第71話 ゾナン流格闘術
オズバーンの嫁、ミランダは勇者パーティーに本来入るはずだったウサギ獣人ゾナンの孫にあたる。ゾナンは勇者の身代わりになって死に、その代わりに虎獣人のジャグラーが勇者パーティーに入ったのだがそれを知る者は少ない。
「ミランダ。お前まだウサギ獣人が王になるべきだと考えているのか?」
「お父様。祖父は獣人最強の戦士でした。祖父がいたからこそ今の平和な世があるのです」
「その祖父が作った平和をお前は乱そうとしているのだぞ」
「お父様、それは違います。今が間違っているのです。ただ、それを覆す力は私達にはございません。ですがいずれ機会があると信じております」
「それをバイアランに託したのか?そんな事をすればわしの可愛い孫達が………」
「何をそんなに焦っておられるのです。あ、あなた、ただ今帰りました」
オズバーンがやってきた。
「ミランダ。遂にこの日が来たぞ。王に子がなく、王位を格闘技戦で決める事になったのだ」
「何ですって。それでお父様が。なるほど、話が繋がりました。それでは、あなたに我が祖父の奥義を授けましょう」
ミランダは祖父亡き後、父から格闘技を叩き込まれた。ゾナン流格闘術というオリジナルの闘技を。オズバーンと結婚後はトレーニングをしていなかったが基本は身体に染み付いている。そしてオズバーンの実力では優勝できるかはわからない。獣人は皆格闘技に長けている。
「ジャグラス。わかっているのか。大事なのは勝った後だ。どうやって国を治めるのか、あのうるさい獅子獣人達を従えねばならないんだぞ」
「父上。わかっております。この日の為に案は考えております。心配なのはわかりますが、父上。このまま獅子獣人の国になったら我らウサギ獣人がどうなるかはお考えで?」
バイアランは固まった。今の王はウサギ獣人に恩を感じておられる、それゆえのこの領地であり待遇だ。獅子獣人が王になったら……………、こうなる運命なのか。こうするしかないのか。
バイアランは無言で家に戻った。孫のローラとシェリーを連れて。オズバーンとミランダは早速特訓を始めた。
2ヶ月後、王位争奪格闘技戦が開催された。参加者は虎獣人のワグナー、この男は虎獣人だがジャグラスとは赤の他人だ。猫獣人のミック、犬獣人のウエンツ、そして獅子獣人のクロックだ。クロックは獅子獣人最強と言われている。そして王位を狙っている大臣のレオンの息子でもある。参加者が5人なので変則的なトーナメント戦となった。クロックとミックの勝者が決勝へ、ワグナーとオズバーンの勝者とウェンツが戦い、勝者が決勝に進む事になった。オズバーンが1試合多いのは偶然か、あるいは???
この王位争奪格闘技戦は、他国にも宣伝され観客をいれての戦いとなった。不正を防止する為にバイアランが王に提訴したのだ。審判も公平な立場を証明する為にラモス国のギルドからAランクの冒険者が派遣されている。
格闘技戦というがルールは簡単で、相手がノックアウトされて10カウントが入るか負けを認めれば勝者が決まる。一応30m四方のリングが設置されており、ロープブレイクはない。場外負けの規定はなく、リング中央に戻って試合再開になる。
武器の使用は認められないが、魔法、スキルの使用は認められている。当然だがセコンド乱入や外部からの支援は反則となる。選手には念のため、女神の祈りが付けられている。もちろん作動したら負けだが死ぬ事はないという事だ。
オズバーンはリングに向かった。相手は虎獣人のワグナーだ。虎獣人は力が強く素早さもある。噛みつき攻撃を食らうとまずいので捕まってはいけない。
「両者前へ」
審判のAランク冒険者、トーマスがボディーチェックを行い、両者に握手をさせた。離れて定位置についたのを見て、
「はじめ!」
開始の合図が発せられた。合図と同時にワグナーが突進してくる。オズバーンに向かって片足タックルを仕掛けたがオズバーンはバックステップでかわし、すぐさま突っ込んでくる顔面に向かってサッカーボールキックをくらわせた。
いきなり顔面に蹴りをくらい冷静さを失ったワグナーは力任せにパンチやキックを繰り出すが、ウサギ獣人オズバーンは軽快な動きでかわしカウンターを当てまくる。勝負は2分ほどでついた。ワグナーが戦闘不能になりオズバーンの勝ちとなった。
その試合を獅子獣人達が見ていた。クロックのトレーナー達のようだ。
「オズバーンの動きは、ゾナン流格闘術の基本のステップだ。かなり訓練したと見える」
「あの格闘術は学んだ者も多い。それゆえに弱点もある」
「あの程度ならクロック様でも勝てるだろうが、多分実力を隠しているな。次の犬獣人が頑張ってくれないと実力が見えてこない」
「犬にはな、あれを与えてある。面白くなるぞ!」
次の試合は、クロックとミックだったがライオンと猫である。相性良すぎて瞬殺でクロックが勝った。そして、オズバーンとウェンツの試合が始まった。
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