第59話 四天王 ギーリー

 ドリルドの話は続く。


「王はその秘密を知りたがっている。元々カツヨリ達3人を王都へ招くつもりではあったのだが、国賓として出迎えるよう指示が出た」


 ええっ!

 カツヨリは驚いて声が出てしまった。国賓て、そんなオーバーな。まあ、ミューラさんも言っていたけどリリィとリコは他の冒険者と比べると強い。まあ、リコは魔導士セットのおかげもあるのだろうけど。王都には元々いくつもりだったけど国賓かあ、何とかならないのかな?


「王都へ行くのはいいのですが国賓はちょっと遠慮したいのですが。普通の冒険者として王都を楽しみたいので」


「カツヨリ。気持ちはわかるが王は結構頑固でな。国のためになると思うと一生懸命になりすぎる癖があるんだよ。国賓はやりすぎとも思うが、王に謁見するまでは我慢してくれ。終わったら解放してもらえるよう根回しはしておくから」


 ドリルドは王の弟だ。まあ何とかしてくれるだろう、きっと。出発は明日と決まった。じゃあ、次の話ね、メイサ、お願いとレイラが仕切り始める。


「はじめましての人もいるので、メイサと言います。Aランク冒険者で固有スキル透明化を持っています。魔法は土、雷の2属性持ちです。例のダンジョンからスキル透明化を使って姿を消し、魔族を尾行していました。私のスキル透明化は、MPがある限り姿を消す事ができます。魔族はダンジョンを出てから南に進んでいきました。5日歩き続け岩場にある洞穴に入っていきました。途中私は気付かれないように距離をとって食事やMPポーションで回復を行いそこまでは気付かれずに尾行できたと思います。そこで引き返す事も考えたのですが、中に入ってしまいました」


「何て無茶な事を。無理はしないように言ったはずです」


「レイラ。今では後悔しているよ。わたしはAランク冒険者だ。この国で3人しかいないAランク冒険者の1人だ。もう少し行けると欲が出たのさ、プライドもあったしな。洞穴の中に入るとダンジョンになっていた。尾行していた魔族はどんどん奥に進んで行き階段を降りた。わたしのスキルは姿だけでなく気配も消すし、敵とぶつかってもすり抜けるんだ。途中の魔物は私には気付かず素通りする事が出来た。ところが、だ」


 メイサは話を一度止めた。思い出したくないのであろう、苦虫を噛み潰したような顔をしてから話を再開した。


「階段を降りると魔族が誰かと話をしていた。あの魔族の倍位大きい黒いドラゴンが魔族の正面にいたのだ」


 メイサは覚えている範囲で魔族の会話を再現しはじめた。






「ギーリー様。ただ今戻りました」


「ギドラ。随分と早いな。ダンジョンはどうなった?」


「はい。人間がどんどん入り込んで餌になっております。ダンジョンコアもだいぶ大きくなりました。コアを守っているのが例のカイザータランチュラですので奪われる心配もありませんし、途中国軍とギルドらしき面々とぶつかりましたが、あのダンジョン上階にいる魔物に苦戦していました。直接戦闘もしましたが思っていた通り弱く、あれでは到底カイザータランチュラのところへはたどり着けないでしょう」


「そうか。お前はカイザーと戦ってみたのか?」


「いえ、あんな化け物と戦ったら死にますよ。私にはギーリー様の命令をこなす役目がありますので。まあいつかは倒したいですが」


「あれにはワシでも勝てないぞ。あれは神話級の魔物だ。魔王様と同格であろう」


「そうですか。それでは私なんぞでは到底届きませんな。であれば、人間にあのダンジョン攻略は不可能という事です。時期が来たらダンジョンコアを回収に行きます」


「わかった。で、お前は何を連れてきたのだ?」


 ギドラはギーリーが何を言っているのかわからなかった。メイサは動揺した。もしやバレている???


「お前の後ろに何かいるぞ。わからんか?」


 ギドラは振り返りメイサの方を見た。が、何も見えていないようだ。ギドラはファイヤーボールを何発か打ったが何も起きない。スキル透明化は敵の攻撃もすり抜けるのだ。


「ギーリー様。私には何も感じません。魔法をぶつけましたが何も無いようです」


「未熟者め。行くぞ!」


 ギーリーは口をあけ、咆哮を使った。スキル黒龍の息吹という、ギーリーの固有スキルだ。部屋全体にギーリーの声が響き渡り振動している。ギドラでさえ動けなくなるほどの衝撃が部屋全体に響いた。その瞬間メイサの透明化が解けた。ギドラは突然現れた人間に驚くが身体が動かない。


「お前は何者だ?」


 ギーリーが話しかけたが、また姿が見えなくなってしまった。メイサは再び透明化を使ったのだ。そして身体が動くようになるまで耐えた。そしてギドラ、メイサの身体が動くようになると、ギドラは魔法を打ちまくりながら剣を振るうが当たった気配がない。メイサは少しずつ後退しはじめた。ところがいつのまにか上階につながる階段の前にギーリーが移動していた。


「我が名はギーリー。魔王様の四天王の一角、ダークドラゴンだ。龍族にそのようなまやかしは効かんぞ、わずかだが魔力を感じる。先程のギドラの攻撃が当たらないという事はなんだ、霊体のようなものか?おい、返事をせい。そこにいるのはわかっておるのだぞ」


 メイサの透明化は敵をすり抜ける事ができる。霊体とはうまく言ったものだ。確かに霊体のような感じかもしれない。メイサは階段を登るにはギーリーをすり抜けなければならない。だがそんな事が出来るのか?


 メイサは悩んだ末にギーリーをすり抜ける事にした。このままではいつかMPが切れる。その前に脱出しないと殺されてしまう。

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