第82話 忘れてたよ
カツヨリはそんな戦闘が行われているのを知らずにリコを抱っこしたまま町の中心部に戻った。どこかに宿を取ってリコを休ませないとだが、王国ホテルは足が付きそうだ。ギルドにも今は近づきたくない。城も論外だし、カツヨリの事を知りそうもない場末の宿に泊まる事にした。もちろん大枚を払って情報を漏らさないように念押しをして。
「リコ。少し休んでろ。俺は情報を取ってくる」
密室にならないように2部屋とって、扉を開けた状態で話をしてから宿を出た。なんだかんだ言っても結構消耗してたしまあ爆睡するだろう。精神的は結構きてるだろうし。ヤンギュー国の姫か。さて、こっちはこっちでやる事やらないと、まずはエルフを探すかなと思って歩いていると神殿があった。
「あ、ここにも用事があったな。もう夕方だし、すぐに入れるかな?」
前回、アキールの町ではものすごい数の人が神殿に並んでいた事を思い出し、混んでたら明日にしようと行ってみると誰も並んでない。これはこれで拍子抜けだなと階段を登り神殿へ入ると、予想通り美人の若くて綺麗なスタイルの良い女性がいかにも神官らしい服を着て女神像に祈っていた。
カツヨリはあえて扉を閉めて密室にした。確信犯である。
「あの、こんにちは。教えていただきたい事があって来たのですが」
神官は、こっちに振り返ると冷静に
「本日はどんなご用件でしょう?」
あれ?魅了効いてない?それはそれで拍子抜けなんだけど。カツヨリは何も言わずに神官の目を見つめた。そうしていると徐々に神官の顔がエロっぽくなっていく。キタキタキタキターーーーー!!!!!
「お名前を教えていただけませんか?私は一体どうしてしまったのでしょう。貴方様は神ですか?」
「神ではありませんよ。俺はカツヨリと言います。貴女のお名前は?」
「キティーと申します。なんでもお申し付けください」
さて、いたさないとエリアルは出てこれないんだったよな。でもその前に聞くことは聞いておこう。
「ここに勇者カツヨリ像はありますか?アキールの神殿に像は盗まれたみたいでまだ見たことがないのです」
「実はここにも勇者の像はありません。ある日突然消えたのです」
うーん?どういう事だ。俺に見せたくないとか?
「すいません。その像の人物ですが俺に似てましたか?」
「はい。貴方様、カツヨリ様ですね。勇者を若くしたらカツヨリ様に、ええっ!貴方は勇者様。それならば私の全てを捧げても何の問題もありません。私はカツヨリ様にお会いする為にこの世に産まれてきたのでしょう」
こりゃもうオーケーだなとそのまま押し倒す。ほらほれやれほいえっさほいさ。
出てこいエリアルどっこいしょ。
「何ですかその呼び方は?ご無沙汰してます」
ほら出たやれ出た。
「エリアル。聞きたい事が山程あるけど時間制限あるからまとめて聞くぞ。ヤンギュー国ってどこにある?勇者カツヨリについてどこまで知ってる?魔王っていう設定はエリアルが作ったのか、だ」
「わかりました。まずヤンギュー国ですが、500年前私が意識を失う前には存在しませんでした。最近気がついたのですが、貴方がいる世界の並行世界として存在している国です」
「並行世界。パラレルワールドってやつか。そことの行き来はできるのか?」
「転移で行き来できるはずです。ただどこでできるかはわかりません。次に勇者カツヨリについてですが私が倒れた事に関係があるようですがそれ以上はわかりません。そして魔王ですが、500年前には存在しませんでした。私が倒れた事に関係があるかもしれません」
なるほど。500年前に女神が倒れる何かがあって、それを機に魔王が誕生したという事か。勇者カツヨリもそれに関係がありそうという事ね。女神が倒れて魔王が誕生して勇者が現れて、???まさかね、それはないだろう。
「倒れる前に何か気付いた事はなかった?どう考えてもエリアルが倒れたから世界が変わったみたいだし。MPがなくなったって言ってましたよね。何か身体から抜け出たりしませんでした。魔王を産んだとか?」
「私が魔王を産んだ?考えた事もありませんでした。それでMPが無くなったと。面白い考えですが妊娠した記憶はありませんね。もう時間がなさそうです。1つだけ前回言い忘れたことが」
「何ですか?」
「お渡ししたルーペですが」
「ああ、そういえばありましたね。あれが何か?」
「あもルーペですが。あれを使うと道具の鑑定ができます。どんなアイテムも鑑定できる優れ物です。ぜひお使いください」
「なあーーーーーーーにーーーーー!!!もっと早くいえよ!」
エリアルはごめんちゃいと言って消えていった。まったくこのダメ女神は。そうか。あのルーペそんな効果があったのね。わかってればこの間のダンジョンもっと楽だったかもしれない、ていうかよくわからずに指輪とかつけてたけどこれでわかるじゃん。まあ良しとしよう。
そんな事よりヤンギュー国も500年前に関係してたのか。一体何があったんだろう。500年前、500年前、えーとつい最近何かあったような。あ、あいつだ。鬼のゼックン。あいつなら何か知ってるんじゃないか?500年前も生きてたよね、確か。う、うーんと呻き声が。あ、キティーさんが帰ってきた。
「カツヨリ様。申し訳ありません。あまりの心地良さに気を失っていたようです。お仕えする身としてこれでは納得がいきません。今度はこちらから………」
結局解放されたのは明け方だった。カツヨリは宿へ戻り、これからの事を考えていたらそのまま寝てしまい、目覚めたら昼だった。まだリコは爆睡している。試しにルーペを使ってアイテムの鑑定をしてると、見覚えのない指輪をリコがしているのに気づいた。
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