第36話  王都からの応援  

 ダンジョンの入り口はラキーヌ村から1時間のところにあった。入り口にギルド職員がいてダンジョンに出入りした人を管理していた。ダンジョンには24時間入れるので職員も交代勤務をしているそうだ。


「こんにちは。お疲れ様です。ダンジョンに入りたいのですが」


 カツヨリはにこやかに営業スマイルで話しかけた。


「子供じゃあないか。ギルドカードを見せてくれ」


 職員はネモというらしい。名札をつけているところがいいね。ネモはカツヨリがFランクなのを見て、


「規則でな。Dランクの人がいないとダンジョンには入れないんだ。そっちのお嬢ちゃんのランクは?」


「Hランクです」


「そうか。悪いがダンジョンには入れられない。いくら冒険者が自己責任とはいえギルドも死人は増やしたくないんだ。もう少し強くなってから来な」


 まあそうなるよな。この職員は信用できそうだ。カツヨはウラヌスの紹介状を見せた。こうなるだろうと思って書いてもらったのだ。


「ギルマスの!ふーん、強そうに見えないけど。俺の責任でないならいいと言えばいいんだが、こんな仕事してると自分が強いと思ってる若者が死んでいくのを見る事が多くてな。気をつけろよ、無理はするな。ダンジョンは思っていた通りにはならないから」


「ありがとうございます、ネモさん。ちゃんと戻ってきますから。そうだ、このダンジョンは何階層まであるのですか?」


「10階層にボスがいてまだ誰も倒してない。この間もDランクパーティー4人組が挑戦したが帰ってこなかった。そいつらは9階層でだいぶ強くなってから望んだのだがダメだったようだ。おそらく10階層より下もあると思う。それと10階層まではボスは出ないぞ。まずは3階層くらいまでで身体をならすといい。そこの小屋でポーションも売ってるから補給もできるぞ」


 そう言われたので小屋の中を見てみた。確かにポーションは売っていたが町より2割くらい高い。いちいち町まで戻る事を考えるとこんなものか、観光地料金みたいだ。


 町から急いできたがすでに夕方になっている。リリィを見ると村には行かないの?って顔をしてる。リコは早く行こうよ〜って顔してるし。


「とりあえず試しに入って1時間くらいで今日は出よう。今晩はラキーヌ村のリリィの家に泊まって明日朝からまたダンジョンに入ることにする」


 リリィが村にお土産買ってたの見てたからね。何だかんだいってリリィも報酬と山分けした素材の売却費で結構なお金を持っている。村は貧しいって言ってたから還元するんだろう。



 カツヨリ達はダンジョンに入った。扉を開けると真っ暗だ。リリィが灯りの魔道具を出し周囲を照らした。


「リリィ、それはリコに持たせて。それ持ってるとリリィは戦えないだろ」


 リリィはリコに魔道具を渡した。リコは杖に魔道具を引っ掛けて負担にならないようにしている。こういうところが我が妹ながら素晴らしい。器用なんだろうな。


 しかし、だ。これは怖い。どこから敵に襲われるのかわからん。明るくなっているのは周囲2mくらいか?


 気配探知とか欲しいよね。サンディもシェリーも持ってるみたいだし。そういえばマップとかないのかな?迷子になるぞこりゃ。


 とりあえず右側の壁を確認しながら進んだ。分岐があっても右に進む。こうすれば帰りは左を目印に戻れるよね。カツヨリ達はどんどん進むが不思議と魔物は出てこなかった。何回か分岐あったが迷わず右側に進む。何も起きないなあ、と緊張感が緩んだ時に突然それは起きた。地面に魔法陣が現れ3人を青い光が包む。リリィが叫ぶ!


「これって?」


「お兄ちゃん、青い光だ!」


「いきなり転移かよ!」


 カツヨリ達は青い光に包まれた。転移の先は………………。





 2週間が過ぎた。アキールの町に王都ギルドからの応援冒険者が30名、Bランクのメリー率いる青い閃光、Bランクのバーザム率いる赤い流星、そしてBランクのズサ率いる震える大地の3パーティー他高ランク者だ。個人の力量でいうとBランクが6名、Cランクが20名、Dランクが6名だ。ラモス国にはAランク冒険者が3名いるが招集に間に合わなかった。1名が後からパーティーを連れて合流することになっている。


 国軍も到着していた。軍の司令官ことゲーマルクは王にいわれ100人もの兵を連れてきた。弓師10名、剣士10名、回復魔法士2名、残りは攻撃魔法使いだ。全員がCランクレベルだと言う。ゲーマルクはドリルドの兄だ。


「ドリルド。王の要請で来たぞ。さっさと片付けて王都に戻りたい。早速向かうから案内を頼む」


「兄上。ギルドからは食料とポーションを用意してます。ただ、まだカツヨリが戻ってきていません」


「例の勇者モドキか。待つ必要もあるまい。急ぐのであろう」


「はい。ですがカツヨリの力がないと難しいかもしれません」


「ずいぶんと1人の小僧に入れ込んでいるな。だが、我が軍を舐めすぎではないか?必要なら後から合流させればよい。明朝出立する。このギルドからも人は出るのであろう。元Bランクも」

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