第42話 ギルド隊その3
翌朝、4階層の入口を見つけた一行は一気に6階層まで進んだ。4階層では虎のBランクの魔物、タイガーマンに苦しめられた。5階層ではスケルトンをはじめとするアンテッドが現れたが、バーザムの光魔法で瞬殺した。アンテッドは光魔法に弱いのだ。4階層で軍の兵がさらに5名死亡した。虎の奇襲によるものだ。
「普通のダンジョンは10階層毎にボスがいる。このダンジョンは何だ?この階層でこの人数で手こずっていてはボスには勝てない」
ゲーマルクが続ける。
「ボス部屋に入れるのも20名。10階までに選抜したい。ギルドも考えておいてくれ」
10階層か。それまでにカツヨリかAランクパーティーが追いついて来てくれればいいのだが。このままではボスに勝てる気がしないシェリーだった。
6階層では鳥の攻撃を受けていた。カラスの魔物が集団で襲ってくる。風魔法と弓士の活躍で凌いでいるところに大鷲の魔物が現れた。
「グレートイーグル、Cランクの魔物です」
シェリーが叫ぶ。グレートイーグルは3羽が編隊を組んで襲ってきた。1羽はメリーが後ろ回し蹴りで蹴り飛ばしたところをシェリーがパンチで倒したが、残りの2羽に軍の兵士が2人攫われた。カラスを撃退した後、自陣を見るとDランクの冒険者が2名犠牲になっていた。
「なぜ範囲魔法を使わん。また犠牲者が出たぞ」
ゲーマルクが喚き散らすがメリーは反論している。
「範囲魔法には詠唱が必要です。あの攻撃を受けながらでは無理です」
「それはわかるが王都ギルドの精鋭部隊であろう。何とかなりそうなものだがな」
メリーはムカついてさらに反論しようとしたところをシェリーに止められた。ゲーマルクも焦っているのだ。こういう時に仲間割れすると全滅の危険が出てきてしまう。
「ゲーマルクさん。お怒りはわかりますが今こそ冷静なご指示をお願い致します」
シェリーはまっすぐな目でゲーマルクを見つめる。ゲーマルクは何かを思い出したように、
「いや、すまん。お主の言う通りだ。俺が冷静さを欠いてはいけないな。ところでお主、ローラという女性を知らないか?お主と同じウサギ獣人なのだが」
「………、知りません。私は私以外にウサギ獣人を知らないのです」
「そうか。良く似ていると思ったのだが」
ゲーマルクはシェリーの言う事を信じた。ウサギ獣人は残り少ない種族と言われている。獣人の国では500年前の戦いの後、戦闘力の高いウサギ獣人を虐待した歴史がある。権力者が力を恐れたということだ。獣人の国に住めなくなったウサギ獣人は各国を転々としたという。このシェリーという女性も苦労したのであろうと。自分以外にウサギ獣人を知らないという事は親の顔すらわからないという事なんだなと理解した。
実際は、シェリーはローラという名のウサギ獣人をを知っていた。だがその名前はシェリーにとっては忘れたい名前だった。
6階層を進んでいくとトンビの編隊が襲ってきた。今度は風の範囲魔法で蹴散らし数を減らした後、個々にトンビを倒していく。と、そこに見慣れない魔物が空中に3匹現れた。そう、ガーゴイルだ。ガーゴイルは魔族の配下の魔物でゲーマルクもシェリーもその存在を知らなかった。
「見た事ない魔物です。コウモリでしょうか?」
「わからんが、だが強そうだ。弓隊、撃ち落とせ!」
ゲーマルクの指示で弓隊が一斉に矢を打つ。魔法部隊は詠唱を始めた。ガーゴイルは飛んできた矢を持っている剣で払い、そのままの位置から動かない。魔法の詠唱を見ては魔法の射程距離に入ってこないのだ。
「知恵が回る魔物だ。Bランクなのか?しかし見たことのない魔物だ」
ゲーマルクは打つ手がなくなってしまった。魔法は届かない、弓矢は効かないのだ。困り果ててシェリーに向かって、
「冒険者諸君、何か手はないか?」
と話しかけた時に、兵の1人が、
「申し上げます。あれはガーゴイルです。王都の図書館で見た事があります」
「どんな魔物だ」
「魔族の配下でBランクです。近くに魔族がいる可能性があります」
「バカな!魔族だと。この数百年、魔族が現れた事はないはずだ。それにBランクが同時に3匹だというのか?」
「魔族はもっと強いのかもしれません。あれを従えているくらいですから」
ゲーマルクは少し考えてから、
「報告はわかった。あいつの弱点は何だ?」
「申し訳ありません。そこまでは……」
ゲーマルクは兵に列に戻るように指示し、シェリー、バーザム、マリー、ズサを集めた。元を含むBランク冒険者だ。
「あの魔物はガーゴイル、Bランクだそうだ。そんなのが3匹もいる上に、あれは魔族の配下らしい」
全員絶句した。Bランクの魔物は自分のパーティー単独では勝てないかもしれない程の強さだ。それが3匹!その上に魔族ときた。
「確かにガーゴイルは強いだろう。それに知恵もまわるようだ。だがこいつらを倒さないと先には進めない。皆が連携せねば」
ゲーマルクは連携を訴えた。それに対しズサが、
「俺の隊は空中の敵には弱い。地上近くまでくれば土槍が使えるが」
といえば、シェリーが、
「メリー、あれを使うよ。できるかい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます