第17話 水筒の正体?
サンディは水をちょっと舐めてからゴクゴクと飲み込んだ。疲れが抜けていく感じがする。なんだろうこの感覚は?今まで感じたことのないものだ。ポーション?
「リリィ、お前も飲んでみろ。さっき魔法使ったよな?」
リリィはサンディに言われて水筒の水を飲んだ。あ、あれ?
「MPが回復したような感じがします」
やっぱり。サンディはカツヨリを見て、
「カツヨリ。この水筒はどこで手に入れた?」
おっと、これは返事に困るぞ。まさか女神にもらったともいえないしな。とりあえずごまかそう。
「気づいたらそのショルダーバッグに入ってたんだ。入れっぱなしで忘れてた」
「これは恐らく魔道具だ。水を入れておくとHPとMPが回復できる水に変わるようだ、しかも中の水は新鮮さを失わない。こんな凄いものを一体どこで?」
そんな凄いものだったのか。ただの水筒かと思っていたよ。最初女神がくれた物だからなんか意味があるかとは思ったけど、エリアルってなんか頼りなさげだったから期待してなかったしその後お金が入ったから存在自体を忘れてたわ。ワッハッハ。
「ではそこの泉で水を汲んできます」
本当に回復する水に変わるのか実験を始めた。どのくらいで変わるのか?水を入れて10分後、ただの水。30分後、ただの水。1時間後、戦闘を終えたリリィが水を飲むと、
「回復した。1時間で変わるみたいだね。凄いよこの水筒。これがあればポーション買わなくていいじゃん」
無限に湧いてくる訳じゃないから全く買わないわけにはいかないだろうが買う数は減らせるな。しかしこんな凄いものなら説明くらいしてくれてもいいのに。エリアルって意外と意地悪なのかもしれないな。実はただのドジっ娘だとは流石に思わないカツヨリであった。
サンディは、カツヨリって一体何者なのか?と考えていた。戦いぶりを見たがレベル10の強さではない。Cランク、いやBランクでもおかしくないだろう。素早さもだが動きに無駄がない。リコによれば剣を持ったのを見たことがないという事だが、実際は剣の達人と言える習熟度だ。それにこの魔道具だ。ショルダーバックに入っていたということはヤンギュー国の物なのかもしれないが、そもそもそんな国はどこにもないはずだ。長生きするエルフの情報にない国、ヤンギュー国。カツヨリも強いが妹のリコもまだレベルが低いとはいえ大賢者になるような才能持ちだ。サンディはDランク冒険者だが実力はBランクに近い。エルフで一匹オオカミで生きてきた。100年も戦闘経験があり、実際は強いがあまり目立ちたくないためCランクの試験を受けていないだけだ。スキル必中を持っているし遠距離攻撃である弓は必ず当たる。そのサンディから見てもカツヨリの強さは異常だった。当のカツヨリは呑気に
「サンディさんとリリィ、リコの稽古が見たいのでぼちぼち引き上げますか?どこで稽古します?」
「森の入り口あたりが安全だろう。その水筒を使って回復しながら特訓すればすぐに強くなるぞ」
レベルが上がれば力や素早さは上がり確かに強くなる。だが、戦いの勘は戦いでしか養われない。特に近接戦闘は体さばきが重要だ。それは訓練や経験でしか身につかない。サンディから見てカツヨリの体さばきは自分以上だ。100年も戦闘経験のある自分よりも優れているなんて。しかもまだ底が見れていない。
「カツヨリ。リリィとリコの後でいいんだが、カツヨリとも稽古がしたいのだが」
カツヨリはサンディが自分の強さを確認したがっていると感じた。カツヨリとしてもDクラス冒険者の実力を知るいいチャンスだ。
「もちろんいいですよ、お願いします」
と、その時
「しまった。囲まれた。かなりの数だ」
サンディが急に叫んだ。カツヨリ達には魔物の気配が感じられない。エルフだからなのか森の変化に敏感なようだ。
「カツヨリ。前を頼む。私は後ろを、リコ、ファイヤーボールをその木の向こうに打て」
と言いながら矢を放ち、呪文を唱え始めた。
「ファイヤーボール」
リコの火魔法が木の向こうに飛び、火だるまになったウルフが転がって出てきた。火を避けたウルフが3匹こちらに向かってる走ってくる。サンディは
「ウッドブロック」
サンディ木魔法を発動させた。防御魔法だ。カツヨリは驚いた。馬防柵じゃん、戦国かよ!カツヨリ達の左右と後ろ側に丸太で組まれた柵ができ、突っ込んできたウルフは柵に激突した。そこにサンディの矢が飛んでいく。
「リリィ、リコ。魔法を柵の外から発動させて。魔法を手から出すんじゃないよ、そう、1m向こうに魔力を集めるの」
「ええ、そんなの無理。魔力を手に集めるって教わってるし」
リリィは泣き言を言うリコに、
「こうしよう。その柵の隙間に手を入れてそこから魔法を広がるように飛ばすの。リコ、やってみよう。私から行くよ、ウィンドカッター」
柵の間から発動したリリィの風魔法は風の刃が徐々に大きくなりウルフの首を刎ねた。リコも魔法を発射した。
「ファイヤーボール、ファイヤーボール」
リコは両手から同時に魔法を発動させていた。それを見たサンディは、
「そ、それは高等技術。リコ、あんたって子は」
ウルフを10匹倒したところで、左右と後ろ側のウルフ集団は近づくとやられると思ったのか突っ込んでこなくなった。おかしい、やけに統率が取れている。サンディの気配探知は前方に強い敵がいると感じている。だが囲まれていては前方の敵には集中できない。
前方の敵が姿を現した。ウルフが20匹、黒いウルフ、ブラックウルフというらしいEランクの魔物が5匹。Dランクのシルバーウルフが2匹。そして、
「サンディさん。あの威厳のあるツノのある魔物は何ですか」
その魔物はシルバーウルフより1.5倍はでかい。なんか威圧感もあるし。
「バカな。あれはサンダーウルフ。Bランクの魔物だ。なぜこの森にあんな強い魔物が。気をつけろ、あいつは雷魔法を使う」
サンディは慌てて呪文を唱え始めた。低級魔法は無詠唱で発動できるが、中級魔法以上は詠唱が必要だ。その時カツヨリは水筒をリコに預け、時々飲めよ。魔法撃ち続けろ、と言って前方に飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます