第77話 最終奥義
カツヨリが慌てて黒い布を払いのけた時、目の前に七色のオーラが近づいていた。瞬時に身体能力強化を使い防御力を上げる。
「レインボークラッシャーキーーーック!」
ゾナン流格闘術最高奥義がカツヨリを襲った。魔法は一人で何種類も使いこなせる者はいない。天才と言われるリコでさえ3種類しか使えない。だが、ローラは100年訓練を重ねて魔法ではなく魔力特性として7種類の魔力を自分の足に纏わせれるようになっていた。
分身7人それぞれに火、水、木、風、土、闇、光の魔力を纏わせ7つのスクリュークラッシャーキックを放つ。空中で7人が合体し7色のオーラを纏った空中蹴りが完成だ。カツヨリはこれはやばいと、無意識に魔力シールドを発動させた。これはピンポイントバリアーで敵の攻撃が当たるところに魔力を集中させる事で攻撃を緩和するカツヨリオリジナル技だ。昔見たアニメのシーンが勝手に浮かび上がって具現化したものだ。身体能力強化にピンポイントバリアーでレインボークラッシャーキックを迎え撃つカツヨリだったが、それでもクリティカルなダメージをくらい大ダメージを負って吹っ飛んだ。
気がつくとローラが息をハアハアしながらこっちを見ている。どうやら一瞬気を失っていたようだ。HPをだいぶ持ってかれたようだがなんとか立ち上がって剣を構える。ローラが唖然としている。
「あれを食らって立てるのか?祖父が魔族四天王を戦闘不能に追い込んだと言われている最終奥義だぞ」
「そうなのか。凄い技だ。シェリーさんのキックに似ているが威力が桁違いだ。とっさにバリアを張らなければ死んでいたよ、きっと」
「バリア?シールドの事か?そんな物持ってなかったろ。まあいい、この技は全魔力を一気に放出する。つまり今の私はもうカラッポだよ。さっきので倒せなければ私には勝ち目はない。殺せ!」
「リコはどこだ?」
「そんなに妹が大事なのか?」
「当然だろ、あんたには家族はいないのか?」
家族か。捨てたよそんな物は。ローラは小さく呟いた。それをカツヨリは聞き逃さなかった。
「あんたにも家族がいるんだろ?もしかしてシェリーさんは………」
ローラは無言で空を見上げている。おーい、帰ってこーーい。時間がないのよおいらには。
「哀愁に浸っているところをすまないがリコの居場所を教えてくれ。さっき、勝ったら教えてやるよ、って言ってたよな」
ローラはハッと気付いたように、
「負ける気は無かったからそう言ったまでだ。だが約束は約束か。お前の妹はジャミラの町、つまり王都だな。そこのオードリー伯爵の家にいるはずだ。殺さないよう話はしてあるがどうなっているかは知らない」
「そうか。教えてくれてありがとう。あなたには興味がある。さっきの7色のオーラといい、シェリーさんとの関係とか聞きたい事だらけなんだが俺には時間がない。一緒に行かないか?」
「私は盗賊だ。事実上カイマックスのボスは私なんだよ。私があんたに付くわけにはいかない。死んでもな」
カツヨリは自分のHPが半分位まで回復した感じを受け、それでは仕方ない。また縁があったら、と言って町へ戻っていった。ローラは妹思いのカツヨリを見て泣き虫シェリーの事を思い出していた。似てるキックを使ってるようだが、母に教わったのだろうか?だったら奥義まで習得してそうなものだが。すでに最後に会ってから100年以上経っている。2度と会う事もないと思っていたがさっきのカツヨリのお陰で繋がりが出来そうだ。そもそも我々カイマックスがカツヨリを襲ったのは、いや、それは言うまい。だが、私は、
「私はカイマックス。盗賊である以上、盗賊という道を選んだ以上もう戻れないのさ」
ローラは隠れ家を捨て、マルス国へ向かった。ゼックスを頼りに。
カツヨリは森を一気に駆け抜けて町の入り口に来たところで兵に捕まった。町中でカツヨリを探していたようだ。だがカツヨリは、
「すまない。今は時間がない。いつか謝りにくるから勘弁してくれ」
と言ってスキル加速を使い一気に町の中へ消えていった。そして門番からカツヨリが戻ったという噂がギルドまで届くのには大して時間はかからなかった。
レイラはすぐにゲーマルクに使者を出し、自らはサンディに会いにエルフのセーラの元へ走った。レイラは普段変化の指輪をしていて人間にみせかけているが、その正体はエルフだった。サンディの姉にあたる。人間であるこの町のギルドマスターに嫁いだので人間のフリをしているのだ。サンディが男嫌いなのはこの姉、レイラが原因だ。レイラは普段はエルフとの接触を意識的に避けているが今はそんな場合ではない。
「お久しぶりです、セーラさん。レイラです。サンディは来ていますか?」
「へ、何しにきおった。普段エルフを避けているお前が。まあいい、よっぽどの事じゃろ。サンディ、大好きな姉さんが来たぞ」
「あ、どうしたの?ここに来るなんて。ま、まさかカツヨリに何か?」
「町に戻ったらしいの。でもすぐに姿を眩ませたわ。多分リコが見つからず帰ってきたのではないかと思うのだけど」
「それは違うわ。カツヨリはそんな中途半端な事はしない。帰ってきたという事はこの町にリコがいるのよ。ところでリリィは一緒じゃないの?」
「あっ!?」
レイラはリリィの話が何も伝わってきていない事に今気付かされた。そういえばリリィはどうしたのだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます