第12話 はじめてのおつかい

 リリィとリコはカツヨリにお金をもらって買い物へ出かけた。町は賑わっている。ポーションってどこで売ってるのだろう?


「ねー、リリィ。ポーションって買った事あるの」


「無いわよ。そんな高い物。うちの村は貧乏だったから怪我したら自然回復のみよ!」


 何故かドヤ顔をするリリィ。当てになるのかこの仲間は。町の中を探索しているとお約束の連中が現れた。


「彼女たち〜、どこに行くの?連れてってあげようか?」


 リコはラッキーと思ったがリリィはリコの顔をみて、ダメだこの子。免疫が無さすぎると感じ、


「リコ、男は狼だからね。ホイホイ付いてっちゃダメよ」


「酷いな、困ってそうだから声かけたのに。俺ら4人は皆Eランク冒険者なんだ。パーティ名 獄炎の殺戮者。火を操らせたら中々の物なんだぜ。俺はリーダーのカイトっていうんだ。宜しくな、可愛いお嬢さん」


 カイトはイケメンだが、なんか弱っちい感じがする。何でだろう、Eランクならそこそこはやれそうなのに。あ、そうか。カツヨリ見てるから強く感じないんだ。


「ごめんなさいね。弱い男には興味がないの。いきましょ、リコ」


 リリィはリコの手を引きこの場を離れようとしたが、前を塞がれた。


「弱い男には興味がないって事は強い男ならいいんだろう?来いよ、男の良さを教えてやるぜ」


 急に下衆くなった男達を見てリコはガッカリしていた。1つ勉強になりました、はい。男は信じちゃダメです。リリィは逃げようとしたがカイトに腕を掴まれた。この野郎、と風魔法を使おうとしたがここで暴れてお店とかに迷惑かけるとマズイかもと攻撃できずにいた。そこを一人の女性が通りかかった。


「その子達、嫌がってないかい?手を離してやりなよ。えーと、何だっけ?焚き火の焼き芋屋だったっけ?」


「ふざけるな。俺たちは獄炎の殺戮者だ」


 周りを歩いている人達からクスクスと笑い声が聞こえる。焚き火の焼き芋屋だとよ、いいパーティ名だな。笑われたカイト達は頭にきてその女性に殴りかかった。女性は軽くサイドステップするとカイトの足を引っ掛けた。カイトは勢いよく突っ込んできていたので派手に転がってそのまま串焼きの屋台に突っ込んだ。


「あーあ、ちゃんと弁償するんだよ。逃げたらギルドにはいられなくなるからね。何だっけ?えーと、そうそう焼き芋屋だ」


 カイトと一緒にいた男達は逃げ出そうとしたが、周りの人達が逃さないように囲んだ。リリィはそれを見て、アキールの町の治安がいいって言われてる理由がわかった気がした。みんな仲間なんだ。リコは、女性に向かって頭を下げた。


「助けていただきましてありがとうございました」


「おやおや、若いのに礼儀正しい子だね。そちらはお姉さんかい?」


「いえ、同じパーティなのかな?仲間です。私がリリィ、こっちがリコです。助かりました。町中で魔法は使ったらまずいですよね?」


「そうだね。お店を壊したりすると弁償だから君達には払えないでしょう?この町の、いや、パーティって言ってたね?冒険者かい?」


「はい。今日ギルドカードを貰いました。2人共Hランクです」


 本当にヒヨッコなんだ。その割には少しはやれそうだけど。


「まだ名乗ってなかったね。Dランク冒険者のサンディだ。年は158歳、若いだろう?」


 サンディはエルフだった。見た目は20代前半に見えるピチピチのお姉さんだ。






 リリィはサンディにポーションを売っているお店を聞いたら、私もちょうど買いに行くとこよ、と一緒に行くことになった。サンディは町の賑やかなところから離れて、長屋があるちょっと寂れた道に入っていく。こんなところにお店があるのかとおもっていたら、ここだよ、とサンディが一見お店に見えない家の前で止まった。


「ここはエルフの店だ。エルフ以外の人にはあまり知られてないが、腕は確かな薬師が作っているからそこいらのポーションより効果はあるよ。ほうら、入った入った」


 サンディに急かされてお店に入るリリィ達、店の中は薄暗く、何となく気味が悪い。ただ、サンディが一緒なので不安がってはいけない気がして気丈に振る舞った。


「こんにちは。ポーションを買いたいのですが、どんなのがありますか?」


 中から30代半ばのこりゃまた綺麗な女性が出てきた。


「これはまた可愛いお客さんだね。よくここがわかったもんだ。なんだお前が連れてきたのかい、珍しい事もあるもんだ。人間嫌いのサンディが」


「ちょっと。私は人間が嫌いなんじゃないよ。人間の男が嫌いなんだ」


「いい加減にしたらどうだい。お嬢さん方、このサンディはね、人間の男に大好きな姉を盗られたのさ。まあ普通に結婚しただけなんだけどね。それからというもの人間の男が嫌いになっちまってね。エルフの男はサンディの性格を良く知ってるから近寄ってこないし、このままじゃ一生独身だよ」


「ああ、うるさい。私は買い物にきたんだよ、いつものをお願い」


 店のエルフは奥に引っ込んんでからポーションの瓶を10本出してきた。


「ハイポーション3つ、ポーション5つ、マナポーション2つだよ。全部で金貨3枚と銀貨90枚」


 たっかーい。リリィは焦った。カツヨリからお金は預かってきたけどそんなに使っていいのかわからない。リリィの顔を見て、リコは冷静に聞いた。


「こんにちは。私はリコといいます。ポーションなんですが、その1瓶でどの位の効果があるのでしょうか?冒険者になったばかりでわからないので教えてください」


「素直な子だね。あんたも見習ったらどうだいサンディ。私は薬師のミューラという。宜しくね。うちのポーションは他で買うより高いけど効き目は値段以上にある。まずは、このポーションだが、HPは50回復し毒と麻痺も解除する。値段は銀貨30枚だ。次にハイポーションだが、HPは100回復し、毒、麻痺、石化も解除する。値段は銀貨60枚だ。他の店のポーションは状態異常には効き目がないからね、気をつけんるんだよ。そしてマナポーションだが、MPを30回復する。値段は銀貨30枚だ」


 リコは自分達のステータスを思い出していた。お兄ちゃんはともかくリリィと私ならポーションだけで十分だ。


「ミューラさん。ポーションを5つとマナポーションを2つ下さい」


「あいよ。金貨2枚に負けとくよ、またおいで。死ぬんじゃないよ」


「ありがとうございます。私達にはお兄ちゃんがいるので大丈夫です。すっごく強いんです」


 サンディの頬がピクピクしている。お兄ちゃんだと!


「あ、カツヨリはリコのお兄さんで私にとっては大事な人です、テヘッ」


「カツヨリだって!」


 ミューラとサンディがハモりながら叫んだ。

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