第13話 究極??の選択

 カツヨリはギルドを出て神殿に向かっていた。途中串焼き屋の屋台が壊れていて何やら騒がしかったが喧嘩でもあったのだろうか?治安は良さそうに見えるんだけどな。どこにでも変な奴はいるしね。


 神殿は町の中央部の少し高くなっているところにあった。中に入るには白く長い階段を登らなければならない。なんか格式高い教会みたいな感じだ。何にせよ俺が魔法を使えない理由が知りたい、まずは神官という人に会って話を聞かねば。


「結構並んでるなあ。子供が洗礼受けるだけじゃないのか」


  子供は6歳になったのだろう。なんか一張羅を着て精一杯おめかししている親子がいる。それ以外にもいろんな人種の人が並んでいた。俗にいう懺悔かしん?人々は順番に大きな扉を潜っていく。一家族しか一緒には入れないみたいだ。なんか、ドキドキするね。


 カツヨリの番になった。扉を潜ると中は20畳位の部屋になっていて正面に女神像があった。エリアルなのか?似てねえー!実物の方がもっとエロくて可愛いのに。えっ、像がいやー、そんな事は、もっと褒めてって顔をしている。もしかして繋がってるのか?その横にはおっさんの銅像が並んでいる、と思いきや何も無い。あれ、ここに勇者カツヨリの銅像があるんじゃなかったっけ?目の前に神官らしき人が、いや美女がいるので話しかけようとしたら、逆に話しかけられた。


「こんにちは。今日は神殿にどんなご用ですか?」


 神官の衣装はなぜか和風だ。巫女さんだ。ここまで西洋ぽかったのにどういう事??


「ええと、貴女の衣装ですがそれは一体?」


「神官の衣装はこれに決まっています。古の勇者カツヨリ様のご指示の元、神に仕える者に最もふさわしい神聖な物として伝えられています」


 ………、カツヨリって絶対日本人だ。まあ名前からしてそうだけど。しかも良くツボをわかってらっしゃる。もしかしてこの衣装着せてあんなこともこんなこともしてたんじゃねえだろうな。あ、しまった、聞きたい事はそれじゃあない。


「実は旅の途中で記憶をなくしてしまいまして魔法が使えないのです。神官様のお力で何とか出来ないでしょうか?」


「そうですか。あなたが例の。ドリルドさんからもし貴方が来たら話を聞くように言われています。カツヨリ様ですね」


「はい。何かわかりますか?」


 巫女さん、じゃない神官はカツヨリに女神像に祈るように言った。カツヨリは素直に従い女神像を見つめた後、両手を組み目をつぶって祈った。女神様、教えてくだされ。その瞬間、カツヨリは白い空間にいた。


「こ、ここは。この間の?いや、違うな、似ているが、もどきか」


 会話ではなく一方的にカツヨリの脳内に声が響いた。


『魔法と精力、どちらを望む』


「精力」


 カツヨリは精力を選んでしまった。だって、リリィがかわいそうなんだもん。というのは言い訳で男として不甲斐ない自分が情けなく心の奥底にある願望が咄嗟に出てしまった。言ってからしまったと思ったが、気づくと元の神殿で祈っている自分に戻っていた。神官が不安そうにこちらを見ている。


「何かわかりましたか?」


 いえ、何も、と答えしばらくぼーっとしていた。もしかして痛恨の一撃!?一生一代の選択ミス?やらかしたかも。カツヨリはまだ気づいていない。この時スキル <魅了> が付与された事を。


<魅了>


 異性と密室で2人きりになると、急に魅了持ちの異性が魅力的に見えるようになり、恋に落ちる。一度恋に落ちた異性はその人の為に尽くすようになる


 カツヨリは我に返り聞きたい事を聞いてしまおうと、


「神官様、」


「イヤ、アンジェラってお呼びくださいませ」


「はい?どうかしましたか?」


「アンジェラです。呼び捨てにしてくださいまし」


 何のプレイだ、こりゃ。金払ってねえぞ。もしかして精力選んだからなんか起きた?伊達に100年以上生きてる訳じゃない。カツヨリはこれはおかしいと考え、ここは調子に乗ってみる事にした。


「ではアンジェラ。勇者カツヨリの銅像があると聞いていたのですが、どこに」


「はい。それが数日前に盗まれたようです。朝、神殿に来てみるとあったはずの銅像が無くなっていたのです。あんな物を盗む人がいるなんて、きっと罰が当たりますよね。明日は時間があるのでギルドへ捜索依頼を出そうと思っていました」


 銅像が盗まれたって?どういう意味だ。銅像に価値があるのか?目的がわからん。ん?おや、アンジェラが近いぞ、そんな下から見つめられるとエロく見える。目線をずらすと着物の隙間からたわわな物が見えそうで見えない。カツヨリはこのままではヤバイ事になるぞ、と自分の後ろにも人が沢山並んでいたのを思い出し、


「アンジェラ。待ってる人が沢山いたから、俺はもう行くね。また、話を聞きに来るから」


「絶対ですよ、お待ちしております。あ、ちょっとお待ちください」


 といって、帰りがけにメモを渡された。家の地図だった。来てね(ハート)って書いてある。ちなみにカツヨリのグレートマグナムはこの世界に来てから初めて反応した。


 カツヨリはリリィ達と合流しようと街中に戻った。しかし何だったんだよあの神官。急にエロくなったぞ、精力と魔法で精力って言葉聞いた瞬間に昨日のリリィの顔が浮かんでとっさに精力を選んだけど、マジでまずかったかも。でもなあ、なんかこの世界に来てから俺って下衆いんだよな。転生の影響かそれとも天性の物か、なんちゃって。結局魔法の事はなーんにもわからないカツヨリであった。


「あ、お兄ちゃん、いた」


 リコの声がして振り返るとリリィともう一人綺麗なお姉さんがいた。おっと、あの耳は!


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