第48話 ダンジョンコア

カツヨリの告白にリコが驚いている。


「お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないの?どういう事?」


 動揺してわけのわからん事を言っているが意味はわかる。


「俺はカツヨリだよ、リコ。だけどお前の知っているカツヨリの記憶はどこにもないんだ。この世界の事もな」


「我の勘も満更ではないな。で、カツヨリ。さっきお前が言ったダンジョンコアだが、我は魔族に従うつもりはないが封印を解いてもらった借りがある。まあ頼んだ訳ではなのだが借りは借りだ。それで相談だが、我が寝ている隙にお前が奪った事にしないか?」


「それでいいのですか?」


「いいも悪いも我は寝ていたからわからんのだ。コアは我の後ろにある。持っていくといい」


 カツヨリが動こうとするとタラさんがもう少し話をしていけというので結構な時間話し込んでしまった。初めて聞く情報が多すぎて混乱するくらい色々と聞かせてもらった。


「そろそろ行こうと思います。また、ここに来てもいいですか?行き詰まった時に教えを請いに」


「いいだろう。それならばこれを持っていけ」


 タラさんは蜘蛛が造形された指輪をくれた。


「それを持っていれば蜘蛛の魔物に襲われる事はない。また、魔力を込めればこの場所に転移できる魔道具だ。お主らの言葉でいうMPとやらを500使うがな。便利であろう。あと、毒と麻痺無効も付与されるぞ。そういえばカツヨリには我の魔眼が効かなかったな。いや、正確には効いたが一瞬で麻痺が解けたようだったが」


「状態異常耐性のスキルがあるのでそのおかげだと思います。一瞬麻痺しましたがすぐ動けるようになりました」


「我の魔眼はそんなに甘くはない。勇者パーティーですらカツヨリ以外は動けなくなった。何か別のスキルの効果ではないのか?」


 もしかして女神の加護かな?なんの効果があるのかわからなかったけど、多分それだね。またどっかの神官様と致さないと聞けないけど。勇者カツヨリが転生者となるとこれも女神に聞かないとだな。俺を転生させたのは女神エリアル。じゃあ勇者カツヨリを転生させたのは誰なんだ?


「勇者カツヨリは強かったですか?」


「人間にしては飛び抜けていた。剣と魔法を相当極めたのであろう、我の足を切り落としたぞ。お前には切れなかったがな。我は足くらいなら自動回復で元に戻る。なのでお前にも足一本くれてやろうとしたのだが、残念だったな」


 がーん!簡単に切り込めたのはそういう事だったのか。そりゃそうだよね、神話級の魔物に簡単に攻撃できる訳ないわさ。


「娘よ。お前の魔法はなかなかだったぞ。精進すればそこのアーク位は倒せるようになるであろう。ところでカツヨリよ、お前の目的は何だ?」


「それを探して旅しています。一言で言えば世界の崩壊を防ぐ事ですが」


「それは………、魔族か。やはりダンジョンコアはここに無い方がいい。このコアは魔族が設置したものだ。だいぶ大きく成長しているが、それは人間や外の魔物が出入りしているからだ。普通のダンジョンには外の魔物は入れないのだが、魔族は何かを操作してコアに魔源を集めている。おそらくお前のいう世界の崩壊とは生きる者のバランスが崩れていき、エネルギーサイクルが回らなくなる事を言うのではないか?」


「おそらくそうです。それを防ぐには、魔族を倒せばいいという事なのかと思います」


「魔族は強いぞ。お前は強いが、お前程度の強さでは魔族には勝てん。せいぜい鍛えるが良い」


 カツヨリはまた来ますと言って、ダンジョンコアを台座から外した。大きさはバスケットボール位ある巨大な魔石だ。外した瞬間上の方で地響きが起きた。


「何の音だ?ダンジョンの形が変わっていくような感じだが」


「お兄ちゃんがコアを抜いたので何か制御できなくなったんじゃない?」


「うーん、帰り道は、ねえ、カツヨリ。帰れるの私達?」


 そりゃ行って見なきゃわからんがな。転送の魔法陣とかないし、素直に戻るしかなさそうだ。


「タラさん。それでは俺たちは行きます。いつか、また来ると思います」


「行くがよい。我もダンジョン内の道はわからん。気をつけてな。お前達以外の人間が来たら喰うぞ。戻ったらそう伝えるがよい」


 わかりましたと答え、ダンジョンコアをアイテムボックスにしまった。そして来た道を戻り始めた。






 ギルド隊はかなり消耗していた。最初150名ほどいたはずなのだが、70名まで減っている。怪我人は回復魔法士だけではMPが間に合わずポーションをつかって回復させてはいるが疲労感までは回復できない。


 ガーゴイルを倒した後、十分休憩しMPを回復させてから進んだが、続けて現れるBクラスの魔物に翻弄されていた。


「恐ろしいダンジョンだ。こうまでBランクの魔物が出ようとは。早くコアを取らないと国が滅ぶ危険すらある。おい、5名ほど戻って国へ伝言だ。国の総出を持ってこのダンジョン攻略にあたるべしと伝えよ」


 ゲーマルクは部下に指示し、シェリーとバーザム、メリーを呼んだ。


「これ以上兵が減っては進む事ができなくなる。進む速度を遅らせ、回復が間に合うようにしたいのだがギルドの意見を聞きたい」


 シェリーは答えた。


「賛成です。魔物を倒したら回復するまで待ってから進みましょう。魔物がBランクとはいえ数の暴力があるうちは負けませんから」


 7階層を抜けて8階層を進んでいる時にそいつは現れた。

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