第31話 飛ぶ斬撃

 宝箱は普通にお宝が入っていた。シェリーは何これ?と言っていたがどう見ても手裏剣だ。なんで?どうしてこんなのが出るの?しかもフォルダーに入っていて銭形◯次みたいに1枚投げたら次が準備される優れものだ。他には小手と帽子だった。


「リリィ、この手裏剣はお前が使え。この間話したクノイチの武器だ」


「え、そうなの?でもみんないるのに私がもらっていいの?」


「この小手と帽子の価値はわからないが他のパーティーに渡すとする。手裏剣は俺かリリィしか使えないんだ。次に魔物が出たら使ってみろ。俺が小刀を投げるのを見ていたろ、真似してみな」


 またブラックウルフが団体で現れた。カツヨリとシェリーが戦う中、リリィは手裏剣を投げたが全く当たらない。結局手裏剣デビュー戦は不発だった。


「当たらない。これは難しい」


 ウルフ系は動きが素早いから先読みして投げないと当たらない。もっと速度が出れば当たりそうだけど。戻ったら特訓だな。


 そうこうしているうちに次の階段が現れた。今のところダンジョン楽勝ムードだけどそんなに甘くはないはずだ。そういえばドロップアイテム出ないな。素材は取れないしこれじゃあ経験値稼ぎにしかならないぞ。


 さらに階段を降りるとそこは森林だった。うーん、ダンジョンすごい。光合成できないのになんで森林なんだ。これが魔源でできているって事なのね。てことはモンキーちゃんはこの階層に?そろそろ出てきてくれないと敵が強くなりそうで怖い。森を進むとシェリーが、


「来ます!」


 だーかーらー、なんでわかるの?現れたのはグレートモンキーが3匹、ラージモンキーが10匹だった。木の上からこちらの様子を伺っている。


「シェリーさん、あの猿達はなんで仕掛けてこないのです?」


「こちらの強さを探っているようです。恐らくコングの命令で偵察部隊でしょう」


 マジか。そんなに統率取れてるの?魔物が偵察ってそんなに頭いいの?シェリーによるとBランクの魔物は持つ統率は配下を指揮できるだけでなく全体の知能も上げるらしい。ステータスだけでなく頭も良くなるのか。


「それなのでBランクは厄介なのです。これがさらにAランクになるとシャレになりません。恐らくこのダンジョンには相当強い魔物が潜んでます。そもそもBランクの魔物自体がそんなに現れる物じゃ無いんです。それにダンジョンを出入りするなんて、このダンジョンは危険です。早く冒険者を助けて外へ出ましょう」


「やってみるかな。魔法は使えなくても力ずくで。二刀流、クロスブレード!」


 カツヨリは剣をクロスに構えた後、物凄い速度で左右に振るった。そうすると剣から斬撃が飛んでいく。木の上にいたグレートモンキーの胸にクロス状の傷が入り木から落ちた。木の上にいるラージモンキーを狙ってリリィの手裏剣が飛んでいくが当たらない。魔法攻撃は距離があって届かない。モンキー達は距離をとって偵察していたのだ。カツヨリはもう1匹のグレートモンキーもクロスブレードで木から落としたあと、加速を使って素早く斬り刻んだ。他のモンキーは逃げていった。


「コングへ報告に行ったみたいです。次の攻撃が厳しいものになるでしょう。しかしカツヨリ、今の技はスキルですか?」


「うーん、やってみただけ。上手くできてよかった」


 せっかくの二刀流。なんか技くらいないとね。ただやっつけではこの程度、グレートモンキーを両断ではなく傷付けただけだもんなあ。飛ぶ斬撃ってカッコイイけど威力が足らん。ちょっと俺も特訓が必要だな。


「お兄ちゃん、このグレートモンキー魔石があるよ」


 ええっ、シェリーが驚いた。まあコングが出入りしてるんだからあり得るよなとカツヨリは不思議には思えなかったがシェリーには大ショックだったらしい。


「こんな事が。普通の魔物はダンジョンには近づかないはずなのに」


 シェリーの仮説はダンジョンから噴き出た魔源が周囲の魔物を強化しているという物だった。そもそもダンジョンから目に見えるレベルで魔源が噴き出しているのが異常なのだが、さらに出入りとなると脳みそ大混乱である。


「普通の魔物は魔石の魔源と食事で動いているのですよね?ダンジョンの魔物はどうやって生活?しているのですか?」


「ダンジョン内に満ちている魔源と食事です。食事は魔物同士の殺し合いで勝ったほうがそいつを食べるという事です。ダンジョン内の死体は数分で消滅し魔源に還元されますがその間なら食べる事が出来るのです。そうやってダンジョン内の魔物はどんどん強くなっていきます。ですので発生してから時間が経てば経つほどダンジョン攻略は難しくなります。そこに魔石を持つ魔物が外から入ってくるとなると………」


 シェリーは考え込んだ。その魔物がダンジョン内で死んだ場合肉は残るのか?魔石は?それをダンジョンの魔物が食べたら?


「強い魔物に進化する、最悪はその魔物が魔石を持ってダンジョンの外へ……」


 それって不味くない?とはいえこのメンバーではダンジョン攻略は無理だという。シェリーはさっさと戻って別途ダンジョン攻略隊を結成したいという。それにはまずはコングだ。

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