第46話 カツヨリ達その6

 扉を開けようと力を入れて押すと、ギギーという音とともに扉が開いた。


「これ、中に入ると閉まったりするのかな」


 カツヨリは閉じ込められないようにトレントの幹が扉に挟まるように置いて中の様子を探った。蜘蛛の巣が張り巡らされていてその奥に巨大な蜘蛛が見える。周辺には半分くらいの大きさの蜘蛛が4匹いてこっちを見ている。うーむ、これは大変そうだぞ。


「リコさん。ヤバくないすかこれ?」


「お兄ちゃん。蜘蛛の糸は燃えるのです。つまり私の敵ではないのです」


 リコが自信有り気に言うとリリィがつぶやく。


「糸がなくても強そうだけど」


 蜘蛛だから毒とか麻痺とか使いそうだしな。ちょっと部屋に入る前に軍議、じゃない作戦会議を開くことにした。


「多分だけど、あいつらは結構素早い。糸を飛ばしても来るだろうし、糸に絡まれたら拘束される。ウィンドカッターで糸が切れない時の事も考えておかないと」


「私はとにかく燃やす。ひたすら火魔法打ちまくる」


「私は風魔法しかないから。火を煽るくらいね。カツヨリ、どれから狙うの?」


「護衛を倒した時にまた眷属を呼ばれるとかありそうだ」


「それって無限ループじゃない。いくらリコが規格外でも無理でしょ。眷属呼ぶのもMP使うんじゃない?でもMPたくさん持ってそうね、あの蜘蛛さん」


「水筒は私が持つね。とにかく打ちまくるから」


「リリィの虫に強い短剣がどのくらい効くかが勝負になりそうだ」


「カツヨリがスパッとボスを倒せばいいんじゃないの?」


「糸がなくなれば近づけるが。スパッとは無理だろ、あれ強そうだし」


 とりあえずドロップアイテムで手に入れた指輪は全てリリィとリコに付けさせた。なんかしか効果があるはずだし。カツヨリは状態異常防止のスキルがあるから毒とか麻痺とかはある程度は大丈夫だろう。一応命一回分の魔道具、女神の祈りも付けてるし一回誰か死んだら逃げますか。


 作戦会議が終わり、再び扉を開けて中に入った。さて、扉は自動でしま、、、、らないんかい。と思ったら蜘蛛から糸が飛んでくる。慌てて避けたが扉は糸で見えなくなってしまった。結局逃げられないのね。


「ファイヤートルネード」


 リコの左右の腕がから炎の竜巻が現れ蜘蛛の糸を燃やし始めた。ギドラが使った上級魔法よりは小さいが、火と風の合体魔法だ。リコの言う通り蜘蛛の糸は燃えやすいみたいでどんどん広がっていく。護衛の蜘蛛、アークタランチュラは口から毒液をはいて火を消そうとしている。毒液は蒸発して黒い煙となりリコの方へ徐々に流れてきた。


「不味い、あの煙を吸うな。風で追い払え」


「ウィンドウォール」


 リコの正面に風の壁ができた。煙は拡散され見えなくなった。そうしているうちに火は消されてしまっていた。


「やるわね、再びファイヤートルネード。そしてあんた達にはファイヤーボール」


 再び糸を燃やし、アークタランチュラにはファイヤーボールをぶつけたがあまり効いていないようだ。アークタランチュラはBクラスの魔物でいくらリコとはいえ初級魔法ではたいしたダメージは与えられない。それを見たリリィは手裏剣に風の魔力を付与してアークへ投げた。Cクラスなら貫くこの攻撃もアークの腕で軽く弾かれてしまう。リリィは叫ぶ。


「えっ!こいつら思ってたより強いよ」


「想定内だろ。作戦通り護衛の4匹を倒さないようにお前達で相手してくれ。と言っても全力でいかないと倒せそうもないけどな。リコ、援護を頼む」


 アークがリリィとリコの攻撃に気をとられている間に火はどんどん糸を燃やしていった。リコはファイヤーボールを連発し、アークタランチュラを攻撃しつつ、正面のでかい蜘蛛の周りの糸も燃やしていく。カツヨリの前が拓けてボス蜘蛛が見えた。スキル加速を使おうとした瞬間、ボス蜘蛛から毒液が飛んでくる。


「あっぶねー」


 カツヨリはとっさに避けたがその隙にまた糸が吐かれ、道が徐々に塞がっていく。リコは再び糸を燃やすが道ができると毒を吐かれ、又糸が吐かれ道がなくなる。これを3回繰り返した。


「切りがないな。リコ、あれでいくぞ!」


「わかった。リリィ、よろしくね。ファイヤートルネード、突風強、ファイヤーボール」


 リコがボス蜘蛛に向かってファイヤーストームを出す。距離が遠く届かないはずだが、魔力を込めた突風強で竜巻を加速させ、さらに火の勢いを上げるべくファイヤーボールを加えた。

 リリィは短剣と手裏剣をアークに投げて牽制していたが、


「突風強、続けてウィンドカッター乱れ打ち」


 リリィの風魔法がリコの竜巻をさらに煽る。ウィンドカッターも竜巻で加速され途中にいたアークを襲った。アークは炎を纏い、さらに加速された風の刃にはダメージを負わされた。ただ致命傷ではなくHPを削られた程度だ。


 その間にリコはさらにファイヤーボールを出し糸を燃やしていく。道が拓けた瞬間、カツヨリはスキル加速を使い猛ダッシュでボス蜘蛛こと、カイザータランチュラに斬りかかった。カイザータランチュラにはリリィの炎を纏った加速されたウィンドカッターが襲いかかり、ファイヤストームも直撃していた。そこをカツヨリの魔力を纏った全力のシュラウスの剣が襲う。


『ガキッ』


 カツヨリの剣がカイザータランチュラの脚を斬ろうとしたが跳ね返された。物凄く固い。カイザータランチュラの目が光った。カツヨリは一瞬身体が痺れ動けなくなったがすぐに回復して動いた。元いたところにカイザータランチュラの足による攻撃が襲い空振りとなる。


「麻痺光線?」


「あれを避けるのか人間よ。なかなかやるではないか」


『!!!!』


「蜘蛛が喋った、マジか?」


 カツヨリは驚いてカイザータランチュラから距離をとった。


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