第38話 カツヨリ達その2

 次の階層は草原だった。何故か手入れがされている芝生と伸び放題の草むらが見える。あの草むらを進まないといけなさそうだ。


「なんか虫とかいそうだな」


「うううう、蛇の次は虫とか何の罰ゲームなの?」


「リコはまだまだだね。私くらいになると虫なんかただの経験値にしか見えないわよ」


 何じゃそりゃ。リリィさんたくましい。でもリコの為じゃないけどあの草むらの中って戦いにくそうだから、


「リコ、燃やしちゃえば?」


「あ、お兄ちゃん、アッタマいい!ファイヤートルネード!」


 おおい、いきなりでっかいの打つやついるか!炎の竜巻が半径5mのミステリーサークルを作った。そして少しした後、丸焦げになった10cmくらいの甲虫が空から多数落ちてきた。


「虫の魔物かな、小さいから攻撃しにくいし草むらの中で絡まれたら厄介だな。りこさん、やっておしまい!」


 リコはファイヤートルネードがあまり効果がなかったので攻撃方法を切り替えた。


「ただ燃やしただけの方がいいみたい。ファイヤーボール、ファイヤーボール。そんでもってちょっとだけ突風」


 草に火を付けて風で煽る作戦だ。火は徐々に燃え広がり草むら全体に広がった。煙がこっちに来ないようにたまに突風で風向きを変えながら。火から逃げようと虫が空へと逃げるが飛行距離が足りないのか火の中に落ちる。たまにこっちに向かってくる敵はカツヨリ達に斬られ続ける。1時間後、草むらは燃え尽きて道が拓けた。


「よし、進もう」


 まさしく焼け野原を歩いて進むと所々にドロップアイテムがあったので回収していく。MPポーションを3つ手に入れた。水筒にはまだ2回分の回復水があるけど、いつどこで水の補給できるかわからないから有難い。飲み水を水筒に入れる手もあるけどそれは奥の手でとっておくことにしている。



 焼け野原を歩いていくと待ち構えている魔物が見えた。バッタかな?大中小のバッタ多数に囲まれた後ろに身長2mある二本足で立ってるバッタ。手?が4本あって剣を持っている。4刀流だと!


 立ち止まって足元を見ると草が生えて来ている。ダンジョンて元に戻る力があるみたい。ここだと不利になりそうなので元草むらを抜けて魔物達と向き合った。


「ギギ」


 二本足のバッタの掛け声?でバッタが一斉に宙に飛び襲いかかろうとした。それを見たリコとリリィは


「ダブルハリケーンカッター」


 リコの螺旋状に回転させた2重の突風にリリィがウィンドカッターを混ぜた合体技だ。ウィンドカッターが竜巻で加速されてバッタを襲う。竜巻に触れたバッタは切り刻まれた。ダブルハリケーンカッターを連発で繰り出しその他大勢を一気に殲滅した。2人とも範囲魔法を覚えていないが、十分な威力の範囲攻撃だった。中小のバッタはほとんど倒したが大は軽いダメージを負ったくらいで魔法が消えたのを見て2人に襲いかかってきた。


 リリィは手裏剣を投げるが大きいバッタ、バッタキラーの腕に弾かれる。


「強い、ならば」


 リリィはカツヨリの真似をして短剣を二刀流で構える。右手に持ったのはこのダンジョンで手に入れた新しい短剣だ。バッタキラーの腕と短剣がぶつかるとスパッと腕が切れた。


「え?簡単に切れた。何で?」


 左手の短剣で続けて切るが皮膚が傷ついたくらいの威力しかなかった。続けて右手の短剣で切るとまたスパッと切れる。そう、この短剣はインセントキラーだった。対虫特攻の武器だったのだ。バッタキラーの腕は残り2本になった。続けて他のバッタキラーもリリィに攻撃を仕掛けようと向かってきた。そこを


「ダブルファイヤーボール」


 両手から同時発動した火魔法がバッタキラーに当たる。結構なダメージを与えたようだ。トカゲには効かなかった魔法も虫には効くようだ。




 リリィとリコがその他大勢を相手している中、カツヨリは4刀流のバッタ、ヨバンバッターと護衛のバッタキラー3匹と戦っていた。ヨバンバッターは4本の手に持った剣でカツヨリを斬りつける。結構いい剣のようでシュラウスの剣と渡り合っている。カツヨリは二刀流、相手は4刀流だ。カツヨリの方が剣の速度、技とも上待っているが相手の手数が倍なのでいい勝負になっている。しかも隙をついてバッタキラーが木魔法を使ってカツヨリの足を止めにかかる。バッタキラーの木魔法は草を足に絡めて転ばそうとする初期魔法だが戦闘中に3匹に仕掛けられると結構うざい。


 カツヨリは草の罠を躱しながら隙を見て小刀を投げたいのだがヨバンバッターの手数が多く上手いこといかない。仕方がない、全力でヨバンバッターを倒す、と気合を入れた時、突然ヨバンバッターの首が飛んだ。


「!!!、え?」


 カツヨリは危険を感じて加速を使って後ろに下がりリリィ、リコと合流した。リリィ達はなんとかバッタキラーを倒したところでカツヨリが下がってきたのを見て前を見た。


「あれは、カマキリ?」


 全長3mはあるカマキリがヨバンバッターを食べていた。ヨバンバッターの首を飛ばしたのはカマキリの鎌だったのだ。カツヨリと戦っていたバッタキラーがカマキリに攻撃を仕掛け始めた。カマキリの鎌の攻撃を避けて潜り込むと足と腹を狙って攻撃をしている。


「頭いいな、あのバッタ。あのまま倒してくんねえかな?」




 カツヨリは無理と知りつつ呟いた。ボスを一瞬で倒すカマキリに手下が勝てるわけないのだ。ところがバッタキラーはかなり善戦した。カマキリの鎌は大振りなので気をつけていれば避けれるのだ。バッタキラーはジリジリとカマキリを傷つけていく。ところが、


「お兄ちゃん、あれ何?」


「子供かな?子カマキリみたいだけど。ゲッ!」


 カマキリの尻尾が膨らむと大量の子カマキリが産まれてきた。


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