第16話 レベル上げ

 町の外へ出て20分ほど歩き森に入った。この森はFランクの魔物が多いので初心者冒険者のいい稼ぎ場になっているが、まれにDランクの魔物も出るらしい。カツヨリ達が狙うウルフはFランクで肉が美味い。討伐確認部位は耳だが、肉や毛皮もギルドで買ってくれる。お金使いすぎだしレベル上げも兼ねて稼ごうかな。サンディが口元に指を持っていき、シーってやってる。もう見つけたのか、と辺りを見渡すが魔物はいない。サンディがこっちだ、と手招きする方へ向かって歩くとウルフが3匹群れていた。サンディは弓を引き絞り矢を放つと1匹の胴に矢が刺さり転がった。それを見たカツヨリは阿吽の呼吸で走り出し残りの2匹の脚を切った。ウルフは死んではいないが動けない。


「リコ、短剣でとどめを刺してくれ」


 カツヨリがリコにとどめを刺させようとするが、近づくリコにウルフが睨みつけ唸っている。リコは怖がって近づけない。しょうがないな。


「リコ、魔法を使ってみろ。ファイヤーボールだ」


 遠くからなら大丈夫だろうとカツヨリは魔法に切り替えさせた。あんまりMP使わせたくないんだけどね。リコは魔法を使った。杖をふりかざし、叫んだ。


「ファイヤーボール」


 でかっ、前見た村人のファイヤーボールの倍はあるぞ。ウルフは3匹とも火に包まれた。あっ、ダメだ。耳も毛皮も燃えちゃうじゃん。ウルフの丸焼きの出来上がりだった。なんてえ威力だ、おかしくね?レベル2だぞリコは。


「すごい。火魔法は得意じゃなかったのに、何で?」


 リコは自分の魔法に驚いていた。これが魔道士セットの力なの?反則よね、あ、お兄ちゃんはもっと反則だからいいか、とカツヨリを見ると驚いた顔と困った顔が混ざった変な顔をしていたが、


「リコ、ちょっと火魔法は使わないようにしよう。討伐確認部位の耳は燃えちゃうし、売れそうな毛皮も燃えちゃうし、次は風魔法を使ってみよう。ところでレベルが上がった感じはあるか」


 リコはレベルは上がってないと答えた。4人だし、経験値割れちゃうから仕方ないか。まあひたすら倒せばそのうち上がるだろう。森の奥へ向かって行くとまたまたウルフに遭遇、結構いるんだね。今度はリリィが風魔法で脚を切り動きが鈍ったところをリコが突風を使い、ウルフが木に叩きつけられて倒れたのをカツヨリが抑えて、結局リコが短剣で倒した。まだリコは風魔法は突風しか使えない。レベルが上がればウィンドカッターを覚えるはずだ。


 魔法はレベルと訓練で覚える事ができる。レベルが低くても訓練で少しは補えるが、レベルアップの方が簡単だ。ただ、高位の魔法はレベルだけでなく魔力と訓練がないと使いこなせない。リコは魔力に補正効果がかかっているため威力がハンパない。


 続けて現れるウルフやデリシャスラビットを出来るだけリコにとどめを刺させながら森を進んだ。まだ、誰もダメージを負っていない。サンディは、


「リコ、結構魔法使ったけど疲れてない?MPが減ってくるとだるくなって動きが鈍るからね。身体で感覚を覚えなさい」


「今のところ大丈夫です。使える魔法も初期魔法だけですし、MP自動回復が効いてるようです。あ、さっきレベルが上がった感じがしました」


 やっと上がったか。装備でカバーしているとはいえやっぱレベルは全員二桁にはしたいよな。すでにギルドの依頼は達成しているが、カツヨリはサンディと相談してもう少し奥へ進むことにした。


 今回リリィは魔法を使っていない。リリィにはMP自動回復がないので戦闘が連続で続くとMPポーション頼みになる。ここでポーション使うと元が取れないので、近接戦闘に慣れるために短剣を使わせている。


「リリィ、短剣は慣れたか?」


 サンディに聞かれ、リリィは


「うん。なんか私才能あるかも?」


「リリィ。今はまだ魔物のレベルが低い。もっと素早い魔物や状態攻撃をしてくる魔物もいる。油断はするなよ。ただ見ていると確かに才能があるようにも見える。後で稽古してやるよ」


 ふーん、スキルと才能って違うのか?ジョブ見たいのはないのかな?『私は魔道士』ってのもあるくらいだし。


「カツヨリ。そのジョブってのは何だ?どういう意味だ」


 サンディに逆に聞かれてしまった。職業というか、それに長けた人です。剣士とか、僧侶とか、と説明すると


「ジョブと言うのかは知らんが、皆自分の事を剣士とか魔法使いとか言うぞ。私も弓士と名乗ることもあるが」


 なあるほど。あくまでも自称なんだ。クラスチェンジとかジョブチェンジとかはなさそうだ。そこそこ出てくる魔物を倒しながら進みついにカツヨリのアイテムボックスが満タンになった。ボチボチ戻るか、喉も渇いたしとそういえば水筒あったな、中の水変えてないけど大丈夫か?とショルダーバックから出して手に少し水を溜めて臭いを嗅いでみた。臭くないし、平気かな?と思ってたらリコがいきなりその水を飲み出した。


「おい、リコ。その水古いかも!」


 リコはその水を飲んだ後、美味しかった、と言ってから、


「ん?」


「どうした?やっぱり変か?」


「疲れが抜けた。何、この水?ポーションみたい、飲んだ事ないけど」


 話を聞いていたサンディがその水を見せてみろと言うので水筒を渡した。サンディは水を手に貯め臭いを嗅いだり色々やった後、舐めてみた。


「こ、これは!」

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