第33話 決着
リコの魔法、それこそがカツヨリが考えた秘策だ。右手にファイヤーボール、左手に竜巻をイメージさせた突風を出し合体させて敵陣に放させたのだ。突風を竜巻状にするのが難しくリコは集中していたためさっきは動けなかったのだ。
「合体魔法。ファイヤートルネード」
リコの手から炎の竜巻が現れ敵陣を襲った。それを見た他の火魔法使い、風魔法使いがが竜巻に向けて魔法を追加で打ち出す。炎の竜巻はそれを吸収してどんどん大きくなりモンキー達を襲った。それを見たマジックモンキーは水魔法を出そうとするがその隙をカツヨリが襲った。マジックモンキーは咄嗟に杖でカツヨリの剣撃を防いだが、二刀流の猛攻には耐えられず首を落とされた。
炎の竜巻が消えた後に生き残っていたのはコングと咄嗟に逃げ出したテールモンキー10匹だけだった。コングは怒りながら威圧を繰り出した。
「ウッホウッホウホウホホッ!」
両胸を交互に叩きながら吼えるコング。それを聞いたカツヨリとシェリー以外の者達は動けなくなってしまった。コングは両胸を叩き続ける。
「ウッホウッホウッホウッホウッホウッホウッホ ………」
リズムにのってコングの声が響き続けるとバタバタとノイル達が倒れ始めた。続けてリリィもだ。リコは立ったまま身体を震わせている。
「なんだ、何が起きている?」
カツヨリは慌ててコングに向かって飛ぶ斬撃を放った。
「クロスブレード!」
斬撃はコングの腕を直撃し、傷をつけたが大したダメージにはなっていない。ただリズムは止まった。
「リコ!しっかりしろ、どうした?」
リコはまだ震えている。体力を奪うスキルなのか?戦えるのはカツヨリとシェリーだけだ。カツヨリはシェリーに行くぞと目で訴えてからコングへ仕掛けた。カツヨリの剣を腕で防ぐコング。なんて硬さだよ、刃が食い込みもしねえぞ!
よーく見ると茶色のオーラが身体から出ている、また身体強化か。刃は通らないが衝撃はダメージになるようで痛そうにしている。カツヨリは連撃を繰り返す。その時突然地面が無くなった。コングの土魔法、落とし穴だ。身体半分穴に落ちたカツヨリに向かってコングがパンチを繰り出す。
「おおお、まじか!ヒエエー!」
カツヨリは小刀をコングの目を狙って投げた。コングのパンチを小刀を投げた反対側の腕の刀で受けるのとコングの片目が潰れるのがほぼ同時で、少し勢いが減ったためかパンチを何とか受けきれた。目を抑えるコング、その隙にカツヨリは落とし穴から脱出した。と、そこに
「スクリュークラッシャーキーーーーーック!」
シェリーの得意技が炸裂する。コングはキックを食らって吹っ飛んでいった。あれ?グレートモンキーは首がもげたけどコングは防御力が高いのかもげなかったな。カツヨリは加速を使いコングに近づいて斬りかかろうとしたが地面から土槍が3本突き出てきた。
「あぶな!」
スラロームをするように土槍を避ける。前世で覚えた忍者ステップだ。コングはすでに起き上がっていたが、軽い脳震盪を起こしたのか首を振っている。それなのに魔法発動するって、と思ったら再び地面が無くなる。
「同じ手はくらわん」
コングは落とし穴の土魔法を再び使った。カツヨリは瞬時にジャンプし全力の上段斬りをコングの脳天にぶちかます。コングは穴に落ちたカツヨリを攻撃しようと頭を下に向けていたため反応が遅れもろに脳天にくらい真っ二つに斬り裂かれた。
「身体強化がきれてたみたいだったな。シェリーさんのキックくらって解けたのか?」
カツヨリはシュラウスの剣を見て、あっと叫んだ。剣に何かオーラのような光が見える。もしかして何かしらの付与効果が出てたのか。コングが倒れたらリコが復活した。荷車からポーションを出し全員に飲ませている間にコングの魔石を回収した。
「魔石があるってことは外から入ってきたのか」
「そうとも限りません。外から来た魔物の魔石を食べて進化し、出入りするようになったのかも知れませんし。とにかく女性冒険者を探しましょう」
皆が休んでいる間にカツヨリとシェリーは元々コングがいた猿の陣地らしきところを探索した。シェリーが、
「いました。カツヨリは来ないで下さい。ちょっと男性には見せられない」
ありゃりゃ、遅かったか。しかも役得も無し、と。女性冒険者はすでにお亡くなりになっていた。コングにいいようにされたようだ。その後死体を運び出すかどうかで女性陣で揉めたが、このままダンジョンに吸収されるよりはいいだろうと運び出すことにした。シェリーはこの2人を知っていた。アースのパーティーで2人ともDランクだがもうじきCランクの昇格試験を受ける予定だったそうだ。つまり結構強かったのだが、現実は甘くない。
カツヨリ一行は犠牲者を出すこともなくダンジョンから離脱した。途中襲ってきた魔物がドロップアイテムを落としたが弓だったのであとでシドに渡す事にした。ダンジョンから出て一休みしているとシド達が現れ、
「向こうで戦闘があった形跡があり死者多数だ。周囲を探したがアースとオットーさんは見つからなかった」
カツヨリ達は周囲をしばらく探したが手がかりはなく、死んだ冒険者達の遺品を集めギルドへ帰還した。
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