第25話 トリプルハリケーン
カツヨリは木の枝攻撃を防ぐのに精一杯だった。こんな時に魔法が使えればなあ、と思ってたら突然小さいながらもファイヤーボールが飛んできて枝を燃やし始めた。最後尾のノイルのパーティーからの援護だった。シドのパーティーは火魔法を使う人がMPを使い果たしたようで別の人がサンダードロップを出してはいるがあまり効いてない。
「カツヨリ。ここは俺達に任せて前衛を頼む」
ノイル達は火魔法を使って枝の数を減らしカツヨリが動けるようにしてくれた。
「ノイルさん、ありがとう」
カツヨリは前衛の敵に向かった。その時既にリリィとリコの合体魔法の準備が完了していた。
「ちょっと遠いけどリリィ、頼むよ。きっちり運んでね」
「やってみる。リコにできるなら私だって」
「ダブルファイヤーボール、行け!」
リコの両手からバランスボールほどの大きなファイヤーボールが2個、トレントに向かって飛んでいった。
「突風、続けて突風」
リリィの手から風が吹き、その風を次の風が加速した。リコのダブルハリケーンには及ばないもののその加速した風はファイヤーボールをより遠くまで飛ばした。リコのファイヤーボールはトレントのボスに向かっていった。
「よし、燃えちまえ」
前衛にたどり着いたカツヨリが叫んだが、ボスをかばうようにトレントが盾になった。
「な、なにい?」
オットーがそれを見て、
「あれは統率の効果だ。ボスが統率を使っている」
「なら、邪魔できないようにみんな燃やしちゃえばいいのね。いっちゃえー!」
リコからファイヤーボールが発射されまくった。しばらくしてリコはゼーゼーいいながらしゃがみこんだ。MP切れのようだ。オットーはリコを下がらせ火魔法を使えない仲間にリコを守るように言ってから
「カツヨリ。残りはボスとトレントが数体、やれるか?」
カツヨリはもちろんと答え、MPが残っている人達に援護を頼んだ。リリィにはこっそり水筒を渡し、リコに飲ませるように指示した。MPポーション飲んだ事にすればごまかせるっしょ。
カツヨリはオットー達の援護を受けながらトレントを斬りまくった。トレントは単体ではEランクの魔物だが集団で行動する事が多くギルドではDランクに認定されている。スキルの効果もあるのか、カツヨリはトレントの幹をスパッと切ってしまう。
「すごい、剣をあそこまで使いこなすとは」
「見とれてないで倒れたトレントを燃やせ。素材なんかどうでもいい、生き残るぞ」
オットーの檄が飛び魔法が飛ぶ。ついにボスを残してトレントは全滅した。トレントのボスは深緑色をしており枝には多数の葉っぱが付いている。予想通り葉っぱが飛んできた。
「突風」
風魔法がカツヨリの周囲に現れ葉っぱを寄せ付けない。ところが、さっきと同じように落ちた葉っぱがまたカツヨリ目掛けて飛んでくる。
「ジェロ◯モかよ、ってわかる人いないか」
カツヨリは葉っぱに構わずボストレントに向かって加速を発動した。一気に間合いを詰めて剣を一閃、スパッと真っ二つに切ったつもりがまた刃が食い込んで抜けなくなった。
「またかよ。あん時よりレベル上がってるのに」
ボストレントに蹴りを出し剣を抜こうとしたが抜けない。とそこに木の枝が竹刀のようにカツヨリを襲う。
「剣で勝負ってか、うわあ」
そんなはずもなく枝に集中していたカツヨリの背後から葉っぱのカッターが飛んできてカツヨリの皮膚を切り裂いた。
「ヤバい、」
とカツヨリが陣まで下がるとどこから来たのかトレントの増援が10本?匹?ほど現れた。リリィはカツヨリに水筒を渡すと、リコと一緒に前面に出た。
「カツヨリを傷つける奴は許さない」
「お兄ちゃんを傷つけるなんて、これでも喰らいなさい」
「ファイヤーウォール」
カツヨリを追って陣に近づいてきたトレントに向かって炎の壁を出した。トレントはびびって足を止めた。
「リリィ、行くよ」
「任せて」
『トリプルハリケーン』
リリィの片手、リコの両手から風が吹き出して炎の壁を押した。壁はトレントを覆い尽くしそのままボスへ向かっていった。リコはさらにファイヤーボールを出しボスに放った。その数6発。火が消えた後にはカツヨリの刀とボスの魔石が転がっていた。
敵を倒したのを見てカツヨリは水筒ではなく、荷車のポーションを飲み怪我を治した。みんなの目があるからね。リリィとリコにいい子いい子して魔石と刀を回収した。トレントの木は魔力を持っていて魔道具に使われるそうだが、素材としてゲットできたのは10本分で後は燃えてしまった。結局死人は出ず、怪我もポーションで治った。みんな荷車に素材や燃え残った魔石を回収している。経験値は割られるが倒した本人には補正が入るはずだ。リコは火魔法のレベル上がったんだろうな。あのファイヤーウォールは無意識で発動したのかも。リコも大概だな。
オットーは、
「我々の任務は偵察だ。ここは一度引く事にする。今の魔物は初めて見るがBランクだったと思う。森に何か起きているのは間違いないだろう。ほかの連中も心配だ」
オットーがそう話した時、遠くの方で合図があがった。南の方向だ。
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