第39話 カツヨリ達その3

 産まれた子カマキリは大きさ20cmくらいで数は100匹だ。軍隊のように整列した後、バッタキラーに向かっていく。


 バッタキラーは親カマキリの鎌を避けながら攻撃を続けていたが、子カマキリが足に多数絡みつき、子カマキリを倒している間に親カマキリの鎌を食らって倒れてしまった。子カマキリはバッタキラーを食べ始める。


「あ、やばい。子カマキリがエサ食って大きくなったぞ。リコ、燃やしちゃって」


 距離が30mある。ちょうど特訓していた距離だ。リコは叫ぶ!


「ロングレンジファイヤーボール!」


 リコは倒れているバッタキラーめがけて3発のロングレンジファイヤーボールを放った。この隙に逃げるかと後ろを見たら、さっき燃やしたはずの草が結構な高さまで生えている。ダンジョンの復帰力すごい。こりゃあかんね、カマキリ倒すしかないか。


 リコのファイヤーボールは子カマキリ30匹を倒したが残りは避けて親カマキリのところへ戻った。親カマキリはカツヨリ達を見ている。親カマキリは鎌を上段に構えた。鎌に黄色いオーラが集まっていく。


「やばい、風を出せ!」


 リリィとリコは突風を出した。それと同時に親カマキリの鎌が思いっきり振られ稲妻の斬撃が飛んできた。斬撃は突風で勢いを殺されカツヨリの剣で払われた。


「あっぶねえ、直撃だと痺れたかも」


 親カマキリはニヤッと笑って子カマキリを前進させ、自らも進み始めた。カツヨリ達は知らなかった。さっきのヨバンバッターはBランクの魔物だった。そのヨバンバッターを一撃で倒したこのカマキリ、メガカマキランはAランクの魔物だ。Aランクの魔物を倒すにはBランクパーティーが3組以上はいないと倒せないと言われている。そして今ここにはカツヨリ達3人しかいないのだ。


 でもカツヨリはそんな事は知らない。ただこのカマキリが強いのは身体で理解していた。リコにMPポーションを飲むように指示してから剣をクロスに構えた。まずはお返しだ。


「クロスブレード」


 カツヨリの魔力を纏った二刀流から繰り出される飛ぶ斬撃がメガカマキランに襲いかかる。メガカマキランは鎌をクロスにして受けた。メガカマキランにクロスブレードは直撃した。30cmほど身体が後方に下がったが完全に受け止められてしまった。メガカマキランは何事もなかったように歩き出した。カツヨリ達との距離が10mになった時、お互いが仕掛けた。


 リコはファイヤーボールを、リリィはウィンドカッターを子カマキリにぶつける。ところが子カマキリも動いた。子カマキリは横に広がり鶴翼の陣を取ったのだ。リコ達の魔法は一部の子カマキリを倒したが、横に広がった子カマキリ達がリコ達に襲いかかった。



 親カマキリは飛んだ。そう、カマキリは飛べるのだ。空中からカツヨリに向かって鎌を振るう。カツヨリは剣に魔力を纏わせて受けた。


『ガキッ!』


 ものすごい音がしてお互いに弾けた。メガカマキランは空中で体制を崩して弱点の腹を見せている。カツヨリはその隙を逃さず小刀を投げた。ところが、皮膚に弾かれてしまう。


「さっきのバッタの攻撃は通ってたのに。小刀じゃあダメか」


 バッタキラーはCランクの魔物だ。メガカマキランがAランクとはいえ弱点をつけば傷をつけるくらいはできる。まあ倒すのは無理だが。カツヨリの投げた小刀の攻撃力はそれ以下という事だ。メガカマキランは体勢を立て直し着地した。空中からの攻撃はカツヨリには効果がないと考えたようだ。歩いて間合いを詰めながら鎌を振りかぶり、鎌に黄色の魔力を溜めている。カツヨリは、


「これはやばいかも。魔炎陽炎」


 メガカマキランはカツヨリの身体が揺れたように見えた。その瞬間、メガカマキランの腹をカツヨリの剣が切り裂いた。


 これはただの陽炎ではない。シュラウスの剣に火の魔力を纏わせて攻撃力を上げている。それにスキル加速、カツヨリの高ステータスによる剣速を組み合わせた今のカツヨリの最大攻撃だ。


 虫の腹は無防備だ。一番防御力が弱いところにバッタキラーがつけた傷、そこを目掛けてカツヨリの最大攻撃をくらいメガカマキランの腹が裂けた。そしてそこから燃え始める。


『ギギ、ギーー、ギ』


 メガカマキランが苦しそうに喚くと子カマキリがその腹に飛び込んでいく。


「なんだー、え、火を消してる?リリィ!」


 カツヨリがリリィに声をかける。子カマキリが自らを犠牲にしてメガカマキランの火を消していた。すかさずリリィが手裏剣で子カマキリを弾き飛ばす。続けてウィンドカッターを仕掛けるが鎌で弾かれる。その隙にリコがメガカマキランの側面に移動した。3人の立ち位置はメガカマキランの正面にリリィ、側面にリコ、背面にカツヨリだ。


「チャンスね、ダブルファイヤーボール。続けてファイヤートルネード!」


「背中なら受けれないだろ、クロスブレード、続けてもう一丁」


「こっちを見なさい。手裏剣連射」


 リリィの正面からの手裏剣を鎌で弾いている間に火で身体が焼かれ、背中に斬撃をくらいメガカマキランはフラフラだ。そこを魔力を纏ったカツヨリの剣が襲う。メガカマキランの首が落ちた。


 3人はその場に座り込んだ。


「いやー、きつかった」


「子カマキリに囲まれた時にはダメかと思ったけどリコのお陰で助かったよ」


「初めて実戦で使ったけど上手くいってよかった。でも疲れ〜た〜」


 リコは子カマキリの動きを見てリコとリリィの周りに風のバリアを作っていた。子カマキリはその風壁に手こずっていて攻撃ができなかったのだ。


「しかしこのダンジョン敵が強すぎないか?10階層のボスにみんな勝てないっていってたけど、こいつらには勝ててるって事?」


「10階層のボスとは戦わずに戻ろうよ。村にも行きたいし」


「こんな強いのばっかりだと死んじゃうよ。ポーション尽きる前に戻らないと。お兄ちゃん、出口探そう」


 アイテムボックスにはまだ食料も水もあるけどいつかは尽きる。ダンジョンは1つのパーティーでは厳しいってのはこういう事か。



 戦いの後、ドロップアイテムを回収した。ポーションx3 MPポーションx2 バッタソード、メガカマキランの鎌、バッタリングだった。レアアイテムだが鑑定のないカツヨリにはなんだかわからない。3人ともレベルが戦いのたびに上がっているが鑑定のないカツヨリにはステータスが見えない。


 3人は十分な補給をした後、先に進んだ。出口を探して。

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