第34話 特訓

 ギルドへの報告はシェリーがやってくれたので、カツヨリ達は宿へ戻った。3人ともヘロヘロだったので今日は休もうと晩飯後部屋に戻った。


 翌朝、ギルドへ行きウラヌスにシュラウスの剣を返そうとしたらしばらくお前が持ってろと言われた。シェリーの報告でこの剣はカツヨリと相性がいいと思われたようだ。これからどうするのかとウラヌスに聞くと、


「この町のギルド員だけではダンジョン攻略は無理だ。王都へ行ったサンディの報告があるまでは待つしかない」


 カツヨリは素材の買取を頼みレベルを確認しようとしたがギルドが忙しそうで無理っぽい。出直すことにしてギルドの訓練場へ行った。


「リリィ、今日からクノイチの訓練を始める。まずはラダーステップだ」


 2つのはしごを並行に並べて左右に足を入れて動く。次に1つ飛ばし、斜め、と色々な動きを目標時間内にクリアする訓練だ。リリィは足が違うところに入ってしまったり、はしごを踏んでしまったり上手にできない。


「なにこれ?簡単そうに見えてすごい難しいんだけど」


 カツヨリは見本を見せた。これは伊那忍者の訓練方法でカツヨリは前世で幼少から毎日繰り返し実施していた懐かしい訓練である。身体を軽く素早く動く、慣れてくると頭のなかで敵の動きを想定し、どういうステップで動けば敵の攻撃を交わしこちらが攻撃できるかが見えるようになる。


「とりあえず3分以内でできるまで繰り返して。それが終わったら手裏剣と小刀投擲をやるよ」


 リリィは喚きながら訓練を開始した。急げばはしごにぶつかり転ぶ。ゆっくりだと目標時間をクリアできない。青アザだらけでギャーギャー言っている。



 次はリコだ。ギルドに言って的を用意してもらった。まあ購入したんだけど。木でできた的だ。リコから30m離れたところに的をたて、


「リコ、あそこまで届くか?」


 リコはファイヤーボールを出したが20m飛んだところで消滅した。今度は両手にファイヤーボールを出し、


「合体!」


 それを1つにし特大ファイヤーボールにして放った。火は25mのところで消えた。届かないか、ならば。


「ファイヤーボール、そして突風」


 ファイヤーボールを放った後、うしろから風で加速させた。前に戦闘で使ったやつだ。火は30m飛んだが的には当たらなかった。


「リコ、上手いぞ。リコは魔法を的に当てる訓練だ。的は20個あるから全部当てるまでやるぞ、MPが無くなりそうになったら自動回復するまで短剣の訓練だ」


「わかったわお兄ちゃん。お兄ちゃんはどうするの?」


 俺か、俺はな。二刀流の斬撃威力の強化方法を考えていた。単純に腕の力ではなさそうだ。あの時、シュラウスの剣には何かが付与されていた。あの付与が自由にできればきっと威力は増すはずだ。


 カツヨリは魔法が使えないが魔力はある。魔力を剣に纏わせるイメージトレーニングを続けた。訓練は日が暮れるまで続き、そのまま3日間続けられた。




 リリィはラダーステップは目標時間をクリアするようになっていた。手裏剣と小刀も単発では的に当てられるようになったが、カツヨリの要求は連射だった。1発で倒せる程敵は甘くないのだ。


 リコは魔法の精度が向上していた。さらにカツヨリのヒントで指先に魔力を留める訓練を追加したのが良かったのかスキルMP消費削減が小から中になっていた。魔法の訓練の後はリリィと短剣バトルだ。木剣を使った模擬戦でリリィはリコに胸を貸している。近接戦闘ではリリィには敵わないがもしもという時のための訓練だ。まあMP回復待ち時間を有効利用しているだけなんだけどね。


 リリィはカツヨリとも模擬戦を行う。これは逆にカツヨリが先生役だ。リリィの足さばきは日に日に上達しているが戦闘となるとまだまだだ。戦闘経験の少なさだけはどうしようもない。


 さらに訓練は10日間続けられた。リリィは手裏剣連射ができるようになり、リコは的に当てる精度だけでなく突風を竜巻に自由に変換できるようになった。そしてカツヨリは、


「クロスブレード!」


 飛ぶ斬撃を放つとトレントから回収した幹が粉々に砕けた。シュラウスの剣は魔力付与がしやすい剣みたいだ。コツがわかるともう1つの剣にも魔力を纏わせる事ができるようになった。魔力を纏わせて剣を振るうと切れ味が格段に増した。これならBランクの魔物が身体強化をしても斬れそうだ。


 カツヨリは身体強化のスキルが欲しくてイメージトレーニングをしたが得ることが出来なかった。何かきっかけがあればできそうなんだが。多分コツがいる。



 訓練を終えてギルドに戻ると町長のドリルドが王都から戻ってきていた。カツヨリを見ると、


「おう、カツヨリ。今ウラヌスから状況を聞いたところだ。王都でサンディにも会ったのだが大変な事になったな」


「ドリルドさん。王都からの応援は来るのですか?」


「それがだ。俺が王都を出るときにはまだダンジョンの情報が入ってなくてな。サンディが依頼したギルドからはBランクパーティーが来てくれそうなんだが」


「ギルドでは不安なのですか?」


「このダンジョンは普通じゃない。王に言って国軍を出して貰わないと危険だ。今、王に手紙を書くところだ」


 それだと時間がかかりそうだな。なんか揉めそうな気がするぞ。

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