第11話 質問コーナー
ウラヌスは答えた。
「魔法か。カツヨリは魔法が使えなくなったそうだが、お前はどうやって魔法を覚えた?」
「その記憶もなくて。魔力みたいな物は感じるのですが」
「そうか。まずこの国では6歳になると神殿に行き神像を拝むという儀式がある。そこで神から魔法が授けられる。神といっても、そうだな、宗教ってわかるか?」
「それはわかります。その神様を信仰する事ですよね。神様ってたくさんいるのですか?」
カツヨリは敢えて聞いてみた。女神エリアルは神は一人しかいないって言ってたけどね。
「俺は神様が何人いるのかは知らんし、いたとしてもいい神様だけではないと思っている。いい神様だけならがもっと民は平等であるべきだし不幸な死に方をする者も出ないだろう。ただ人は神にすがる時があり、それが集まると信仰心となり、宗教となる。そしてこの世界には色々な宗教がある。つまり神は大勢いることになる」
地球と似てるな。この世界には宗教戦争がないといいけど。ウラヌスの考え方はカツヨリと同じだった。困った時の神頼みともいうが、人は誰しも心のどこかで神様に期待している。普段は信じてなくてもだ。まあ中には信心深い人もいるけど。そしていい神様だけなら金持ち特をするみたいな世の中にはしないだろう。で、エリアルが言った神は自分だけってのとは矛盾してきたね。
「それで魔法はどの神様が授けてくれるのですか?」
「それはわからん。神殿には神像があるのだが、それは女神様を模っている。昔から女神像はあったらしいのだが、女神様の名前は伝わっていない。そしてその横に勇者カツヨリの銅像が並んでいる。そういえばなんとなくだがカツヨリは勇者カツヨリに似ているかもな。ただ銅像の勇者はだいぶ年上だが。そして魔法を授けてくれるのはその名前のわからない女神様だ。神官を通じて子供に力が授けられる」
胡散くせー。ぜってーなんか違うな。まあとりあえず郷にいれば郷に従えということで、
「では、もう一度神官にいえば魔法を覚えられますかね?」
「わからん。前例がないな、でも試す価値はあると思う。神殿は町の中心部にあるぞ。時間がある時に行ってみるといい」
まあ、後で行ってみるか。カツヨリは質問を変えた。
「わかりました。後で行ってみます。ところでラキーヌ村の近くにダンジョンができたらしいのですがご存知ですか?」
「よく知っているな。ダンジョンができると魔物の生息域が変わる事がある。ラキーヌ村の周りに普段はいないはずのシルバーウルフが増えたのもそのせいだろう」
「ダンジョンについて教えてください」
ウラヌスは事細かに説明してくれた。ダンジョンには大きく分けて2種類がある。コアのあるダンジョンとコアのないダンジョンだ。ダンジョンは、元々はコアから生まれる。魔物を動かすエネルギーの源を魔源と呼んでいるが、魔源の濃いところでは魔物が生まれやすいし、強い魔物がいる。魔石には魔源が込められており、魔物の心臓のような役割をしている。ダンジョン以外に生息している魔物には魔石が必ずあり、強い魔物ほど魔源の詰まった魔石を持っている。魔物の種類によって火、水、風等の魔石もありそれらは魔道具に用いられる。
コアは魔石の大きな物と思えば分かりやすい。時間をかけて溜まった魔源がコアとなりダンジョンを作るのだ。ダンジョンの中は魔源が漂っていて魔物は自然に生まれる。ダンジョンで死んだ魔物の魔力は自然と魔源に還りまた新たな魔物を生む。なのでダンジョンの魔物には魔石がない。死体もそのまま消えてしまい持ち帰る事は出来ない。
「なら、冒険者にとってダンジョンは旨味がないのでは?」
カツヨリはリリィからドロップアイテムの事を聞いてはいたが念のために聞いてみた。
「ダンジョンが成長するのを知っているか?」
え、そうなの?あ、そういうことか。
「なんかわかったような顔をしているな。多分カツヨリの思った通りだ。ダンジョンに挑んだ冒険者が死ぬとその人体エネルギーが魔源となってコアに吸収されるんだ。そうやってダンジョンは成長していく。ダンジョンは人を呼び寄せる為に餌を蒔く。その餌が、ドロップアイテムだ。ダンジョンの魔物を倒すとたまにドロップアイテムを落とす、しかも売ればいい値が付く物や戦闘に役立つものが多い。それに釣られて冒険者がダンジョンに入るわけだ、それとダンジョンができるとその周辺の魔物が居なくなる。どうもダンジョンの魔物とそこらにいる魔物は相性が悪いらしい」
そうか。ダンジョンは成長する為に餌を蒔くのか。肉食植物の腹の中に飛び込む感じなんだ。
「そんなに旨味があるのですか、ダンジョンは?」
カツヨリは不思議に思った。割りが合わない気がする。
「冒険者は金を稼ぎ酒を飲み女を抱く。女の冒険者も金を稼ぎ好きなものを飲み食い貴金属を買ったりオシャレをする。要は金が欲しいのさ。それにダンジョンコアを取れば国から報奨金がたんまり出る」
国から?どういう事?
「コアって最下層にあるのですよね?コアがなくなったダンジョンはどうなるのですか?」
「コアは最下層にあり、強い魔物が守っている。この魔物を倒さないとコアは取れない。コアが無くなったダンジョンは成長しなくなり、強い魔物が出なくなる。残っている魔源により魔物は出るが危険度は格段に下がるので兵の訓練に使われたりする。不思議とコアのないダンジョンの周りには魔物が戻ってくるんだ。なのでダンジョンを潰すことには国もギルドも全面的に協力している。ところが、だ」
「???」
「コアを取ってしまうとドロップアイテムが出なくなる。そうすると冒険者の旨味が無くなる。だから高い報奨金を国が出すんだ、そうしないと高位の冒険者がコアを放置して美味しいところだけ取ってしまい脅威がなくならないからな。ラキーヌ村近くのダンジョンはできたばかりだからまだそんなに深くないはずだ。ギルドからもダンジョン攻略依頼が出ている。これは依頼を受けなくても誰でも攻略できる。た、だ、し、ダンジョンは危険だ。Dランクの冒険者がいるパーティ以外は立ち入り禁止にしている」
ウラヌスはカツヨリに釘を刺した。まずはパーティメンバーのレベルを上げろと。そのための討伐依頼だぞ、と。
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