第15話 戦闘準備

 ミューラはサンディにこのパーティに入るよう頼んだ。


「一時的でもいい。この子らのレベルが上がるまで面倒を見てやってくれ」


「あいよ。こんな偶然てあるかね。困っている女の子を助けたら勇者らしき者に会えるなんて。カツヨリ、私はDランク冒険者だ。弓とナイフ、木と土の魔法を使う。よろしくな」


 というわけで、エルフのサンディが仲間になった。カツヨリはレベル上げかあ。まずはリコだよな、とレベル上げのコツをサンディに聞いた。


「そうだな、パーティに入れば経験値は入るがとどめを刺した者に一番多く入る。なので弱らせておいて、とどめをリコにやらせればいい。ところでお前達のレベルはいくつなんだ?」


 カツヨリが10、リリィが9、リコが2と言うと、サンディは私は30だと言った。ある程度レベルが上がると弱い魔物では経験値が入らないのだそうだ。なのでこの町にいる限りサンディのレベルはこれ以上は上がらないらしい。カツヨリはギルドで依頼を受けている事をサンディに伝え町の外へ出掛けようとした。まずはウルフ5匹の討伐だ。


「カツヨリ。焦る事はない、まずは装備を整えるべきだ。武器や防具、アイテムボックスは必須だぞ。そのショルダーバックだけでは大して持てないだろう」


 アイテムボックス?なんだそりゃ?


「アイテムボックスを知らないのか?大、中、小とあってな。魔力を使って空間に物を収納できるんだ。大だとMP50は必要だが5m四方は収納できる。だが駆け出しの冒険者には小で充分だぞ、消費MPも5だし、1m四方は収納できるから。MPを常時使うからレベルが低いうちは無理はしない事だ。アイテムボックスは本人の魔力にしか反応しないから盗まれる事もない。道具屋で買えるし、ダンジョンのドロップアイテムにも出る事がある。私のは大だがダンジョンで手に入れたんだ。買うと結構高いぞ。だが、まず揃えるのはリコの武器と防具だろう」


「そうなんですね。リリィの防具も揃えた方が良さそうだし、買い物をしてからにしますか」


 そこにミューラが声をかけた。


「お前たち、ちょっと待ってな」


 ミューラは奥の方でなんかガサガサ探している。


「ほれ、これ持っていきな。アイテムボックスの小だ。買えば銀貨50枚はするが、私の昔のお古でもう使わないからやるよ」


 カツヨリはアイテムボックスの小を装備した。少しMPが減った気がする。鑑定鏡で見たらMP100ー5って表示されるのかな?でもこれは便利だ。レベル上げてもっと大きいの買おう。


 カツヨリ達はミューラの店を出て武器屋に行き、リリィとリコに短剣と杖を買った。2人とも魔法が主体だけど短剣くらいはないとね。杖は殴る事も出来るし魔力が少し上がるそうだ。銀貨40枚の出費だ。カツヨリは盗賊討伐で懐はあったかいが、普通の冒険者はお金が無くて苦労するんだろうな。次に防具屋へ行き、サンディの見立てでカツヨリは革の小手を、リリィにも革の小手、そして魔法石のネックレス、これは魔力を上げる効果があるそうだ。そしてリコには魔道士のマント、魔道士の帽子、魔道士のブーツと魔道士セットを。もちろん魔法石のネックレスもだ。なんかどうみても高そうだぞ、ギャヒッ、一気に金貨15枚が消えた。


「リコの魔道士セットだがマント、帽子、ブーツの3つを装備するとスキル 『私は魔道士 』が発動する。但しこれは魔法を2属性以上使える者にしか現れない。これにより魔法の威力が2倍となる。2属性持ちがなかなかいないのでこの事を知っている者はほとんどいない。欠点は防御力が値段の割にはないと言う事だ。とはいえそこらの防具よりは効果あるぞ。なーに、魔法使いなんだから後方支援に徹すればいい、特にリコは回復魔法持ちだ。レベル1の回復魔法でHPが10回復するところ20回復するんだぞ。後ろからガンガン回復してやれば大怪我はしないだろう。毎回ポーション買うと思えば安いもんだ」


 人の金だと思って大盤振る舞いしやがって。でもカツヨリはそんな隠れ技みたいのいきなりゲットしちゃっていいの?と出来過ぎを不安視していた。エルフが仲間になったりうまく行き過ぎだ。ここは調子に乗らず地道に足元を固めるべきだなと気を引き締めた。調子に乗って死んだら元も子もないからな。ここは異世界、知らない事だらけなんだから気をつけないと。防具屋の中を見ていると金貨5枚もするミサンガが売っていた。えーと、50万円相当のミサンガ!カツヨリはサンディに聞いた。


「あのミサンガは何ですか?すごくいい値段ですよね」


「ミサンガ?あれのことか。あれは魔道具だ。女神の祈りという。あれをつけていると一度だけだが死の瞬間に女神が現れてフル回復した状態で蘇るんだ。ちなみに2個つけても1回しか効果はないぞ。同じ戦闘中でも効果は1回きりだ。ランクが上の冒険者は皆つけているぞ。私もつけている。まだ女神を見た事はないがな。まあいわゆるお守りだよ」


 ふーん、やられたーと思ったら画面が変わって、ケーーーー◯みたいに復活するやつか。見てみたいけど死ぬのは嫌だな。しかし金貨5枚とは。ギルドの依頼でウルフ5匹倒して報酬が銀貨10枚だぞ!こんなペースで浪費してたらすぐに路頭に迷うんじゃ!?でも命は一個しかないからなあ。


 悩んだ末、カツヨリはギルドでお金を下ろして3人分の女神の祈りを購入した。これで売り切れだそうだ。これを作る職人は魔力を相当使うらしく次の入荷は未定だそうだ。


なんかリコの装備だけすごくなっちゃったけど、3属性持ちは貴重らしいから仕方ないとサンディに言われた。本当は魔道士の杖も揃えるとさらに効果が増えるのだが、王都まで行かないと手に入らないそうだ。リリィはリコばっかりとヤキモチ焼いて拗ねるかと思ったけど魔法石のネックレスだけで満足しているみたいだからいいか。お金の価値観って大事だよね、きっといい嫁になるぞリリィは。


で、やっと町の外へでた。狩に行くぞ!


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