたのはレイラとサンディ、そしてムサシだった。ムサシだけ膝をついている。
「カツヨリ。久しぶりね。元気そうじゃない」
サンディが明るく話しかける。
「サンディさん、お久しぶりです。王都へ行ったっきりだったので心配してました。ところで俺から見ると不思議な3人組ですがお知り合いでしたか?」
カツヨリはこの3人が知り合いとは思っていなかったので一応聞いてみた。さすがにムサシは知り合いじゃないよな?レイラが、
「カツヨリは知らなかったよね。私とサンディは姉妹なんだ」
「ええっ、そうなんですか!あれ、サンディさんが男嫌いの原因のお姉さんてレイラさんの事?」
レイラがそうそう、と爆笑している横でサンディが何言ってんの、このウスラトンカチ、とつぶやいている。そこに真面目な顔をして畏まった顔のムサシが
「姫様。大変ご無沙汰致しております。ヤンギュー国武術師範、ムサシにございます。王より姫の護衛を命じられております。以後お側に置いてくださいますようお願い申し上げます」
「私って本当に姫なの?」
「その指輪が証拠でございます。それは王妃様よりお預かりしておりました王家の者しかする事が出来ない指輪でございます。その指輪が指に入ったという事は間違いなくリコ姫でございます」
ふーん。リコを見るとあらためて指輪を眺めている。カツヨリは、
「で、そのムサシさんとやらはなんでリコを攫ったのかな?それでもってなんでレイラさん達と一緒にいる?」
レイラは昨夜の事を説明した。オードリー邸が爆発した後、メイサも含めた4人で生き残った人の救助にあたった。オードリー伯爵は怪我をしていたが無事だった。レイラの回復魔法で多くの命を救う事ができたそうだ。助けたお礼ではないが、当面カツヨリとリコに手を出さない事を約束させたという。
「で、カツヨリ。昨日の爆発は何だったの?あの爆発の中にいてあなたとリコが無事って事はもしかして」
「レイラさん。結果として爆発してしまっただけで故意ではないですよ。リコの腕輪を外したら爆発しちゃって。慌てて逃げました。誘拐犯の館ですからね、長居は無用でしょう」
ムサシがカツヨリに向かって、
「昨日の侵入者はお前だな。うまく隠れたものだ。気配が消えたので外へ行ったと思ったが中にいたのか。もしかして気配を消せるのか?そういえばこの姉さん達の仲間も気配を消してたな。やれやれ、まだ修行が足りんか。それでだ、お前はどんな修行をしたのだ。わしがいなくなってからヤンギュー国はどうなった?」
「ムサシさんとやらは敵なの、それとも味方?答える義務はあるのかな?」
「義務はない。だがリコ姫とお前は赤の他人だ。リコ姫がこっちの世界に転移されたのには意味があるはずだ。王家の使命、リコ様にお前が必要なのか、それを見極めたい」
随分と自分勝手な野郎だな。リコを攫っておいてそっちは正当化して一緒にいる俺に資格があるのかって聞いてるのか?何様だこいつ。
「俺もムサシさんに聞きたい事があるし、リコもあるみたいだ。だけど、あんたの態度が気に入らない。リコは姫かもしれないが俺の大事な女だ。あんたに渡す気は無いし、あんたに必要な存在かって見極められる事自体が嫌だね」
「まあそうなるよな。だが俺にも立場がある。そう言うと思ってギルドの訓練場を借りてある。その姉さんは死んでも生き返らせる魔法を使えるそうだし、いっちょどうだ?いい剣を使うそうじゃないか。その自信の裏付けを見せてもらえないか?」
「まあ、どっちが上かわからせてから話を聞く方が良さそうだな」
「言うじゃねえか、小僧」
年はすでに100歳超えてんだよこっちは。それは言葉に出さずにご一行はギルドへ向かった。
ギルドに着くとメイサが待っていた。レイラが簡単に説明すると訓練場の鍵をくれた。審判はレイラがやるみたいだ。さっきの話だとどっちかが死ぬまでやるって事だよな。レイラがムサシと仲が良さそうなのが気になる。正直言って誰が敵で誰が味方なのか全くわからない。何で誘拐犯がもっともらしい顔をして堂々としてやがるのかって考えるとレイラが裏切って俺を生き返らせない事もありそうだ。カツヨリは念のため女神の祈りを外さなかった。
「リコ、そこで見てろ。ちょっと遊んでくる」
「お兄ちゃん、ムサシって強そうだよ。昨日あの3人相手に互角だったって。それってAランク以上って事でしょ。気をつけて」
カツヨリとムサシは訓練場で向き合う。ムサシは両手に剣を構えた。二刀流かよ、俺はどうするか。まあこういう時は先手必勝でしょ。カツヨリは右手にシュラウスの剣を持った。ヨバンソードは差したままだ。
「なんだ。2本目は飾りか。ただのカッコつけとは片腹痛い」
ムサシは笑いながら剣をクロスに構えた。あれ?俺の飛ぶ斬撃と同じ構えだ。偶然?ムサシの剣に魔力が集まっていくのが見える。ならば、
「な、何?あれは、まさか!」
ムサシが叫んだ瞬間、カツヨリの身体がぼやけた。
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