第55話 説明

カツヨリ達はゲーマルク達に合流した。当然のごとく質問ラッシュを食らう。


「どこから来た?今まで何をやっていた?下層からきたな、下層はどうなっている?魔族には合わなかったか?……………………」


「わかりました。ゆっくり1つづつ説明しますね。まずここのダンジョンコアはこれです」


 カツヨリはアイテムボックスからダンジョンコアを出してみんなに見せた。


『なあにいーーーーーー!』


 カツヨリはラキーヌ村のダンジョンから入った事。転移し、出口を探して下層を目指した事。そしてカイザータランチュラのタラさんの話、魔族との戦闘など一通りを説明した。ゲーマルクは信じられなかった。この少年頭がおかしいのではないか?話はまともだがこのダンジョンをたったの3人で攻略しただと?しかもあの魔族を退けたなどあり得ん。だがこのダンジョンコアは本物だ。ドリルドが言っていた勇者モドキというのはこれほどの者なのか?


 シェリーは、カツヨリには驚かされてばっかりだったがまたまた驚いて声が出ない。シドとノイルはまあカツヨリだしなと笑っている。王都のギルドメンバーは絶対嘘と決めつけている。


「まあ信じられないかもしれませんが事実です。とりあえずこのダンジョンの脅威はなくなりました。気になるのは魔族なんですが、皆さんは出会いませんでしたか?」


『………』


「あなたがカツヨリね。レイラと言います。福音の使者のリーダーです。一応Aランクパーティーですのよ。魔族には先程出会いました。今はうちのメンバーが尾行しています。そのうち情報が入るでしょう」


「はじめまして。レイラさん。カツヨリと言います。以前シェリーさんがそのうちにこの国最強の冒険者に会えると言ってたのですが、レイラさんの事ですか??」


「ああ、それは違うわね。この国にはAランク冒険者は3人いるの。そのうち2人はこの福音の使者のメンバーなのだけど、カツヨリが言う最強というのはもう1人の事ね。実力はSランクとも言われているけど今回は来てないわ」


「そうなのですね。という事はもう1人のAランクの人は?」


「魔族を尾行してるわ。帰ってきたら紹介するわ。それでお願いがあるのだけど」


「なんですか?聞ける事ならいいですけど」


「一緒に王都へ行ってくれない?」


 カツヨリは元々このダンジョン騒ぎが終わったら王都へ行くつもりだった。もうアキールの町でやる事は残っていない。


「わかりました。王都へ行きます。会いたい人もいますので」




 下層へ行く案は無くなり全員でダンジョンから出ることになった。アキールの町の者達はさすがカツヨリだ。あいつならあり得る、と納得していたが、王都から来たメンバーは納得していない。という事で必然的に先頭はカツヨリパーティになる。


「お兄ちゃん、来るよ!」


 えっ、なんでわかるの?俺だけ気配探知ないのかよ、ていうかリコのやついつのまに覚えたんだ?

 出てきたのはトレントジャックとトレントが20匹だった。王都のメンバーが詠唱を始めたが、リコは木はよく燃えると呟いて、


「ファイヤーストーム」


 火と風の合体魔法をトレントに向けて放った。炎の竜巻がトレントに向かっていく。それにリリィが、


「ウィンドカッター乱れ打ち」


 風の刃を連続で炎の竜巻に放り込んでいく。リリィのウィンドカッターは炎の竜巻で加速され、火を帯びたカッターとなってトレント達に突き刺さり燃え始める。そこに炎の竜巻が襲いトレントが燃え盛る。トレントジャックは風の魔法を繰り出し竜巻が寄ってこないように必死になっている。そこにいつのまにかトレントジャックの背後にいたカツヨリが火の魔力を纏った剣で一刀両断にした。トレントジャックは切り口から燃え出した。


「まあこんなもんだろ。前は刃が食い込んで切れなかったけど一撃か。俺もだいぶ強くなったかな?」


「お兄ちゃん、ナイス!」


「カツヨリ、さすがね」


 3人がハイタッチをしている後ろで全員が固まっている。なんだこいつら。Aランクパーティーですら開いた口が塞がらなくなっている。レイラは、


「これが勇者の力?いえ、カツヨリだけじゃない。他の2人も強い」


 レイラは他の2人にも興味を持った。


「あなた達も強いわね。今の冒険者ランクを教えてくれない?」


「2人ともHランクですよレイラさん。まだ冒険者になったばかりなので」


 リリィが答えるとレイラは考え込んでしまう。さっきの戦闘を見る限りBランク、いやもっと上かもしれない。冒険者になったばかりでトレントの群れを見てあんなに冷静に対応できるのは異常だ。


「3人パーティーなのよね?どこで知り合ったの?」


「カツヨリとリコは兄妹なんですよ。驚きですよ、血は繋がってないそうです。私はラキーヌ村の出身で偶然カツヨリと出会って一緒に行動しています。村を出たいと思っていた時にカツヨリが現れたのです。これは運命の出会いですよね?ね、そう思いません?」


「リリィ、お兄ちゃんは私のだからね」


「お子ちゃまはもう少し育ってからにしなさい」


「乳だけが女の魅力ではない」


「ほう、」


「何よ、」


 うるさい、行くぞ。カツヨリはまた3人で先頭を歩きはじめた。

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