第61話 王都へ

 ギドラはメイサを斬ったあと、やっと倒したと安心して、油断しているというより気が抜けていた。ちょうど身体能力強化が切れてクールダウンタイムになったこともあり身体がだるくなっていた。雷魔法の直撃をくらったギーリーは魔法によるダメージは少ないが、雷魔法の付帯効果で痺れが抜けずにいた。ギドラはギーリーが目で何かを訴えているのに気づいた。なんだろうとふとメイサを見ると、死んだはずなのに動き出している。


「な、何?」


 慌てて再び剣を構えるが動きが鈍いため剣を振り抜く前にメイサの姿が消えてしまった。メイサは女神の祈りを付けていた。その効果で生き返る事が出来たのだ。ギドラは慌てて剣を振り回すがメイサを捉える事が出来ない。ようやく痺れが取れたギーリーが再び咆哮を使うとメイサは階段を登っているところだった。姿を現した一瞬の間をギーリーは逃さなかった。


「ウィンドカッター」


 速度重視で初期魔法を高速で打ち出した。メイサは攻撃を食らいながら姿を消し逃げ出した。


「ギドラ、追え。殺せよ」


 身体能力強化が切れて弱っているギドラはまだ咆哮の影響で動けなかった。ギーリーは自ら追いかけようとしたがメイサが逃げながら放った土魔法で出口がふさがれている。これも余興かと追うのをやめた。ギドラは追いますと言い残し出口をこじ開けて追いかけていった。


 メイサはひたすら逃げた。ギドラが追ってきていたが何とか逃げ切った。





「というわけで森の南側の洞穴に魔族の基地のようなところがあり、四天王のギーリーがいる。黒龍だが本人はダークドラゴンと言っていた。正直にいってMP切れ以外勝てる気がしない。ギドラにさえ勝てない私達では到底刃向かえない」


 レイラはメイサの実力をよく知っている。メイサがそういうのならそうなのだろう。つまり、今のこの国の戦力では四天王には勝てないという事だ。そこで重要になるのがカツヨリのパーティーだ。カツヨリのパーティーメンバーが強い秘密が解ければこの国の戦力アップにつながる。レイラはただの冒険者で国軍ではない。だが愛国心はある。国が滅亡するのを黙って見ている事は出来ない。


 議論の結果、ギーリーは放置と決まった。魔族はダンジョンコアがまだあると思っている。当分バレないだろう。カツヨリのいうタラさんもいるし。それがバレるまでは放っておき、まずは王都へ行くことになった。





 翌朝カツヨリ達は王都の冒険者達と王都へ向けて出発した。2日歩いたところで王都からの出迎えの馬車と遭遇し、そこからは馬車に乗らされての移動になった。


「なんか大袈裟だね。こんな立派な馬車始めて見るよ」


 リリィが場違いムード全開でつぶやく。まあ、田舎の村からほとんど出た事がない女の子からしたらこの馬車は凄すぎるな。同じ馬車にはレイラとメイサが護衛として乗っている。


「さてカツヨリ。色々と教えてくれ。あのダンジョンであった事を詳しくだ。あとリコ、ヤンギュー国の事も頼む」


 カツヨリとリコは質問に答える形でレイラの疑問に回答していった。時々、うーむとか、ええっとか思わず声が出て驚いていたが、1番大声がでたのはカイザータランチュラの話だった。


「本人が言っていましたが神話級の魔物で蜘蛛のオリジンと言っていました。その昔、勇者カツヨリのパーティーと戦って、勇者以外はタラさんの魔眼で動けなくなってしまい、勇者と戦ったそうです。勝負はつかずなぜかわざと封印されたっと言っていました」


「そこがわからない。なんで封印されたのか?倒せなかったから封印したのだとしても、その蜘蛛が自ら封印を受け入れたのでしょう?勇者カツヨリとどういう関係だったのかしら?」


「タラさんはわざと封印されてやったのだといってました、勇者カツヨリは面白い奴だったとも」


 そこにメイサが口を挟んだ。


「四天王のギーリーも勇者カツヨリは面白い奴だと言ってました。気になったのが、人間界に伝わる勇者伝説です。魔族の会話をどう受け止めるかですが、勇者カツヨリは本当に魔王を倒したのでしょうか?蜘蛛の魔物や四天王もカツヨリの事を褒めているのが腑に落ちなくて」


 勇者カツヨリ。何者なんだ。わかっている事は約500年前に日本からきた転生者で、魔法と剣を使い魔王を封印したのか倒したのか、とにかくやっつけて平和を取り戻した立役者だ。だが、それは表向きの姿で本当は何か裏があったような気がする。普通に魔族と魔王を倒したようには思えないし、なんでタラさんは封印される事を選んだのだろう。その選択肢が当時のベストだとすると見えてくるのはなんだ?


 いやあわからん。もっと情報を集めないとパーツが繋がってこない。


「ギドラでしたっけ。あの魔族も勇者カツヨリの事を話してました。ただ敵のようには聞こえませんでした。メイサさんが考えているように単純ではなくて何か隠された物がある気がします」


「カツヨリ。やはりまずは王に謁見してそこで情報を得るしかなさそうです。それとギルマスのウラヌスが王都のギルドへも寄るように言っていましたよ」


 王都のギルドか。行くところ盛りだくさんだな。城、ギルド、エルフの家にそうそう、神官にも会わないと。

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