第40話 ギルド隊その1

 総勢150名にも及ぶこの国の精鋭達が森をすすんでいる。たまに遭遇するウルフやブラックウルフを倒しながら2日をかけてダンジョンの入り口に到着した。


「ほう。確かに魔源らしきなにかがダンジョンの外に出ているな。冒険者の諸君、アイテムボックス小を貸与する。その荷台のポーション類を持っていけ」


 ゲーマルクはギルドが用意したポーションや食料を軍のアイテムボックスに入れていた。まだ荷台には少し残っている。ここに残していく意味もないので余っていたアイテムボックスを冒険者に使わせた。


「なんだ、この町の冒険者はアイテムボックスも持っていないのか?」


 王都の冒険者、赤い流星のメンバーでCランクのボーラが聞こえるようにつぶやく。それを聞いたシェリーはムカついて聞こえるように、王都の冒険者は品がないわね、と返す。すると、


「シェリーさん、シェリーさんですよね?お元気そうでなによりです。この町にいらっしゃったのですか」


 青い閃光のリーダー、メリーがシェリーに気づいて話しかけてきた。バレないようにうさ耳隠して小さくなってたのに。


「メリーか。久しぶりだな。王都から来て大変だが頼む。Bランクの魔物がゴロゴロ出てくるぞ。あの軽口ほざいてる奴は仲間か?」


「いえ、他のパーティーのメンバーです。実力はあるのですが。王都の冒険者が口が悪いのが多いのは昔と変わりませんよ」


 会話を聞いていた赤い流星のリーダー、バーザムが


「メリー、この人は?」


「私の師匠のシェリーさん。突然居なくなってしまったのにこんなところで会えるなんて。10年ぶりくらい?」


 ほう、バーザムは驚いた。バーザムはメリーと同じBランク冒険者だ。王都では唯一光魔法を使う。格闘を得意とするメリーには一目置いている。


「メリーの師匠とは。てことは格闘系か。それは楽しみだ」


「こっちはBランク冒険者のバーザム、さっきの軽口叩いた男のリーダーです」


「そういう紹介はないだろう。まあ事実だが。俺のパーティーには火魔法を使う者が多いのと俺が光魔法のコメットを使うので赤い流星というパーティー名なんだ。よろしく頼む」


 バーザムは一方的に話して離れていった。


「あいつ、あんたに惚れてるね?」


「やめて下さいよ。私が自分より強い男にしか興味がないのはご存知でしょう」


「ふーん、そうだったかな。だったらカツヨリなんかどうだ?私よりは確実に強いぞ」


「噂の勇者と同じ名前の男ですね。リリィさんより強いって本当ですか?」


「ああ。それは間違いない。どこまで強いのか底が見えないよ。まだ冒険者になって一月もたっていないのにBランクの魔物を倒すのだから」


 ウッソでしょ?とメリーは思った。メリーがBランクの魔物を倒したのは1回きり、それも冒険者になって8年後だ。最初の一ヶ月なんてひどいものだった。話し込んでいるうちに準備がおわったようだ。ゲーマルクの合図とともにダンジョンへ突入した。先頭は赤い流星と道案内役のノイルのパーティー、その後ろに軍が50名。ゲーマルクもここにいる。その後ろにシェリー達アキールギルド隊、青い閃光ら王都ギルド隊、そして残りの軍が続く。


 ダンジョンの1階、2階層を難なく突破し3階層に入った。ここは森エリアだ。前回カツヨリ達がコングを倒したエリアである。先頭を行くバーザムは、ノイルに


「前回はこの階層までだったな。階段は見つけてないのか?」


「まだ見つけていません。前回はコングを倒してそのまま離脱したので」


「コングか。俺のパーティーだけでは勝てないだろうな。それに勝ったのだから大したものだ」


「カツヨリのおかげです。あいつがいなかったらとても無理でした」


 カツヨリか。勇者と同じ名前の男としか聞いてないがそんなに強いのか?会ってみたいものだな。


 森を進むとグレートモンキーが3匹現れた。赤い流星のボーラ他メンバーが魔法で仕掛ける。


「ファイヤーボール」


 4つの火の球がグレートモンキーに飛んでいくが、1匹のグレートモンキーが胸板で跳ね返した。


「なんだと。俺の魔法が」


 グレートモンキーはそのまま突っ込んでこようとした。ボーラは慌てて


「ファイヤーウォール」


 火の壁を出して突進を防いだ。流石のグレートモンキーも火の壁には突っ込んでこない。ノイルは、


「ファイヤーボールが効くのはラージモンキーまでだ。もっと強い魔法でないとダメージは与えられないぞ」


 と叫び、メンバーに援護のサンダードロップを放させた。ボーラ達はその間に中級魔法の詠唱に入る。


「ファイヤーランス」


 炎の槍がグレートモンキーを攻撃する。今度はダメージを与えたようだが攻撃されたグレートモンキーは怒り狂って炎の壁に突っ込んできた。壁を超えたところにはボーラ達が次の詠唱に入っていて無防備状態だ。それに見たバーザムは、光魔法を発動した。


「ライトニングセイバー」


 ビームサーベルのような剣を腰のベルトから出しグレートモンキーの首を刎ねた。光の中級魔法で詠唱は必要ないが使用中にどんどんMPを消費するバーザムのとっておきの技だ。この技はイメージが大事で剣を具現化するのには相当の訓練を要する。どこから剣を出すかがポイントなのだ。鍛錬の結果ベルトのバックルから剣を出すようにしたらうまくできるようになった。魔法でダメージを負っていたグレートモンキーは動きが鈍くバーザムに全て討ち取られた。


「ふう、リーダー、助かった」


「ボーラ、お前は才能はあるが経験が足らない。今も俺がいなければ死んでいたぞ」


「すいません。最初のファイヤーボールが効かなくて焦ってしまって。でも動物型の魔物は火魔法に弱いはずなんですが」


「確かにそうだ。だがランクが上の魔物には下級魔法では効かないぞ。だが、すぐにファイヤーウォールを出したのはいい判断だった」


 シェリーは後ろから戦闘を見ていた。Bランク冒険者だけの事はあるな。光魔法は初めて見たが剣になるのか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る