第65話 遭遇

 ハゲールの森。この森は国境を跨いでいる巨大な森だ。森の向こうへ突き抜けるとマルス国に出るのだが、カツヨリはそれを知らない。


 地図を頼りに進んで聞くとちょくちょく魔物が現れる。ウルフ、デリシャスラビット、ブラックウルフ等前に見たことのある魔物ばかりでランクは低い。カツヨリはリリィに魔力を使わずに倒すように話して自分も剣だけで戦った。最初の別れ道に着くとリリィが、左ね、と言い進んでいく。途中蛇や猿の魔物が出るがこれも魔力を使わずに倒す。リリィも短剣だけで倒している。ここまで全くダメージを受けていない。


 進んでいくと地図に書いてある道はここまでだった。道はまだ続いている、仕方なくそのまま進むと盗賊らしい小集団が待ち構えていた。


「来やがった。2人だけか。怪我はしてなさそうだな」


「まあ、ここまでは大した魔物も出ないしな。少しは消耗してんじゃねえのか?」


「ポーション使ったんだろうよ。小僧と小娘じゃねえか」


 ボスらしき男が盗賊達をいなしめる。


「この2人は強いぞ。油断するな。全力でかかれ!」


 ボスに声に盗賊達が構えた。盗賊達に魔力がみなぎっていく。カツヨリもリリィも盗賊の指先に赤や青の魔力が集まっていくのが見えていた。盗賊達が魔法を放つ瞬間、2人は位置を移動した。カツヨリの小刀、リリィの手裏剣が盗賊の額に刺さり、一瞬でボスを残して死んでいった。


「ウィンドバインド」


 リリィの風の拘束魔法でボスを捉え、投げた武器を回収した。さてと、カツヨリはボスのアキレス腱を切った。


「ギャー、い、痛え」


「そうか、痛いか。残念だが俺もリリィも回復魔法は使えないんだ。じゃあ、もう一本」


 カツヨリはもう1つのアキレス腱もナイフで切る。これで拘束魔法が切れても逃げれない。ゆっくり話を聞きますか。


「俺の妹がどこにいるか知らないか?」


「……………、」


「そうか。なら仕方がない」


 カツヨリはリリィの顔を見てアイコンタクトで訴えた。リリィは素早く周囲を動き、この場を見張っていた盗賊5人を仕留めた。手裏剣で、そして短剣でだ。カイマックスはかなりの組織のようだ。こいつらは下っ端で見張りが付いていたのだろう。カツヨリは魔力の気配探知は使えないが人の動きは剣豪としてのスキルでわかる。気の流れってやつです。リリィはダンジョンで気配探知らしき物を身につけていた。魔力の動きで位置がわかるらしい。


「もうお前を見張っている者はいない。素直に喋れば命だけは助けてやる。リコがどこにいるか知らないか?」


「森を抜けてマルス国へ行け。俺はそこまでしか知らない」


 と、その時倒して死んだはずの盗賊が起き上がった。目が赤く光っている。なんだこりゃ?ボスはそれを見て慌てて這って逃げようとしたが死んだ盗賊に殺された。


「リリィ、何こいつら。どうなってんの?」


「死霊術かも。初めて見るからわからないけど、死んだ人を操る魔法があるって聞いたことがある」


 ゾンビとかアンテッドってやつか。確か火に弱いっていうやつだよね。でもリコはいないしリリィは火魔法使えないしどうしましょう?


「カツヨリの剣に火の魔力纏わせて斬ればいいんじゃない。ほら、この間トレントジャック燃やした時みたいに」


 そうか、あの感じね。やってみよう。カツヨリは剣に魔力を纏わせて元盗賊を斬りまくる。あっという間に皆燃えてしまった。さて、こいつらを操ってたやつが近くにいるはずなんだけど。


「リリィ。気配感じないか?死霊術を使ったやつが近くにいると思うのだが。あ、いた。あんなとこに」


 空だ。空中に龍が飛んでいてその上に誰かが乗っている。龍はカツヨリ達の上空を周回したあと、森の奥の方へ飛んでいった。


「あれって、龍よね。初めて見た。カツヨリ、敵は龍を飼ってるの?」


「わからん。龍だろうが鬼だろうが敵ならば殺す。あれは様子見だろう。何にしても追うぞ、待ってろリコ」


 カツヨリ達は龍が飛んでいった方へ進み始めた。




「あれがカツヨリだ。どう思うリョウマ?」


「どうも何もあんな雑魚相手じゃわからんよ。お前が直接応対すれば良かっただろうよ」


「まあ焦らなくてもまだ時はある。魔王復活には例のダンジョンコアが2つはないとな。で、今度はどっちに付くんだ?」


「龍族はあまり関わりたくはない。領地を脅かされない限りはどちらにも付くつもりはない。鬼族はどうするのだゼックン?」


「我々は領地は持っていない。人間の国に普通に生活しているだけだ。目立たぬようにな。今の生活を壊すのが魔族なら人間に付くよ。ただ、負ける戦には付き合うつもりがない」


「あのカツヨリ次第という事か。あれは何なのだ?前のカツヨリとどう違う?」


「わからん。前のといったがリョウマよ。お前知らないのか?あいつ生きてるぞ。今は魔族だが」


「何だと!勇者が魔族になったのか?では、さっきのカツヨリは一体?」


 空を飛ぶ龍、リョウマとその背中に乗る死霊術を使った鬼族のゼックン。この2人は500年前の魔王討伐パーティーのメンバーだ。今回はゼックンがカツヨリを見るためにリョウマを呼んだのだがこの2人?が会うのも実は500年ぶりだった。


 2人は今後どうするかという話をしながら国境を越えマルス国へ入っていった。

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