第29話 スクリュークラッシャーキック

 魔物はテールモンキー、ラージモンキー、グレートモンキーの群れだった。約30匹だ。グレートモンキーはCランクに該当する。アースさん達を襲ったコングの配下かも知れないがコングの姿は見えない。カツヨリは、


「コングが出てくるかもしれません。一気に片付けましょう。リコ、シドさん。作戦通りに」


 数の攻めは厄介だ。対複数の戦闘はどうしても隙を狙われやすくなる。本来なら範囲魔法で一気に、もしくはダメージを全体に食らわせて敵の数を減らしたかったのだが、歩きながら全員にヒアリングしたがこの隊に範囲魔法を使える者はいなかった。森の魔物は火に弱い、ならばというのがこの作戦だ。まずはリコだ。


「ファイヤーウォール」


 炎の壁がカツヨリ隊の前に現れた。モンキー達は突っ込んでこようとしたが火を見て踏みとどまった。そこに


「スキル 弓連射」


 この隊唯一の弓使い、シドの弓矢が炎の壁を通ってモンキーに突き刺さる。しかも連射で。矢は炎をくぐると火矢に変わった。火矢はモンキー達に突き刺さりダメージを与えていく。当たらなかった矢も地面に刺さり燃えていた。火が怖いモンキー達はびびって動きが鈍っている。そこを、


「ハッハー、やっと使うぞ二刀流」


「ウサギ拳法、ローリングパンチ」


「私も行きます。ウィンドカッター、とどめは短剣」


 カツヨリ、シェリー、リリィが敵陣に飛び込み暴れまわる。オットーのパーティーメンバーやノイル達は壁の後ろから魔法による援護射撃だ。あっというまに敵は1匹のグレートモンキーだけになった。


「だいぶ勘が戻ってきました。あいつのとどめを刺してもいいですか、リーダー?」


「シェリーさん、お願いします」


 カツヨリはウサギ獣人がどうやってCクラスを倒すのか見たかったので許可した。他のメンバーには手を出さないように指示して。さあ、一騎打ちだ、と思ったのだが


「スクリュークラッシャーキーーーーーーック!」


「!!!」


 三角飛びで木を蹴って宙高く舞い上がり、きりもみ式のドロップキックで足の先に赤いオーラが見えた。なんつー蹴りだ。まるで仮面◯イダーV3のV◯きりもみキックとウルトラ◯ンレオのレ◯キックが合わさったみたいだ。キックはグレートモンキーの顔面にヒットし、そのまま首がもげて死んだ。マジか、なんだこの威力。まさに一撃!もしかしたセクハラしたらあの蹴り食らっちゃうの?


 カツヨリは周囲を再度警戒したがコングは出てこなさそうだ。その間に隊のメンバーが素材を回収してそのままモンキー達が出てきた方へ進んだ。


「凄いキックでしたね。必殺技ですか?」


「必殺技とは何ですか?スクリュークラッシャーキックは得意技でした。うまく決まって良かったです」


 そうか、必殺技っていう概念は無いんだ。


「シェリーさんはこんなに強いのに何で冒険者を辞めたのですか?」


「うーん、人にはね、言いたくない過去があるんですよ。獣人だけど」


「あっ、変な事を聞いてごめんなさい。シェリーさんは元Bランクでしたよね」


「そうよ。まだまだ上には上がいるからね。多分そのうち会えると思いますよ。この国最強の冒険者に」


 この国最強?王都にいるのかな?カツヨリは二刀流での戦いを振り返ってみた。前世では二刀流ではなかったのになぜかスキルに二刀流があったので試してみたが、まあまあスムーズに戦えたと思う。左手にウラヌスから借りたシュラウスの剣とやらを使ったのだが本当に斬れ味抜群だった。何か付帯効果がありそうな剣なのだが使ってみてもわからない。鑑定とかあればいいのに。


 さらに森を進んでいくと群れからはぐれたのかモンキー系の魔物がパラパラ出てくるが一閃し、何やら怪しい雰囲気の場所に出た。急に森が開けそこに洞穴が見える。ここがカイトの言っていた場所か?とするとオットーさんはどこだ?


 リコが、


「あの穴から何か出てるよお兄ちゃん。黒い煙見たいのが」


「ウル◯ラアイ!」


 はい、嘘です。そんなスキルはありません。よーく見ると確かに何かが噴き出ているように見える。魔源なのか。


「シェリーさん。ダンジョンから魔源が噴き出すって事はありますか?」


「あり得ない。ダンジョンの魔源はダンジョンを成長させるために使われるの。ダンジョン内で死んだ生き物は魔源に還元されて次の魔物を生み出すの。外に出ちゃったらダンジョンの中の魔源が減ってしまうから。これは新発見よ」


「シェリーさん。嫌な予感がするのですが、ダンジョンから出た魔源が周囲の魔物を強化してるって事はないですか?それなら急にBランクの魔物が増えたのも説明できませんか?」


「えっ、それはそうですがあり得ないのです。これはこのダンジョンを早急に調査しないと大変な事に」



 それはわかるけどこの戦力じゃあ無理だろ。あそこに入ったらどう見ても不味そうだし。と思っていたらコングが女性の冒険者2人を担いでダンジョン内に入っていくのが見えた。


「う、嘘よ。魔物がダンジョンを出入りするなんて」


 嘘って言っても今みんな見てるし。コングは女性が好きなのかな?あっ、猿は女を囲うためにボス猿になるんだっけか。てことはあの女性達はコングに犯される?

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