第37話 カツヨリ達その1

 こ、ここは?なんか前にもこんな事があったような。カツヨリは岩場の上にいた。リリィとリコもいる。よかった、3人バラバラに転移されると流石にまずい、だがここはどこだ?リリィが、


「ねえ、ここってダンジョンぽくない?」


 確かに周囲は明るいがよく見ると空に違和感がある。まあ、ダンジョンにいたのだからダンジョン内に転移してもおかしくはないな。てか、普通転移先ってダンジョンだろ!さっきのダンジョンの地下何階かってとこでしょ、きっと。


「ダンジョンに居たんだからここもダンジョンと見て間違いないな。さっきと違って明るいのが幸いだが。とりあえずみんな怪我はなさそうだから移動しよう」


 岩場を歩くとトカゲの魔物と蛇の魔物が現れた。カツヨリはシュラウスの剣でサクッと斬り捨てる。念の為に魔石を探すが持っていない、やっぱりダンジョンだねここは。足元に気をつけながら進むと頂上に出たようで広場があった。


「ねえ、なんか落ちてるよ」


 リリィが遠くに防具らしき物を見つけた。脛当てと短剣が落ちている。


「転移してきてやられた冒険者の物かもな。死体はすでに吸収されてしまったって事か」


 カツヨリは拗ね当てをつけてみた。とりあえず防御力少しは上がるだろう。短剣はリリィに渡した。


「あれ、宝箱」


 リコが宝箱を見つけた。位置的に怪しいよね、どう見ても。リコも流石にわかったようで慌てて開けたりはしなかった。


「全員攻撃準備。こいつにやられた可能性が大きいからな」


 カツヨリは剣先で宝箱を突いた。反応がない。うーん、ならばと次に斬りつけたところ宝箱が左に避けた。やっぱりミミックだ。リコがファイヤーボールを宝箱にぶつけるが効いていないようだ。次にリリィのウィンドカッターが襲いかかるが、傷つける事さえ出来ない。


「魔法が効かない?」


 リコが焦る。リコは魔法に自信を持っていた。訓練もしたしスキル 私は魔道士の効果もあって威力も倍増している。その魔法が効かないなんて。


 カツヨリは剣で宝箱に斬りつけた。宝箱はバク転し、オオトカゲの魔物、トカゲーターに変身した。カツヨリ達は知らなかったがトカゲーターはBランクの魔物だ。魔物というより怪人みたいだ。二本足で立ってるし。トカゲーターは雄叫びをあげて仲間を呼んだ。周りから蛇やトカゲの魔物が集まってきた。


「嫌だーー蛇、蛇嫌い」


 リコが叫んでファイヤーボールを左右の手から投げる。蛇は倒したがトカゲは素早く避けてリコに襲いかかった。それをリリィが短剣で倒す。


「リコ、落ち着いて。冷静さを欠いたら負けよ」


「でも蛇はダメなの、トカゲもきらーい」


 リコはファイヤーボールを連発する。リコのMPは結構あるしMP消費削減中もあるからこのくらいでは影響ないけど。て、おい、いつまでファイヤーボール出してるの!


 ザコ的な蛇とトカゲは魔法で倒したがちょっと大きめのトカゲにはリコの魔法があまり効いていないようだ。リリィが手裏剣を投げると大きめのトカゲに刺さり動きが鈍くなった。そこをリリィが短剣で倒していく。リリィの手裏剣にはミューラにもらった毒が塗られている。この毒が体に入るとHPをジワジワ削っていくのに加えて痺れさせる効果もある。


 カツヨリはトカゲーターと向き合っていた。トカゲーターの皮膚は硬くカツヨリの剣でも斬る事が出来ない。


「マジかよ。こいつBランクなのかよ。このダンジョンこんなのが出るのか」


 カツヨリは剣に魔力を込めた。シュラウスの剣が黄色に輝いた。


「雷剣、稲妻斬り!」


 カツヨリの剣がトカゲーターを真っ二つに斬り裂いた。一息ついて後ろを見るとリリィが大きめのトカゲと1対1で戦っていた。どれどれ、特訓の成果を見ますか。


 リリィの短剣はトカゲの皮膚を切り裂くが致命傷にはなっていない。だがトカゲの攻撃を上手に短剣で受けたり避けたりしている。カツヨリとの模擬戦の効果が出ているようだ。あれ?リコは、とリコを見ると頑張れリリィと応援している。おいおい。


 リコは短剣を振るって後ろにジャンプしながらウィンドカッターを大きめのトカゲの腹にぶつけようとした。トカゲは腹を守って両腕をクロスして防いだが腕が上がらなくなった。そこをリリィの短剣が顔を突き刺し大きめのトカゲを倒した。リリィはゼエハア言っている。


「お見事。さすがリリィだ、特訓の成果が出てるな。それに比べて………」


「いや、お兄ちゃん、あのね。蛇とかトカゲは苦手なの。他の魔物ならいいんだけど」


「ダンジョンは甘くないし敵は選べないぞ。この階層はどうやら岩場だから出てくるのはあんなのばかりだぞ」


「うううううう、頑張る」


「リリィはさっきウィンドカッター使ったろ。あそこで手裏剣は使えなかったのか?」


「その余裕が無かったのよ。ウィンドカッターの方が使い慣れてるから」


 トカゲーターはドロップアイテムを残した。そりゃ元が宝箱だもんね、そのくらいないと。ドロップアイテムはトカゲの革だった。こいつ魔法耐性あったみたいだからいい防具になるかも。


 その後もトカゲーターは9回も現れた。出てくる度に仲間を呼び連携攻撃をしてくる。後半はだいぶ慣れてリリィは大きめのトカゲ、ラージトカゲやさらに大きいエルエルトカゲも1人で渡り合えるようになっていた。手裏剣も上手に使っていたし、いい訓練になっている。


 リコも後半は開き直って魔法と短剣でトカゲや蛇を倒していた。ただトカゲ達は魔法耐性があるようで思うようにはいかずMPをかなり消耗し水筒の世話になっていた。リリィも一度水筒の水を飲んでいる。カツヨリだけはただの水で済んでいるが。カツヨリにはHP自動回復小があるのと元々HPが高いのでこのくらいはなんとかなっていた。


 トカゲーターは2回に1回はドロップアイテムを落とした。トカゲの革以外にも指輪や首飾りを手に入れた。効果はわからないもののリリィとリコに付けさせた。そして階段を見つけ、下の階層へと向かった。

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