第24話 リコの活躍

 森の中の宿泊、ようは野宿である。パーティー毎にテントを立てて、交代で見張りを立てる。見張りは各パーティーから1人づつが3時間交代だ。食事も各パーティー毎に取るが今回は倒したデリシャスラビットのお裾分けがオットーからあった。倒した魔物は基本倒した者の財産になる。ただ今回はどうしても前衛が倒す事になるので不公平感があり、肉だけでもという心使いのようだ。


「お肉、お肉♫」


 リコはご機嫌だ。火魔法で火を起こそうとして出てきた火のデカさに周りのパーティーが驚いた。


「ちょっと、今のファイヤーボールだよね。デカっ!」


 あの子何者?という視線が降り注ぐ。カツヨリは、


「リコ、魔力を抑えられるか?火を小さく出すイメージで」


「やった事ないけどやってみる、ちいちゃいファイヤーボール」


 リコは最初のファイヤーボールを消してから改めてファイヤーボールを出した。今度は普通の大きさで焚き火を起こし肉を焼き始める。リリィは、


「今の何?魔力を抑えるってどういう意味?」


「リコの魔力は例の補正が入ってるから普通の人より威力が大きくなる。サンディが言ってたんだ、魔力を抑える訓練をリコにやらせろって。そういうスキルがあるらしい」


「ふーん、私には無理そうね。リコほど才能はなさそうだし。ねえ、カツヨリ。私は魔法ではリコには敵わない。私もカツヨリの役にたちたいの。このままだと2人の戦闘レベルについていけなくなるわ。カツヨリ、私はどうしたらいい?」


 カツヨリはそうだな、と言ってからとりあえず食事にしようとリリィをなだめた。その通りなのだ。リリィは弱くはない。だがカツヨリとリコが特異的すぎてこのままではリリィがお荷物になるのは目に見えている。とはいえどうすっかな?デリシャスラビットを頬張りつつカツヨリは楓を思い出していた。伊那忍者のクノイチでカツヨリにとっては初めての女性でもある楓。いつもカツヨリの側にいてカツヨリを守って死んでいった楓。楓は素早さが売りで飛び道具と短刀が得意だったな、そうだ。


「リリィ、そうだ、クノイチだ。お前はクノイチになるのだ」


 あれ、これなんの言い回しだっけ?まあいいや。


「クノイチって何?」


 リリィはクノイチを知らなかった。この世界には忍者はいないようだ。


「素早く動き、手裏剣を投げ、近接戦闘では小刀を使う。忍術という魔法に似た技も使うからリリィにピッタリだと思う」


「忍術?」


「まあ忍術は無理でも魔法があるからな。忍びの訓練なら俺にもできるから。この調査が終わったらダンジョンに行く前に特訓しよう」


 リリィの育成方法が決まった。となると欲しいものが出てきた。リリィもなんかワクワクしている。




 各パーティーとも食事が終わって見張りを残してテントに戻った。見張りの順番はリコ、カツヨリ、リリィの順番にした。初日の夜は何も起きなかった。テントは密室扱いにならないようだ。ここで発情されても困るし昨日ですっからかんだ。


 2日目の調査が始まった。陣形は初日と同じでカツヨリ達は3番目だ。同じようにウルフにデリシャスラビット、たまにブラックラビットが現れる。強さは対して変わらずオットー達に軽く蹴散らされている。その時突然オットーの足が止まった。2列目のシドが不審に思って聞いた。


「オットーさん、どうしました?」


「俺は前にここに何度か来た事があるのだが、景色が変わっている。ここは木が無くて広場のようになっていたのだが」


 周囲を見ると木が沢山生えていて道もある。とても広場だったようには見えない。なんだこの感触、誰かが俺を見ている。カツヨリは殺気を感じていた。


「リコ、ファイヤーボールで木を燃やせ!」


「はい、お兄ちゃん。ファイヤーボール」


 魔力を抑えないファイヤーボールはバランスボール位の大きさになり右方向の木を直撃した。


『ウォンヲウォン』


 木が泣き叫ぶ、周囲を木の魔物、トレントで囲まれていたのだ。その数30本?匹?とにかくトレントからの攻撃が始まった。トレントは木の葉をカッターのように飛ばしてくる。一枚の攻撃力は大した事ないが数がすごい、オットーとシドのパーティーは傷だらけになりながら魔法で攻撃している。


「ファイヤーボール」


「サンダードロップ」


「ウォーターショット」


 オットー達の攻撃は火魔法以外はあまり効いていないようだ。シドの矢もトレントには相性が悪い。シドのパーティーからも火魔法が飛んでいく。後方のカツヨリ達は左右のトレントを既に倒し終わっていた。リリィの突風でトレントの葉のカッター攻撃を防ぎ、リコの両手からの火魔法同時発動によるファイヤーボール乱れ打ちでほとんどのトレントを一撃で倒した。


「リリィ、リコ、前衛が危ない。助けるぞ」


 カツヨリは叫ぶとシドに襲いかかっているトレントと向き合った。トレントは木の枝を刀のように振り回してシドのパーティーに襲いかかっていた。カツヨリは木の枝をひたすら斬りまくった。そうすると切られた枝がカツヨリ目掛けて飛んでくる。


「うっそー、サイコミュ式追尾装置かよ!」


 避けたり刀で払ったりしたが、再び空中に浮かび上がりカツヨリを襲う木の枝軍団。うーん、これは魔法かスキルだな。こんなのキリがない。


「リコ、木の枝を操ってるボスがいるはずだ。探してそいつを燃やしちまえ!」


「えー!どれがボスなの?みんな同じ木じゃん」


 その時リリィがオットー達を攻撃しているトレントの後ろにいる色の違う木を見つけた。


「リコ、あれじゃない?ボスっぽい」


「あ、あれね。あそこまでは魔法届かない。お兄ちゃん、もう少し頑張って」


 リコとリリィは荷車からポーションを持って前衛に向かった。そしてオットー達にポーションを配ると、


「今から私とリコがボスに仕掛けます。オットーさん達は私達を守ってください」

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