第23話 調査隊出発

 カツヨリは朝早くにアンジェラの家を出て宿に戻った。何事もなかったようにリリィ、リコと朝食を食べギルドへ向かった。ギルドでは、冒険者に召集がかかっており凄い賑わいだった。50人はいるな、でもこれで全部だとすると少なくないか?周りに聞いてみると隣国や王都への護衛依頼でアキール町を離れている者がいるので残っているのはこれで全員だそうだ。この町最強のCランクパーティー、烈火剛進団は護衛任務でいない為、実力2位と言われているCランクパーティー、風雅魔真撃がリーダーになるようだ。ギルドマスターのウラヌスが、


「みんな、よく集まってくれた。最近森の様子がおかしい。ラキーヌ村近くにダンジョンができたのが原因かはわからんが、森にBランクのサンダーウルフが出た。エルフのサンディとそこにいるカツヨリ達のパーティーでなんとか倒したが、統率されたシルバーウルフを含むウルフ軍団に相当手こずったようだ。そもそもこの森にそんなに強い魔物が出るわけがない。森に何かが起きている。すでに王都へは応援依頼を出している。応援が到着するまでは無理をしたくない、よって主たる任務は偵察だ。森で何が起きているかを調べてもらいたい。報酬はギルドから出す。50人の多所帯だ、まとめ役に風雅魔真撃のアースを任命する。みんなアースの指示に従って行動してくれ。決して無理はするな。頼んだぞ」


 サンディってあの一匹オオカミの?実力はBランクだけどずっとDランクのあいつだよな、Bランクが苦戦するってヤバくねえか?そもそもカツヨリって誰だよ?お前知らねえのか?凄い奴らしいぞ…………


 冒険者達のざわめきがとまらない中、1人の男が台座に立った。


「風雅魔真撃のアースだ。森の調査隊のリーダーに任命された。今回の目的はあくまでも調査だ。もちろん魔物と遭遇した場合は倒して構わんが思わぬ強敵が現れるかもしれない。その場合は撤退優先だ、それと合図の魔道具を使うようにしてくれ。合図は2種類、撤退の合図と応援要請の合図だ」


 調査隊は3班に分けられた。東側、南側、西側でカツヨリ達は東側に行くことになった。前回カツヨリ達がサンダーウルフに遭遇したのは南側でそこには風雅魔真撃含む20名が当てられた。何かあるなら南側だろうという読みだ。東側のリーダーはCランクのオットーだ。オットーはベテラン冒険者だが後輩の育成に力を入れており、オットーのパーティーはオットー以外はEランクだ。ウラヌスは実力的にはカツヨリが飛び抜けているのを知ってはいたが、若いカツヨリをリーダーにすると揉めそうなのであえて避けた。オットーにはカツヨリの事を話していてオットー自身もカツヨリと組みたがったのでこういう編成になった。


「カツヨリだな?東側のリーダーを務めるオットーだ。よろしくな」


「オットーさんはじめまして。カツヨリです。それとリリィとリコです。冒険者成り立てなので色々と教えて下さい。よろしくお願いします」


「ギルマスから話は聞いている。力では一番でも冒険者はそれだけではダメだ。才能ある若者が何人も先に死んでいった。俺はそれが嫌でな、後輩の育成をしているんだ。とはいっても俺にできるのは基本的な身を守る知識だけだ」


 一息ついて、オットーが東側のメンバーを集め


「東側リーダーのオットーだ。俺はこのメンバー全員を死なせない。以上だ」



 リリィがオットーさんて渋いね、カッコいいと言いながら荷車に向かった。今回は森の中で何日か過ごす事になるのでギルドから荷車が提供されている。アイテムボックス小だけでは食糧や水、ポーション類が十分に運べないからだ。カツヨリ達3人は昨日のお金で全員がアイテムボックス小を持ってはいるがテントもいるし、倒した魔物の素材を入れる事を考えると荷物を置くところは多いほうがいい。


 東側に提供された荷車は1台。ギルドから運搬する要員も派遣されている。至れり尽くせりだが、それだけ今回の件を重要視しているという事だ。


 50人の調査隊は森の入り口から少し進んだところで3方向に別れた。総リーダーのアースは各方面のリーダーによろしくお願いしますと言って奥の方へ進んでいった。アースはオットーの弟子だそうだ。


 カツヨリ達も東側を進み始めた。リリィはオットーに


「オットーさんてアキールのギルドでは古株なんですか?お弟子さんが沢山いるんですよね?」


「まあそうだが、お前達とパーティーを組んでたサンディが1番の古株だよ。エルフには年齢では勝てない、ともう森の中だぞ。緊張感を緩めるな。戦場と思って行動しろ」


 東側の構成はオットーのパーティー5名が前衛、その後ろにDランクパーティーのシド達3名、荷車、カツヨリ達3名、最後尾にDランクパーティーのノイル達4名だ。剣を使うのはカツヨリだけで、後は皆魔法主体だ。シドが弓を使えるため2列目にいる。回復魔法が使えるのはリコだけだ。荷車にはギルドから支給された1人1本のポーションが積まれている。当然パーティーはアイテムボックスを持っており各自自分のポーションは用意しているので気休め程度だが予備があるのは心強い。


 森を進んでいくとウルフ、デリシャスラビットがパラパラと出てくるがオットー達だけで片付けてしまう。オットーは雷魔法、他のメンバーは火、風、水、土魔法を使っている。なんかバランス良さげなパーティーだ。初日は特に問題なく進み森の中で泊る事になった。

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