第27話 森の南で何が?

 翌朝、早めの朝食を済ませてギルドへ向かった。ギルドが何やら騒がしい。ノイルがカツヨリを見つけ叫んだ。


「カツヨリ。オットーさんが昨夜1人で森へ向かったらしい」


「何だと!」


 しまった、その可能性があったか。待てよ?ウラヌスは知ってたなこれ。だからだったのか、頭まわってねー!ギルドの中に入るとオットーのパーティーメンバーが座り込んでいる。カツヨリを見つけ、


「カツヨリ。頼む、オットーさんを助けに、一緒に行ってくれ。俺達だけでは……」


 こいつらは弱くない。昨日の戦いでも自分の役割を理解して充分に戦った。だから死ななかった。だが、それはいい指揮官といたからだ。俺にオットーさんの代わりができるのか?そこにシド達のパーティーもやってきてカツヨリを見た。お前しかいないだろ、って顔で見てる。はあ、仕方ねえな。とにかくウラヌスを探さないと。


「シェリーさん、ギルマスはどこに?」


「武器を取りに行ったわ。一緒に行くってきかないから、代わりに私が行く事になったの。ギルドマスターがいなくなったら万が一の時に困るでしょ」


「シェリーさんは戦えるのですか?」


「このウサ耳は伊達じゃあないのよ。これでも元Bクラス冒険者、ウサギ獣人のシェリーって言えば有名だったんだから」


 元Bランク冒険者かあ。でも元って事は引退したんだろ?戦えるのかな?カツヨリは知らなかった。この世界のウサギ獣人の強さを。


 ウサギ獣人。獣人は基本的に戦闘力が高い。速度、力は人間より優れ魔法も使う。特にウサギ獣人は格闘技に優れ戦闘では重宝される。魔王との戦争で獣人の多くが死に、特にウサギ獣人の生き残りはわずかだ。獣人の国では獅子獣人がもっとも多く王も獅子獣人だが、単騎の戦闘力ではウサギ獣人の方が強い。


 シェリーの戦闘スタイルは武闘家と魔法、本人は魔闘家と呼んでいるオリジナルスタイルだ。魔法は火と水を使う。


「まあ引退して5年だからどこまで身体が動くかはわからないけどこの町のピンチなんだから出来る事はやるわ」


 シェリーがカツヨリと話しているとウラヌスがシェリーの武器を持ってやってきた。


「シェリー、こんなのしか残ってなかったがお前なら使いこなせるだろう」


 ウラヌスが持ってきたのはカイザーナックルとトンファーだった。


「上出来ですよ、ウラヌスさん。じゃあ行ってきます。リーダー、行きましょう」


 リーダーって俺かよ。カツヨリはウラヌスに剣があったら貸して欲しいと頼むと再び奥から一振りの剣を持ってきた。


「これはシュラウスの剣と言う。俺が現役時代にダンジョンで手に入れたものだ。カツヨリに貸す、絶対にあげないからな。無くすなよ、壊すなよ、大事にしろよ」


 あーーーうるさい。子供かよ、でもいい剣だ。持った瞬間何かを感じた。が、何かはわからなかった。


「ウラヌスさん。この剣を使ってたのですよね?何か特別な効果とかありましたか?」


「いや特にないぞ。斬れ味は抜群だったが。俺が出るんだったらその剣を使ったんだがな。あー残念だ」


 何だかやけにしつこいな。本当は森に行きたいんだろうな、駄々っ子みたいだ。煩いオヤジは放っておいて皆を引き連れ森へ向かった。今回も荷車にはポーションが積んである。町を出て森の入り口まで行くとカツヨリは、


「昨日と同じ布陣という訳にはいかない。先頭をシェリーさんと俺のパーティー、2列目をシドさん達、荷車、オットーさん達のパーティー、ノイルさん達の順で進む。少し歩くペースを上げる、ついてきてくれ。オットーさんに追いつくつもりで行く」


 と挨拶し森へ入っていった。間に合うとは思っていなかったが、万が一、いや億が一間に合って何人かでも助けられればラッキーだろうくらいにしか考えていなかった。途中ウルフやテールモンキーの集団に襲われた。テールモンキーはオナガザルに似た魔物で尻尾を使って攻撃してくる。ウルフはカツヨリが、素早く動くテールモンキーはシェリーがサクッと倒して一行はどんどん森の南方向へ進んでいった。


「シェリーさん。さすが元Bランクですね。あの素早いサルをパンチとキックで倒すとは。カッコいいです」


「ウサギ獣人はね。素早さではBランクの魔物より速いのよ。あんなサルごときどうって事ないわ」


 リリィはシェリーの戦闘スタイルを見て、


「カツヨリ、シェリーさんみたいなのがクノイチなの?」


 おっとそう来たか。クノイチって何?って聞くシェリーにカツヨリがゴニョゴニョ答えた。すると、


「そんな戦い方をする人がいるのですか?記憶を失くしてるのに変な事は覚えてるのね」


 と鋭いツッコミがきてオロオロしていたら、ガサガサと音がして木の間から人が現れ倒れた。リコが慌てて駆けつけて回復魔法をかけた。


「ヒーリング」


この男は南に向かった冒険者の1人だった。シェリーが駆け寄り水を飲ませてながら話しかけた。


「カイトさん。大丈夫ですか?ギルドから応援に来ました。森の南で一体何があったんです?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る