第41話 ギルド隊その2

 一行は3階層を進んだ。テールモンキー、ラージモンキーが時々群で現れるが交替で魔法を撃ち殲滅していく。Cランク冒険者ともなるとMP自動回復小を持つものもいて交替で回復をしていく。そして前にコングと戦ったところへ着いた。


「ここでコングを倒しました。この奥にアジトのようなところがありそこに女冒険者が囲われていました」


 ノイルがゲーマルクに説明した。そうか、ではこの先に下への階段があるのかもな。コングはこの階層のボスのような存在だったのだろう。


「よし、進むぞ。ここからは軍が前衛だ」


 もう道案内は必要ない。ここから先は未踏の地なのだから。

 軍のメンバーが前衛に立ち魔物を倒しながら進んでいくと、シェリーが叫んだ。


「気を付けて、来るわ!」


 軍の前衛を木の葉がカッターのように襲う。そして周りの木が動き出した。


「トレントだ。火魔法士は前へ」


 ゲーマルクの指示でファイヤーボールがトレントに飛ぶ。トレントは燃え始めるが、後から後からどんどん新しいトレントが出てくる。軍の攻撃が続き辺りの森まで燃え始める。シェリーは、


「おかしい、私が感じた気配はもっと強い魔物。トレント達は統率されているように見える。メリー、風魔法士を集めて、急いで」


 トレントは燃えながらも軍の前衛に向かってきて倒れた。その後をまた燃えているトレントが進んでくる。その時だった。急にトレントの後方から強風が吹き荒れる。トレントと森の木は勢いを増して燃え熱風となって軍に襲いかかる。


「ギャー、アチい!」


「逃げろ、燃えちまう」


「水、水魔法を!」


 軍の前衛がパニックになり下がろうとするが後ろに兵が使えており下がれない。ゲーマルクの指示が飛ぶ。


「回復魔法士はエリア回復魔法を、水魔法士は水を巻け」


 回復魔法士は詠唱に入った。エリア回復魔法は中級魔法だ。その上の上級魔法もあるがここにはその遣い手はいない。火はどんどん燃え広がり、奥からトレントジャックが現れた。トレントジャックは風魔法を使いさらに火を煽りながら葉っぱを使ったカッター攻撃を加えてきた。葉っぱは火をくぐると燃えて無くなるかと思えば、火を纏った葉っぱのカッターとなり回復魔法士を襲う。


「させん!」


 回復魔法士を守るようにゲーマルクと他の衛兵が立ち塞がり火の葉っぱを短剣で切り落とす。衛兵とはいえCランクの実力者だ。ところが葉っぱの攻撃は終わらない。数の暴力で衛兵は倒れゲーマルクも傷を負うようになっていた。そこにメリーが集めた風魔法士の突風がゲーマルクの後方から吹き、葉っぱを押し返した。回復魔法士の詠唱が終わる。


「エリアヒール」


 水魔法も連発で降り注ぐ。


「ウォーターボール」


 水はトレントの火を消そうとするが煽られる風によって力負けしている。シェリーはそれなら、と


「風魔法士は前衛に。とにかく風で火をトレントジャックに向けて。赤い流星は隙を見てトレントジャックを!あいつは火に弱い」


 風魔法士が協力して火の方向がトレントに向くように風を吹き続ける。軍の火魔法士は死傷者だらけで当てにはならない。ここはギルドメンバーの出番だ。風魔法士の数の暴力で炎はトレントジャックに近づいていく。トレントジャックは風のバリアを張り自らが燃えないようにした。


 そこに赤い流星のメンバーがさらに火魔法をぶつける。


「今度は最初から行く、ファイヤーランス」


 走りながら詠唱してきたボーラの中級魔法が風のバリアを突き抜ける。トレントジャックの一部が燃えた。やったかとお約束のセリフをいうボーラにトレントジャックの枝攻撃が襲いかかる。


「うわー!」


 枝はボーラを直撃し、近くの木に叩きつけた。意識を失うボーラを見て他のメンバーも尻込みしてしまう。そこを枝攻撃が襲うがなんとか短剣で対応するも対応しきれず、同じように近くの木に飛ばされてしまう。


「スクリュークラッシャーキーーーーーック!」


 そこにシェリーの得意技が炸裂しトレントジャックを蹴り飛ばす。その後を青い閃光、震える大地のメンバーが攻撃する。なんとかトレントジャックを倒した。


 バーザムは気を失っているパーティーメンバーにポーションを与えた。ある程度HPがあるので即死ではなかったようだ。軍の方は悲惨だった。火魔法士は15名死亡、回復魔法士を庇った衛兵も3名が死亡した。怪我人はポーションで回復した。


 ゲーマルクは自らを回復後ギルドの主要メンバーを集めた。


「助かった。例を言わせてもらう。あれは、Bランクのトレントジャックだな。油断していたわけではないのだが。だいぶ皆消耗したようだ。今日はこの付近で夜を明かそうと思うのだが」


 シェリーが言う。


「3階層は危険ではないでしょうか?時間はかかりますが2階層まで戻れば強い敵はでないと思います。夜見張りをたてたとしても、夜襲を受ければ………」


「だが、そんな事を言っていてはこの先に進めないのではないか?我々の任務はこのダンジョンを制覇する事だ。何階層まであるかはわからないが、このダンジョンを放っておけばアキールの町ですら危険に晒されてしまう可能性もある。私は軍人として民を守る責務があるのだ」


 結局シェリーはおれてここで夜を明かすことになった。幸い敵の夜襲はなかった。


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