第10話 Fランク冒険者だそうだ

 カツヨリ達はギルドへ向かった。ギルドまでの道端で町の人の会話が聞こえてくる。


「盗賊が退治されたらしいぞ。あのザインが捕まったそうだ」


「良く捕まえたな。ザインて元Cランクの固有スキル持ちだろ。都からBランクパーティでも来てくれたのか?」


「それが、倒したのは少年だそうだ。しかも名前がカツヨリだってよ」


「何だって。勇者が復活したのか?」


 やべ、目立ってる。


「そうではないらしい。装備も村人並みで魔法が使えないとの噂だ」


「じゃあ、勇者じゃないな。勇者は魔法も剣も誰よりも凄かったっていうじゃねえか。名前がカツヨリってのはなんだ、親の酔狂か?」


「どうやら異国の生まれらしい。その国には勇者伝説がないんだとよ」


 なんか情報漏れ漏れなんだけど。ちょっとこれはギルドに言ってガツンと言わねばなるまいな、しかし勇者は剣も魔法も使えたのか。そりゃ勇者っていうくらいだもんな、◯ガデインとか使えたのかな?なんて考えながら歩いていくとゲンゾーさんがギルドの前に立っていた。


「カツヨリ。待っていたよ」


 まさか、この人が犯人では?


「ゲンゾーさん。俺を待ってたいたのですか?」


「ああ、金貨のお礼を言いたくてな。確かに盗賊1人分いただいた。だが、お前がいなかったら俺は死んでいた。礼を言わずに受け取るわけにはいかない」


 カツヨリはわかりましたと答え、それよりも町で俺の噂が広まっている事を問いただすと、


「ああ、あれは自警団のみんなだよ。みんなこういう話題には飢えててな、まあ有名税と思ってくれ」


 有名税って芸能人じゃあないんだから。でも町の皆さんに感謝されているらしいからいいことにしよう。ゲンゾーさんはこれから村へ帰るという。リリィに向かって


「リリィ。無茶はするなよ。いつでも村に帰ってきていいからな」


「ありがとう。でも私はカツヨリと行く。ちょっと不安な事もあるけどなんとかする」


 不安かあ、村から出るんだからし当然だよな、とゲンゾーは思い、村へ帰っていった。リリィが不安なのは夜の生活だとは思わずに。




 ギルドに入ると相変わらず騒がしい。依頼の貼ってある掲示板の前には人だかりが。冒険者は朝ここに来ていい依頼を探すのが日課のようだ。受付も混んでる、どうすっかなと思っていると奥からギルドマスターのウラヌスが出てきた。


「おう、カツヨリ。こっちだ」


 急にギルド内が静かになる。カツヨリがウラヌスの方へ向かって歩き出すと急にザワザワし始める。


「カツヨリだってよ。よく付けたなそんな大それた名前」


「バカ、知らねえのか?あのザインを一撃で倒したらしいぞ。一人で盗賊20人を相手に皆殺しだってよ」


「いやいやナイナイ。あんな小僧にそんな事できるわけねえだろ。強そうに見えねえぞ」


「でもギルマスが直々に相手してるじゃねえか。普通じゃないぞ」


「あの小僧なら俺の方が強い。多分だが」


 あー、外野がうるさい。聞いていたウラヌスが一言、


「お前らよりもカツヨリの方が強いぞ。死にたくなければチョッカイ出すなよ」


 外野は静かになり、みんなマジかーって顔をしている。




 奥にある部屋に入ると昨日のウサ耳ちゃんことシェリーが俺達のギルドカードを持って待っていた。リコ、リリィはHランク、カツヨリはFランクだそうだ。誰しも最初はHランクスタートなのだがカツヨリはすでに盗賊討伐依頼をこなした実績で特別にFランクスタートになったそうだ。ちなみにギルドのランクは一番下がHで上はSSSランクらしい。ちなみにBランク以上の者は月一回発行されるギルド新聞に名前が掲載される。現在、この世界にはBランクの冒険者は35人、Aランクは17人、Sランクは3人しかいない。その上は過去には居たそうだが現在は空席となっている。



 ギルドの依頼は様々だ、部屋の片付けから魔物退治までいわゆる何でも屋の凱旋所である。職安のような物なのかな。依頼の難易度に応じて報酬は変わる。ギルドは信用で成り立っていてギルドが受けた依頼は何とかこなしたいというギルド側の思惑もあり、冒険者への福利厚生もある程度はある。新人教育や解体の研修などは無料で受けることができる。またギルドへ依頼をするのは誰でもできるが、報酬が低いと受け手が少ないため低ランクの冒険者に与えられる事が多い。また、特殊な場合を除き自分のクラスの一つ上の依頼までしか受けられない。これは冒険者の命を守るために決められたルールだ。ギルドのランクは依頼の達成数、貢献度で上げることができるがDランクからは試験がある。なのでEランクの冒険者が一番多い。この町の一番上位の冒険者はCランクだそうだ。


 ウラヌスは、


「町長から伝言だ。3週間で戻るからそれまではギルドの依頼でもこなして待っててくれだとよ。お前ら3人でパーティを組むのか?」


 パーティを組むメリットはパーティランクによりダンジョン攻略が認められる事だ。ダンジョンは危険が多い。回復役(回復魔法を持つ者は希少、ポーション等の薬を飲ませる係が一般的)も必要だし、夜間の見張りも必要だ。最低でも3人はいないとダンジョンには入れない。


「パーティですか。この3人でも組めますか?ランクみんな低いですよね」


「大丈夫だ。それにお前らならすぐにランクもレベルも上がるだろう。この依頼を取っておいた、リコのレベル上げにはちょうどいいぞ。ただ、ポーションは買っていけ。もしもがあるのが冒険者だからな」


 というわけで、ギルドの初仕事を受けることになった。ウルフ5匹の討伐依頼だ。こういう魔物の討伐依頼は困っている町や村から出されるらしい。民の命を守るためだそうだが、ギルドが肉を買い取ってそれを肉屋に売ってといううまいシステムがあり、ギルド運営の為にギルド自ら依頼を出しているとカツヨリは読んでいた。そうじゃないと経営回らないよね。


 カツヨリはギルマスに聞きたいことがあったので、ポーションの買い物はリリィとリコに任せてギルドに残った。なんせ異世界である。わからん事だらけなのよホント。


「ウラヌスさん。この前盗賊を倒した時に魔法を使う人が圧倒的に多かったのですが、剣や弓を使う人は少ないのですか?」


「この国は鉄が取れないんだ。そのため鉄が高くてな、剣よりも魔法を使うのが一般的だ。たまに剣を使う奴がいるが金に余裕があるか、腕に自信がある奴だ。だが、それはこの国だけで他の国では剣の方が主流だぞ。弓はエルフが主に使う。他の種族も使えるが遠距離攻撃だと魔法の方が覚えるのが簡単だから弓は流行らない。エルフは目が良く魔法が届かない距離からも弓を使う。この町の冒険者で一人いるぞ、Dランクだ」


 なるほど。では、次の質問だ。


「わかりました。俺は魔法が使えないのですが、魔法って誰でも使えるのですか?」

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